「キミは、”腐ったみかん”なんだから、早く帰れ」と上司に言われた風邪っぴきな私(回顧録)
新入社員時代のこと。会社を休むのは罪悪だ、くらいに思っていた時期がありました。まだ、何も会社に還元(貢献)していないのに、”有休”とるなんて、とか、休むなんて言ったら、周囲がどんな風に思うだろう、とか。ま、自意識過剰ではあったのですが。
「風邪を引いても、風邪くらいなら、(熱もなければ)出社したほうがいいよね、第一フラフラなわけでもないし、咳が出て、喉が痛いくらいで、家にいても寝込むこともないし」なんて、そんな風に考えていました(20代で体力もあったから、ですけれど)
で、ある日、喉と鼻と咳というような風邪を引き(平熱)、自席でごほごほしていたら、グループリーダーがやってきて、「田中さん、帰りなよ」と言うんですね。「え? 大丈夫ですけど。咳が出るくらいで熱ないし、ぴんぴんしているし」と返すと、「いや、田中さんのことを心配しているんじゃなくて、皆にうつると迷惑でしょう?」「はぁ・・・」「ほら、”腐ったみかんはどかせ”と言うでしょう?」・・・
なるほどー。私は、今”腐ったみかん”なのかあ、なるほど、なるほど。 自分が元気で仕事できるから大丈夫というだけではなくて、周囲に移したら、余計に大事(おおごと)になって、私一人が休む迷惑よりも、大勢に伝染して大勢が被る迷惑の方が大きいわけだ、と深く納得しました。 それで、たぶん、14時くらいに早退しました。
(古いですが、いや、それは、毎度のことですが、「3年B組金八先生」に出てくるセリフ?なんですよね。たぶん。観てなかったのでよくわかりませんが)
この時、「周囲のことも配慮しての体調管理」ということを学んだのではありました。
ところが実は、それから数年経って、20年くらい前のこと。40℃の発熱で2日間の研修をお客様先で実施したことがありました。それも講義だけではなく、全員のプレゼンテーションをビデオ撮影して、個別にフィードバックをする、というもの。
お客様先に行くまでの山手線で棒につかまり、やっとのことで立っていて、2日間の講義は後で振り返ると記憶がなく、金曜日に終わって帰宅して、そのまま倒れて数日寝込んだのですが、なぜその時、そこまで頑張ってしまったかというと、「代わりがいなかった」から、なんです。当時、ヒューマンスキルの研修講師は、私しかいなくて(その分野を自分で立ち上げて一人でやっていたもので)、講師を交代して対応する、ということができなかった。
もちろん、「代わり」がいなくても、ダメとなったら、お客様にお詫びして、日延べということもできたのでしょうが、なぜか、その時は上司に相談せず、やりきってしまったのです。が、今となっては、やはり、「できない」といえばよかった。そこまで無理しなくてもよかったのではないか、と思います。
「自分しか分からない仕事がある」というのはよろしくない、とも強く思い、その頃から徐々に、「後輩を育てる」とか「誰でもわかるようにしておく」というようなことに、きちんと向き合えるようになった気がします。
個人事業主だったらそんな甘いことを言っていられないのかもしれませんが、会社に勤めていたら、「いざとなったら、お互いにカバーし合う」という態勢を整える、そういう風に人を育てておくことは、自分ひとりが「40℃で頑張る」より、うんといいことなんだろうなあ、と。
それから、「風邪を引くなんて、根性がなっとらん」とか「風邪を引くのは油断の証拠」などと言う人がいますが、「引くときは引く」「避けようと思っても、罹患するときは罹患する」と、私が敬愛する医師が言っていて、「あ、よかった。そうだよねぇ」と納得しました(笑
・・・ところで、数日前、日経ビジネスオンラインに掲載された、この小田嶋隆氏の「風邪で会社を休めますか?」という文章がなんとも面白く、私の周囲で盛り上がりましたので、最後に紹介しておきます。
●小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句 『風邪で会社を休めますか?』(2012年2月3日掲載)
★ 『「経験学習」入門』の読書録は、また後日続きを書きます。(今日は一休みでした)