ニュースから読み解く半導体業界の最新トレンド(2025夏)!!!
こんにちは。
私のウォッチングテーマとして「半導体業界」があります。
2025年8月、半導体業界の動向はどう変化しているでしょうか。
今回お話しするトレンドは以下のようになります。
1. 世界半導体業界業績と株価はAI普及に合わせて好調
2. エヌビディアとTSMCの2人勝ち
3. 韓国SKの躍進
4. 日本勢の苦戦
5. EV半導体投資の誤算
6. 欧米企業の状況
7. トランプ政策の影響
8. 引き続き夢の国策ラピダス
1. 世界半導体業界業績と株価はAI普及に合わせて好調
まず8月最新のニュースです。
世界半導体販売額19%増 6月 (日経新聞 2025.8.20)
このように、半導体業界全体は、生成AI関連ビジネスの活況による影響で世界の半導体の販売額を押し上げています。この傾向はしばらく続きそうですね。
それでは、半導体企業の個別の業績を見てみましょう。
半導体主要10社 最高益 エヌビディアが利益の4割(1-3月)(日経新聞 2025.6.13)
こちらは、少し前になりますが、今年1~3月の数字から、以下10社合計の純利益が3年ぶりに過去最高を更新しました。
ただ、ここでもその合計利益の4割はエヌビディア1社ということです。また、インテルは黒字にはなりませんでした。
エヌビディア(米) 187億ドル
TSMC(台) 109億ドル
SKハイニックス(韓)55億ドル
サムソン(韓)55億ドル
クアルコム(米)28億ドル
マイクロン(米)15億ドル
TI(米)11億ドル
AMD(米)7億ドル
STマイクロ(スイス)0.56億ドル
インテル(米)8億ドル赤字
続いて、半導体企業の株価です。
世界の半導体株 戻り鮮明 エヌビディアは4割高 中東のAI需要に期待 (日経新聞 2025.5.21)
まず、世界の半導体・半導体製造装置の株価指数は4月から5月の期間に35%上昇しました。その大きな要因はエヌビディアです。
エヌビディアは最新鋭のAI半導体をサウジ政府系のファンド傘下のAI開発企業に1万8000基納入し、さらに、今後5年間で数十万基のAI半導体のインフラを構築する計画を打ち出したことが株価上昇に影響したようです。
エヌビディアも含めた主要半導体銘柄の4月から5月の株価上昇率は以下のようになりました。
ブロードコム(米)47.8%
AMD(米)46.7%
エヌビディア(米)40.8%
アナログ・デバイセズ(米)35.2%
KLA(米)31.3%
TI(米)29%
AMAT(米)28.7%
クアルコム(米)23.3%
TSMC(台)20.6%
ASML(オランダ)15.4%
2. エヌビディアとTSMCの2人勝ち
まずは、エヌビディアのニュースからです。
・エヌビディア、高成長率維持 台中規制でも50%増収(5-7月)
(日経新聞 2025.5.30)
・エヌビディア4兆ドル突破 時価総額で一時 AI成長期待で
(日経新聞 2025.7.10)
・エヌビディア、4兆ドルクラブ一番乗り 「AIの黒子」産業の主役に
(日経新聞 2025.7.11)
エヌビディアは、引き続き高い増収と株価、時価総額についても最高値を更新しています。
どこまでいくのでしょうか。
さて、日本のこのメーカーもエヌビディア頼りのようですよ。
・エヌビディア技術 切り札 任天堂、スイッチ2発売 専用AI半導体を搭載
(日経新聞 2025.6.6)
続いて、同じく飛ぶ鳥を落とす勢いのエヌビディアのパートナーであるTSMCです。
・TSMC売上高最高 4-6月38%増 AI向け好調
(日経新聞 2025.7.11)
・TSMC、4−6月最高益 今期、3割増収に上方修正 米工場への投資、需要つかむ
(日経新聞 2025.7.18)
・TSMC、時価総額1兆ドル 148兆円突破 AI向け成長期待
(日経新聞 2025.7.23)
・TSMC、7月売上高最高 AI向け先端品好調
(日経新聞 2025.8.9)
こちらも1兆ドルクラブ仲間入りのようですね。この2社はとどまるところを知りません。
3. 韓国SKの躍進
続いて、お隣の韓国では韓国SKハイニックスの勢いが良いようです。
・韓国SK、サムスン超え 半導体DRAMシェア首位 先端品けん引、最高益
(日経新聞 2025.8.1)
今まで30年間首位だったサムスンをシェアで抜いて、4-6月期は最高益をつけたようです。
また、SKはこんな一手も打っています。素材や装置などを連携していくとのことです。
・SK「半導体、日本勢と連携」韓国財閥 チェ会長、投資法人を新設
(日経新聞 2025.5.31)
ただ、韓国では、国策として次のような動きもあるようです。どうなるのでしょうか。
・韓国半導体装置 急ぐ国産化 LG、新規参入 ハンミは新工場 生成AI向け
(日経新聞 2025.7.26)
4. 日本勢の明暗
さて、それでは、我々日本の半導体関連企業はどうでしょうか。ニュースになっているものを追ってみたいと思います。まずは半導体メモリーのキオクシアです。
・キオクシア黒字転換 前期最終2723億円 足元は需要低迷も
(日経新聞 2025.5.16)
・キオクシア74%減益 4-6月最終 半導体メモリー回復遅れ
(日経新聞 2025.8.9)
2024年3月期の決算の数字は良かったのですが、2025年度の4-6四半期の数字がなんと大幅減益になりました。厳しいですね。
日本企業のこれからの投資に関するニュースもありました。
・キヤノン、半導体装置脚光 21年ぶり宇都宮に新工場 AIブーム 従来型に需要
(日経新聞 2025.7.31)
キヤノンが今回投資している半導体装置は「露光装置」です。この「露光装置」は、現在、オランダのASMLが世界シェア9割を握っています。キヤノンは、AI向け半導体ブームに伴う新用途で自社が得意とする従来型装置に脚光が当たっていることから、今回の投資に踏み切ったということです。
頑張って欲しいですね。
・韓国で第3工場新設もTOWA 生成AI需要に対応
(日経新聞 2025.7.1)
半導体製造装置メーカーのTOWAが韓国でAI向けに工場を新設する可能性があると取材で発言したことがニュースとなっていました。
・半導体の後工程、30社連携 地方企業、設備更新でコスト2割減 供給網整え 海外勢に対抗
(日経新聞 2025.7.10)
こちらは、日本の地方にある中小の半導体企業30社が、今、重要性が高まっている「後工程」の設備更新などで業界団体を結成し、連携を深めるというニュースです。
日本の場合、中小企業が多いので、連携して大きなビジネスをとっていくことは大事かと思います。
・インドに半導体材料工場 富士フィルム 国産化政策に対応
(日経新聞 2025.5.7)
富士フィルムが2028年頃の稼働を目指して、半導体の製造工程で不純物を取り除く薬品や現像液などの生産工場を建設する予定とのことです。インドが国策として支援する半導体プロジェクトにそのような材料を供給するとのことです。
半導体装置企業の業績に関するニュースがありました。
・半導体装置大手に明暗 アドテスト純利益3.8倍 東エレク7%減
(日経新聞 2025.8.19)
東京エレクトロンが悪かった原因の一つが中国向けの低迷だということです。つまり、中国の半導体メーカーの投資が減ったからのようです。
また、逆にアドテストの業績が良かった要因は、競合他社よりもAIの開発や運用に欠かせない画像処理半導体(GPU)向けの半導体試験装置に優位性があったためと推測されています。
5. EV半導体投資の誤算
EV向けのパワー半導体の受託生産を手がけるJSファンダリという企業に関するニュースです。
・JSファンダリ 見誤った力の差 半導体再生の夢途絶、誤算続きの破産
(日経新聞 2025.7.31)
7月14日からJSファンダリの破産手続きが始まったという衝撃的なニュースです。
実はこのパワー半導体市場自体が足元で伸び悩んでいます。なぜかというと、パワー半導体の用途は電気自動車(EV)がメインだからです。
EV自体の市場が、現在、あまり良くありません。そのため、パワー半導体を手がける企業が軒並み苦戦しているとのことです。
そして、同じくEV向けパワー半導体を作っていた日米の企業も苦戦しています。
・米半導体大手破綻か ウルフスピード、ルネサスの取引先 EV需要減響く
(日経新聞 2025.5.22)
・ルネサス、EV半導体誤算 1-6月米社破綻で赤字転落
(日経新聞 2025.7.26)
ウルフスピードは、2023年にルネサスエレクトロニクスにSiC製のウエハーを供給する10年間の長期契約を結んでいたのです。直接的には、ウルフスピードが破綻して、これが反故になったことが響いたと思われます。
6. 欧米勢の状況
次にエヌビディア以外の欧米勢の状況に関するニュースをひろってみます。
・ASML純利益45%増 4-6月 来季成長は確約できず
(日経新聞 2025.7.17)
ASMLは、キヤノンのニュースについて書いたように、最先端半導体の量産に必要な露光装置のシェアが世界でも飛び抜けています。今回の販売増、利益増もそれが寄与しているとのことです。
・AMD低価格のAI半導体 競合エヌビディアと同等性能
(日経新聞 2025.6.14)
米AMDはAI半導体でエヌビディアを追従しています。
エヌビディアの主力製品「B200(ブラックウェル)」に対して、「MI355X」という新製品をの提供を2025年7月から9月に始めるとのことです。この「MI355X」は「B200」より低コストながら、同等の性能を発揮できるとしています。
・ブロードコム、米時価総額7位に テスラ超え「M7」の牙城崩す
(日経新聞 2025.6.11)
米ブロードコムの時価総額が1兆ドルを超え、米株の時価総額で7位に上昇したそうです。ちなみに「M7」とは、マイクロソフト、エヌビディア、アップル、アマゾン、アルファベット、メタ、そしてテスラでした。テスラを抜いたということです。
エヌビディア以外の欧米企業、調子良いみたいですね。
7. トランプ政策の影響
今年から世界を振り回している米国トランプ政権の影響は半導体企業にとってどのようなものでしょうか。トランプ政権と関係しているニュースを追ってみます。
まず、米国大手エヌビディアとAMDに対するトランプの政策がニュースとなりました。
・エヌビディアとAMD 米政府に収入15%納付 AI半導体、中国輸出再開で
(日経新聞 2025.8.12)
・米、ゆがむ対中経済安保 AI半導体エヌビディアから「上納金」 輸出緩和と引き換え同盟国の信頼失う恐れ
(日経新聞 2025.8.13)
米政府は安全保障上の理由で、2022年からAI半導体に厳しい対中輸出規制を導入していました。そのため、両社は性能を落とした製品を対中国に輸出することで規制をかいくぐってきました。
トランプ政権は、当初、4月にはこうした製品も規制対象としていましたが、一転、7月に規制緩和を容認しました。
今回の「上納金」は、規制緩和を継続する見返りとして、中国輸出用に販売したAI向け半導体収入の15%を米政府に払うとしたものです。
米政府は2022年からの規制を行う際、同盟国にも対中輸出規制への追随を求めてきましたので、同盟国との信頼が崩れてしまう可能性があるということです。
次に大きなニュースは、米インテルに対する米政権のニュースでした。元々、米インテルはAI向け半導体製品に遅れて、赤字が続いていました。
・インテル、難路の単独再建 4-6月、6四半期連続赤字 受託の提携交渉進まず半導体工場計画を撤回
(日経新聞 2025.8.13)
それが、8月になってトランプ政権から次のような話がニュースとなりました。
・米政権のインテル出資 半導体補助金の活用検討
(日経新聞 2025.8.16)
・トランプ政権 インテルと異例の出資協議 半導体の国内生産支援か 規模は不明
(日経新聞 2025.8.16)
先ほどのエヌビディアとAMDの「上納金」と同じように、こちらの私企業への直接出資も異例のことだそうです。トランプ政権はインテルに出資することで、現在、凍結しているオハイオ州の半導体工場の建設を促して、最終的には国内で半導体を生産拡大を支援していく方針だと思われています。
いや、トランプ、元ビジネスマンだけあって色々と奥の手を使ってきています。
8. 引き続き夢の国策ラピダス
さて、最後の半導体ニュースカテゴリは、定期的にニュースとなる、国策半導体生産拠点のラピダスについてです。
・ホンダ、ラピダスに出資へ トヨタに続き 国策半導体に弾み
(日経新聞 2025.6.11)
・ラピダス、量産「まだ1合目」 ホンダが出資へ さらに3兆円必要 技術開発顧客開拓 カギに
(日経新聞 2025.6.12)
・ラピダス、決意の2ナノ試作品 半導体公開、27年から量産 顧客獲得へ性能磨く
(日経新聞 2025.7.19)
・ラピダス始動 国産半導体、再興ののろし 往年の技術者が活躍
(日経新聞 2025.7.23)
・ラピダス始動 若返る「おじさん集団」 設立3年、平均50歳以下に TSMCと人材争奪
(日経新聞 2025.7.24)
日本の国産半導体の夢をのせて、ラピダスは業界の期待の星のようですね。
以上、今年5月から8月までの半導体ニュースをトレンドにしてみました。
1. 世界半導体業界業績と株価はAI普及に合わせて好調
2. エヌビディアとTSMCの2人勝ち
3. 韓国SKの躍進
4. 日本勢の苦戦
5. EV半導体投資の誤算
6. 欧米企業の状況
7. トランプ政策の影響
8. 引き続き夢の国策ラピダス
それでは。
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