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『「経験学習」入門』を読んで(2):第1章 成長とは何か

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昨日(2/5)のエントリーの続きです。今日は、『「経験学習」入門』1章をおさらいしましょう。

タイトルは、「成長とは何か」。

成長には、2種類あるそうです。

1. 能力的成長
2. 精神的成長

「能力的成長」とは、

「仕事上の問題を発見し解決するために必要な知識やスキルを獲得すること」

だそうです。いわゆる「熟達すること」です。

研修でも学べるし、仕事を通じてだんだん知識やスキルが向上する、というタイプのものですね。
この部分には、カッツの「3つのスキル」について触れてあり、「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」が組織内の役割や立場に応じて、きちんと変化できていれば、「能力的成長」ができている、ってなことが書いてあります。

一方で、「精神的成長」。

仕事に対して適切な「思い」を持つようになること

これは、昨日も書きましたが、「自分のこと」に加え、「他者のこと」への配慮できるようになることです。

たとえば、新入社員だとすると、まずは自分が成長しなければならないし、自分が成長した、という実感を味わいたい。自分が、自分が・・・というのが関心事の中心にあることでしょう。で、それでいいんだと思います。

が、だんだんとキャリアを重ねていくと、「自分が自分が」ではなくて、「以下に他者を喜ばせるか」「他者の役に立つか」ということも関心事として持っていなければならないということですね。

松尾さんは、こうも書いています。

ある段階までは自分への思いだけで成長できるのですが、成長し続けるためには、周囲や組織のことを考えられるか、顧客や社会のことを考えられるかが大切になるといえるでしょう。

・・こういうのを読むと、「OJT制度」というのは、後輩を指導する、育てるだけが目的なのではなく、教え育てるOJT担当者側の成長にもやはり意味があるんだなあ、と改めて思います。それも、OJT担当者が後輩たちの指導を通じて、自分も知識や技術を学び直さなければならない、という「能力的成長」の側面だけでなく、他者への思いを育むという意味で「精神的成長」にも役立っているのだと言えるのでしょう。

・・・さて、読み進めます。

30代以降で成長が止まってしまう人がいます

この後に、こう続きます。

環境が変化しているのにもかかわらず、過去に成功した手法に頼り、それをさらに強化して対処しようとする性向を、経営学者のサルとホールダーは「能動的惰性」と呼んでいます

前にこれでうまく行ったから、今でもこのやり方でいいんだと固執してしまう「昔のヒーロー」がいるでしょう?と。(「昔のヒーロー」は、序章に出てくる言葉です)

これも、なんとも耳の痛い話ですね。中堅、ベテランになってくると、「私はこれでやってきた。だから、後輩にも」というこだわりが強くなってしまうタイプがいます。

たとえば、「10年前にお客様とは呑み会を開くことで、いい関係が築けて、だから、何がなんでもノミュニケーションをするんだ」と思いこんでいて、でも、顧客側は、「コンプライアンスの関係からも接待されるのはちーとばかり迷惑」だし、「第一、飲みに行ったからって、仕事依頼するわけないでしょう。仕事の中身と個人的に親しくなる、は別物だよ」と冷静に考えていたりする。こんなところにギャップが生まれてしまうわけ、です。

こういう「昔のヒーロー」が何をすべきか、といえば、アンラーン(Un-learn)。つまり、学習したことをいったん捨てること。学習棄却。(哲学者・鶴見俊輔氏は、これを「学びほぐし」と訳したとあります)

アンラーン。これがとても難しいと思います。自分に自信があればあるほど、過去の成功体験にとらわれてしまう、など。誰にでも心当たりがあるような・・・。

企業のOJT支援をしていて、時々遭遇するのは、「私はこういう育てられ方をした。だから、後輩もそう育てる。着いて来られない後輩の方が悪い」という考え方です。

これは、相手と自分がもともと異なるタイプの学習者だということを忘れているだけではなく、自分の体験に縛られ過ぎているように思います。

でも、かたや、すごく柔軟なタイプのOJT担当者もいて、「自分たちと時代の違うし、相手も自分とは別人格だから、相手に合わせて教え方を試行錯誤してます。一番はまりそうなやり方が数か月してようやく分かった」と明るい声でおっしゃる方も。

こういう方は、「学びほぐし」(アンラーン)が上手なタイプなのでしょう。

・・・ふぅ~。ようやく1章が完了。明日はさらに2章に挑戦します。

毎度毎度ですが、今日初めてこのブログをご覧になる方もいらっしゃるでしょうから、本のリンク貼っておきます。

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