自己実現意欲も独立心も高い人のほうが組織に早く馴染みやすいらしい~「職業価値観」が「組織社会化」に与える影響
中原淳さん編著『職場学習の探求』(生産性出版、2012)を久しぶりに取り出して読んでみました。
8章『就職活動時の職業価値観は、入社後の組織社会化にどのような影響を及ぼすのか』(伊澤莉瑛さんの研究)部分です。
職業価値観とは、「仕事をする時大事にすること」、組織社会化とは、「その組織に必要な知識や態度などを身に着けること」。
かいつまんで書きますと、
●「自己実現のために仕事する」とか「組織から独立したいなぁ」と思っているタイプの人は、実は、組織社会化も早く、能力向上もそう思っていない人よりは早くなる
●上司などに働きかけられなくても自ら学び自ら成長していってしまう
●一般に「自己実現」「組織から独立したい」ということが大事だと思う職業価値観は、「うーん、すぐ辞めそうで、扱いにくいなぁ」と思われがちだけれど、扱い方次第で彼ら・彼女らをうまく活用できるんじゃないのかな?
なんてことが書いてあるのでした。
なるほど。
これを読んで思い出したことがあります。
2007年にある企業のOJTトレーナーから聞いた話です。
「うちの新人が、”どうせ、この会社は踏み台(ステップ)で、いずれ、僕は起業するんで、仕事は適当にやっていきますから、難しいこととかさせないでください”っていうんです。ステップで悪かったね、と思うけれど、そういうやつ、どう扱えばよい出うか?」
悩みを打ち明けられました。
この新入社員、間違ってますよね。
最初に新卒で入った会社が踏み台でもステップでも何でもいいんです。
生涯務めよ、と思う必要はない。
けれど、「ステップだから、ここでは適当にやる」というのは、話が違う。
ここでちゃんとできなければ、ここを踏み台にすることもできないし、よそへ行ったら、もっと自分の活躍の場はなくなる。
「踏み台にする」「通過点」と思うのは勝手なのだけれど、そこでまずは頑張って力をつけなければ、何ら踏み台としても機能せず、自分だけがずぶずぶと泥沼にはまってしまうのではないでしょうか。
伊澤さんの研究に登場する「自己実現欲求が高い人」「独立心が旺盛な人」というのは、こういう”舐めたことを言う、頭でっかちな人ではなく、心底、自己実現をめざし、真剣に独立心旺盛でいるんだと思うのです。
・・・・
ところで、「踏み台」の彼、その後どうなったかというと・・・。
何かの仕事で、先輩と共に働くことがあり、その打ち上げでぼそっと言ったそうです。
「オレ、ここは踏み台で独立するから、とか言ってたっすけど、全然、なんもわかってなかったなぁ、と思いました。 ここの仕事も一人前に満足にこなせないのに、独立だの起業だの、言ってる場合じゃないですよね。ごめんなさい」
・・・。独立の前に自立がありますからねー。
自分の足でまずは歩ける。
その後、親の元を離れる。
これが人間の成長だし、
組織においても同じことなんだろうと思います。