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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

OJT担当者を「コンシェルジュ」と思わせてはいけない

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勤務先で、OJT制度に関係している人事部あるいは人材開発部の方との勉強会を主催しており、1/25(水)に第3回の会合を行いました。どちらの企業の方も、自社内で「OJTの制度化」を推進し、また運用している立場にあります。

以前も触れましたが、「OJTの制度化」とは、今世紀に入ってから、どの企業でも進んでいる人材開発施策の一つで、ブームと言ってもよいものです。

簡単におさらいすると、こんな感じのものをさします。

●新卒新入社員(~最大3年目まで)に1対1でOJT担当者をアサインする
●成長ゴールを決め、育成計画を立て、OJT担当者主体で若手社員を育成する
●が、あくまでも育成の責任はマネージャ(管理職)にあり、また組織全体で育成する風土の醸成も育んでいく
●こういう全体の仕組みの構築と運用・維持を人事部や人材開発部が行う

・・・企業によって、細かい部分は異なりますが、簡単に言うと上記のようなものを「OJTの制度化」と言っています。

これは、学生を採用する際の売りの一つにもなります。「きちんとしたOJT制度がありますよ」と採用ページなどで訴えることができますから。

さらに、入社した新入社員にも、「新人研修」→「OJT」という”育成”の流れがあることを示すことで、安心感を与え、メンタル不全を予防したり、離職率を下げたりという効果もあると聞きます。

10年以上前までは、「OJT」という名の「放置プレイ(←これは私が命名したのではなく、多くの企業の方が、”放置プレイでした”とおっしゃるのでそのまま言葉をお借りします)」が、あちこちの企業、組織、部署で散見され、これではいかん、ということで「制度化」が進行しているものと思われます。

こういう制度がかれこれ10年近く運用されてくると、当然、「OJT」制度で育った社員が次世代を育てるという風になってきて、「OJT」はもう「あって当たり前」という認識になります。だから、「どうして後輩を育てなければならないんですか?」という、OJT制度化初年度にはよく耳にした疑問などもだんだん聞かなくなります。

制度の浸透という面でとてもよいことです。

が、一方で、制度が浸透した結果、弊害と思えることも時々起るようです。

新入社員が「OJT」の制度は、”サービス”と思ってしまう部分がある、というのです。
OJT担当者である先輩がまるで”コンシェルジュ”のように思えるという・・・。

新入社員たちが「OJT担当者の先輩は、私たちに何をしてくれるんですか?」と発言するなど、「サービスの受給者」という感覚に陥るケースもある、と聞きました。

こうなってしまう前に、「OJT制度」とは何で、何のためにあって、という目的や意図、それから、「あくまでも、”学ぶ”主体は”あなた”なのだ」「先輩は成長の”支援”はするけれど、成長するのは、ほかでもない”あなた”自身なのだ」ということをオリエンテーションなどできっちり伝えていかなければならないのでしょう。

上を向いて口を開けていたら、親鳥が餌を運んできてくれるというようなことではなく、自分から餌をとる方法を親鳥に「教えて!」「やらせて!」という働きかけをしなければならず、親鳥はそれを喜んで支援する、そういう制度なのだよ、と理解させる必要があるのだろう、と思います。


(※ もちろん、OJT制度は、「OJT担当者」に任命された先輩側の成長も視野に入るのですが、それはまた別の話)

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