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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「新入社員に"コスト意識を持たせて"ください!」と言われたけれど...

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新入社員研修で時々みかける光景。 (※ 特定の企業の例ではありません)

「ここまで打ち合わせてきた内容以外に、何か特別なご要望はありますか?」
「そうですねぇ。 あ! "コスト意識"です。"時間"は"お金"なんだ、"人の時間"は"人というコストを費やすこと"なんだということを徹底させたいです」
「ほぉ、それはまたなぜですか?」
「昨年のことですけどね、新人に日報を書かせるわけですよ。A4で1枚程度ですよ。学習内容のふりかえりを兼ねたものです。まあ、文章がなってないわけです。 昨年は50人採用したので、毎日50人分の日報を人事で見るわけですね」
「はい」
「添削、添削、添削・・・人事も3-4人体制で手分けして徹底的に添削しているのですが、それでも、一人15枚以上あるので、毎晩帰るのが9時10時・・・。私たちの稼働が凄く増えるのですよ」
「それは大変でしたね」
「だからですね、新人には、人の手を煩わすな。私たちの添削にかかる時間をよく考えろ。時間を無駄にするな、人の時間を無駄にさせるな・・・そういう意識を最初から醸成させたいのです」
「なるほど」
「だから、"時間管理"というのも学習項目に付け加えていただければ、と」
「なるほど、時間管理ですか。一つ質問していいですか?」
「はい、どうぞ」
「人事の方がそんなに時間をかけて添削して、文章は上達しましたか?」
「ええ、少しずつは改善されましたよ」
「なるほど、上達はしたのですね」
「皆さんが毎晩遅くまで添削していて、新入社員はどうしているのですか?帰るわけですか?」
「はい、定時で帰宅です。だからコスト意識、時間意識を持ってほしいと・・・」
「・・・添削、やめちゃったらどうですか?」
「え?」
「だって、9時10時・・・なんですよね。で、翌朝もまた8時には出社なさっていて・・・身体きつくないですか?」
「そりゃキツイです」
「だったら、添削やめたらいかがですか?」
「だって、そんなことしたら、新人の文章が・・・」
「新入社員自身に"きちんとした文章"を書かせるよう指導したらいかがですか?添削するのではなく」
「ん?」
「みなさんが多大な時間をかけて新入社員50人分の日報を来る日も来る日も真っ赤にしているのですよね。その時大変なのは、人事の方ですよね? 新入社員は帰宅してて」
「そうですね」
「だから
それ、やめたらいいと思うんですよ。新入社員にちゃんとした、きちんとした文章を書かせる。添削などに取られる時間をなくすんです。 添削するほうが文章力上がったりしませんか?真剣に読んで真剣に考えるから」
「そ、そういわれてみれば・・・」
「だいいち、添削した割に新入社員の文章は、ぱっとしない。もちろん、添削されたものは改善するでしょうが、1から書くものについては、また同じことの繰り返しになるってことはないですか?」
「たしかに」
「だからですね、添削やめて、指摘だけして本人に書かせるのですよ」
「ほぉー」
「時間の大切さとかコスト意識も大事ですけど、自分の仕事を自力で完遂せよ、ってことがこの話ではテーマになりますよね。」
「ええ」
「人事の方も私たち研修提供者も陥る罠があるんですよ。丁寧に親切にし過ぎてしまう、かまいすぎる、教えすぎる。・・・その結果、新入社員は、より一層考えなくなる。だから、学ばない、育たない。手とり足とりをやめたらいいんです。大人なんですから」
「そうですよねぇ」
「文章で言えば、日報に書くべきことがきちんと理解できないから、散文的になったり、感想文か?みたいな文章になっていくので、"何"を"どう"書くのか、その"目的"は何かなどを教えてあげればいいと思うのです。提出されたものも真っ赤にせず、"ここがわからない""ここが意味通らない"など指摘して、書き直すのは本人にさせる。人事の方の仕事、だいぶ減るんじゃないですか?」
「そうですね」
「文章を添削するほうが文章力上がりますから、みなさん、文章力、上がったのでは?昨年」
「あはは、そうかも(笑)」
「今年は新入社員自身にそれをさせましょうよ」
「そうですね、そうしましょう」



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