進んでOJTトレーナーを引き受けて
OJTの支援をもう10年以上ライフワーク的に取り組んでいる。
いろいろな企業のOJTの非組を見てきた。企業によっては、「OJTハンドブック」「OJTガイドブック」といった小冊子を作り、OJTトレーナーに配布するところもある。
新人あるいは後輩の育成に携わった経験がない、か、少ない人にとって、ある程度のガイドラインが示されることは、スタートアップを加速するのに役立つと思うので、良いことだ。
で、「どういうきっかけで”OJTハンドブック”を作ることになったのか?」と尋ねてみると、上記の理由が挙げられえる。
「OJTなんてしたことないから、いきなり、トレーナーに任命されても、困惑する。何をすればよいのか、マニュアルください」
「少なくとも最低限すべきことは、列挙してもらったほうが安心だし、抜け漏れも防げる」
そんな現場の声から、「OJTハンドブック」「OJTガイドブック」といったものが作成され、翌年度からOJTトレーナーに配布されるのである。
・・・
これによって救われる人は多い。「すべきことがわかって気が楽になった」という声も多い。
しかし、問題はここからだ。
・「OJTハンドブック」(以下、これ1つの表現に絞ります)がある。
・そこに書いてあることを実践する
・おし! 終わった!
・もう教えること、なくなった・・・。
こうなってしまうことが少なからずあるようなのだ。
「〇〇は教えましたか?」
「〇〇は経験させました?」
「え?してませんけど。だって、”OJTハンドブック”に書いてなかったし」
・・・・・
人事・人材開発側が「OJTハンドブック」を作成した意図は、
「最低限これをやってくださいね!」
である。
一方、受け取った側は、
「これをしておけばいいんですよね」
となってしまう(ことがある)。
スコープの捉え方が違うのである。
かくして、OJTトレーナー側も「思考停止」に陥る。
「OJTハンドブック」に書いてあることは、「最低これだけはやってね」のラインであって、「最高のライン」ではない。
あとは、「何が起こるかわからない現場のあれこれ」をその都度、OJTトレーナーも考えながら、新人に割り当てたり、サポートしたり、フィードバックしたりしなければならない。マニュアルに書いていないことが山ほど起こる。
こうやって考えればわかることは、
OJTというのは、
「新人を始めとする若手を育てている」
ようでいて、それだけではないということだ。
「OJTトレーナー自身の成長」に大きく寄与する。
後輩ができるまでは考えることのなかったこと、工夫することのなかったことに日々直面する。
それら一つ一つがいわゆる「一皮むけた経験」につながるのではないか。
決して「マニュアル」化できないあれやこれやをばっさばっさと対峙(退治?)しながら、後輩とともに前進するのがOJTの神髄部分だろう。
だから、
「新人のOJTトレーナーになってほしい」
と上司に言われたら、
「めんどくさいなあー」と思わず、
「お、自分の成長のチャンス!」と前向きにとらえ、挑戦したいものだ。
人を育てた経験は、絶対、自分の糧になる。