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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「あなたに期待していること」&「あなたに期待していないこと」

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夏(秋)休み6日目。命の洗濯は続行中です。いい天気に恵まれ続けて、毎日楽しい。(あ、仕事中の方、申し訳ない。)

さて、ちょっと真面目に。

よく、

「部下には、”期待していること”をきちんと伝えよう」

なんて言いますよね。

面談の席で、

「○○さんに”期待している”ことはね、かくかくしかじか・・。だから、今期も頑張ってくれたまえ」(たまえ、なんていう上司に出会ったことはありませんが)

なんて具合に。

それで、「そうか、私が期待されていることは、これかあ」と一念発起して頑張り、ちゃんと「期待通り」あるいは「期待以上」の成果を出す人がいる。

一方で、

「”期待していること”を伝えたのに、なんだか回り道ばかりしていて、いつになったら、本来”期待している”レベルに到達してくれるんだろう?」と思う部下もいる。

でもその部下に尋ねてみると、遊んでいるわけではない。仕事が各段遅いわけでもない。すごく”頑張って”いる。

では、「期待値」とずれているのはなんなんだろう????んん?んんん?

で、ふと気づく。

もしかすると、”期待していること”以外に「あなたには”期待していないこと”」まで手掛けているのではないか?
それで忙しいのではないか?

部下は、”期待していること”という円(集合)の中に「(自分には)”期待されていないこと”」も含めて考えている可能性があるのですね。

だから、その”期待されていないこと”に時間をとられ、本来、”期待されていること”に手が回らない。時間割けない。「一生懸命頑張ってます」「ちゃんとやってます」という言い訳もできてしまう。

そこで、この「集合」を整理する必要があります。

「あなたに”期待していること”はこれです」
「でも、あなたに”期待していないこと”はこれとこれです」

”期待していないこと”を”期待していること”の円(集合)から外に出してやらねばなりません。


”期待していないこと”を明確にし、それを”期待していること”の集合から外した部分に置いてやり、それであらためて、「あなたに”期待してること”は、これ!!! ここ!!!」をきちんと伝える。

そうすれば、本来してほしいことに集中させられるのではないかな、と。


たとえば、ですね。

料理人が、中堅くらいになって、これまでの「野菜の下ごしらえ」に加え、「新しいソースの研究」を言い渡されているとします。

「あなたに”期待していること”は、”新しいソースの研究”だ。それをすることで後輩にも日々研鑽することが大事だという範を示すこともできるから」と上司からは言われています。

ところが、彼はなかなか「新しいソースの研究」に着手しません。なぜか、と観察していると、「野菜の下ごしらえ」に時間がかかりすぎているのです。確かに、今でも「野菜の下ごしらえ」は彼の仕事の一部だけれど、もっと若い後輩もいるのだから、後輩にも分担し、自分がしないといけない「飾り切り」とか「面取り」とか、ちょっと上級の部分だけやって、時間を作り、「ソース研究」に充てるべきなのですね。でも、「いやいや、野菜の下ごしらえは私もしなくては」といつまでも若手時代と同じようにやってしまっている。

だから、本来期待されているソースの研究まで手が回らない。

この場合、この中堅料理人には、「新しいソースの研究が”期待していること”で、”期待していないこと”は、野菜を洗ったり、皮をむいたりというごく初歩的な作業。これは、もっと年若い見習いにさせなさい、確かにあなたがやったほうがもっと上手で手際がいいかも知れないけれど、そこの時間をかけることは、あなたに”期待していること”ではないよ」と明確に線引きをしてやる必要があります。

これで、ようやく、抱えてこんでいた(つまり”期待されている”仕事に含まれると思っていた)仕事を手放せる人もいると思うのです。

「そんなこと、自分で考えろ」
「言われないと、その線引きもできないのかな」

と、優秀さゆえにマネージャになった人はよくそう言うのだけれど、「ちゃんと言葉で伝えないとわからない」ものです。

人は、全員、違うものの見方をし、考え方をし、それに基づいて行動しますから。

”期待していること”を伝えるだけで、”期待されていないこと”まで推し測ることは、できないこともある。
それであれば、上司がきちっと伝え、理解させることが重要なのだと思います。

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