痛い時は痛いと言っていい。痛みを我慢する必要なんてない。
5月のGW明けから、上智大学グリーフケア研究所主催「グリーフケア講座」を受講しています。昨年春から3季目です。
昨日(6月27日)の講座は、ホスピスについてでした(毎回、講師は替わる輪講形式です)。
*国立病院機構 豊橋医療センター緩和ケア部長 佐藤健医師
がん患者で、進行しているケースでは、場合によって痛みが出てしまうことがある。その痛みを我慢しているよりも、モルヒネなどを投与し、「痛み」を軽減することは大事。そのほうが治療の成果も出やすい、といった話がありました。
佐藤医師が紹介した事例にこんなものがありました。
他の病院で治療してきたが、転移により痛みも出てきてしまい、相当苦しい状況になった患者が豊橋医療センターにやってきた。
「まずは、痛みを取る治療を始めましょうか」と相談し、どのタイミングで開始するかとかいつ入院するかなど話し合ったといいます。
次にその患者が来院したとき、こういったそうです。
「先生、痛み消えちゃったみたい」・・。
長年彼を苦しめていたがんの痛みが、すっと消えたというのです。
佐藤医師は、「こういうこと、よくあるんですよ」とおっしゃいます。きっと(安心感)がそうさせるのだろう、とも。
痛みに耐えて耐えて、耐えて・・・しているときは、痛みから自由になれない。
けれど、「明日からモルヒネ開始して、痛みを軽減する治療に入りましょう」といわれ、自分も「その方針でお願いします」と決意、医師にお願いした。すると、その途端に痛み自体がなくなってしまう。
それは、きっと「安心感」だろう、とのことです。
私ごとで恐縮ですが、似た経験を持っています。
12年ほど前のことになりますが、8月10日、朝、顔を洗おうとかがんだら腰が痛いことに気が付きました。その日を境に、なんと90日間の腰痛に苦しめられることになったのです。
座ると痛い、立っていても痛い。 1週間、2週間ずっと痛い。途中からは、右足の側面が全体的にぴくぴくとして、しびれ始めます。
仕事を変わってもらえるめどがなかったので、とにかく頑張りました。
10月末のある日。呼吸困難になるほどの腰痛になり、もうダメお手上げ、ととうとう、上司に言いました。
「もう仕事できない。研修、替わってほしい・・・・」
他部署に移動していた人にピンチヒッターになってもらい、私はすぐさま大きな病院へ。
レントゲンとり、異常なし。 では、MRIやりますか? 予約しましょう・・・。
で、2日後くらいにMRI予約のために病院に到着すると、驚いたことに息もできないほどの腰痛が、すーーーーーーーーーーーーーーっと消えていったのです。何の治療もしていないのに。
あまりに不思議な経験でした。(以後、腰痛は再発してません。)
この時思ったのです、私の腰痛は、「痛い」と言えない、「休みたい」と言えないことでどんどん悪化していったと。
「休みたい」「仕事できない」と白状したら、すーっと消えてしまった。
がん患者の痛みとはレベルが違うけれど、「痛み」というのは、肉体的な痛みだけではなく、心が感じる痛みもあるのだなぁ、と身を持って知りました。
ところで、「痛み」は本当に我慢しないほうがよくて、終末期医療に限らず、治療の初期段階でも、痛み対応はするのが今の医療だそうです。モルヒネなども使っていくとのこと。
(だから、緩和ケア=ターミナルケア、ではないのですね。ターミナルでなくても、緩和ケアは行う)
佐藤医師は、こうもおっしゃっていました。
「痛みの治療は、早ければ早い方がいい。我慢して、我慢して、我慢する傾向があるけれど、我慢している期間が長いと、脳が痛みを覚えてしまう。そのあと、痛みの治療をしても、ほんの少しの刺激で、痛みを感じるようになってしまい、対処も大変になる。痛くない人ほど、穏やかに過ごせるし、治療にも効果が出る。結果的には長生きするようだ」
「痛いこと」は我慢しなければ、と思ってしまう傾向があります。
たとえば、手術を受け、まだ麻酔が効いているうちは、いいのだけれど、夜中に麻酔が切れて、突然痛くなる。でも、その痛みは「手術を受けたのだから痛いのは当然」と思ったり、「痛いけれど、まだ耐えられなくはない」と考えたり、して、なぜか耐え忍んでしまう。
「どこが我慢の限界かわからない」というのも痛みで、「まだ、大丈夫」「まだ、なんとかなる」と思い、かなり長く我慢してしまう。私もそうなので、よくわかります。
でも、佐藤医師が、「痛みなんか我慢しないほうがいいし、痛みを取り除くだけでも、治療はだいぶ楽になる」とおっしゃっていました。
我慢することが美徳、というのは、日本人的かもしれません。
痛いときは痛い。
つらいときはつらい。
そう言ってしまった方が、結果的には、治療効果も見込みやすい。
必要以上には「頑張る」ことないんですね。