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地銀システムのクラウド化は進むのか?!!

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こんにちは。


地方銀行のシステム共同化についての状況に最近、変化があり、さらに新たなプレイヤーも参入してきましたので、ここで一旦、状況を見ていきたいと思います。

まず私が2022年2月、つまり3年前に書いた記事をご覧ください。
「今ひとつわかりづらい地銀システムの動向と今後?!」https://column860879581.wordpress.com/2022/02/26/<コンサルタントtの爆裂コラム第216弾>-「今ひと/

この時にまとめた情報をおさらいしておきましょう。

地銀のシステムは、70行以上が「個別メインフレーム型」から「共同センター型」に移行していました。また、最も大きな「共同センター」であるNTTデータのMEJARについては、2024年稼働を目途にシステムをメインフレームからオープンへ移行するプロジェクトが進行していました。

記事の最後には
「「地銀システムのクラウド化」は今後、確実に、徐々に実現していくものと思われます。」
と結んでいました。

さて、3年経過した現在では、どのように変化しているのでしょうか。
まず、地銀自体の状況に変化があったか見てみましょう。

現在、確認できる情報で、地方銀行の数は61行(前回調べ62行)第二地銀の数が36行(前回調べ37行)ですので、それほど変化はないようです。
むしろ問題なのは、適正な数への統合があまり進んでいないということかもしれません。

続いて、問題となる「共同センター」の現在はどうでしょうか。

<NTTデータ>
・地銀共同センター(13行)/NTTデータ
・STELLA CUBE 基幹系共同センター(11行(+1))/NTTデータ
・BeSTAcloud 金融機関向け基幹系システム(9行)/NTTデータ
・MEJAR 地銀共同システム(6行(+1))/NTTデータ

<日本IBM>
・TSUBASA 基幹系共同システム(6行(+1))/日本IBM
・Chance 地銀共同化システム(8行)/日本IBM
・じゅうだん会 銀行システム共同化プロジェクト(7行)/日本IBM
・Flight21(3行) /日本IBM

<日立製作所>
・NEXTBASE(10行(-1))/日立製作所
(・NEXTSCOPE(Banks'Ware)は現在共同センターではなく、単行システムとなっています)

以上のように、「共同センター」の勝敗でいくと、NTTデータが自陣への参加行を2つ増やし、逆に日立が2行、数を減らしており、若干、NTTデータ優位となっていますが、「共同センター」のビジネス全体としては、あまり変化がないとも言えます。

さて、この「共同センター」スタイルは、メインフレームのような大型勘定系システムであれば、それをベンダーのデータセンターに共同化して運用コストを削減することは、加盟行においてそれなりのメリットがありました。
ところが、時代の潮流は「メインフレームからオープンシステム」に、そしてさらには「クラウド」に、とシステムのトレンドが変化しています。
今まで遅れていた地銀の勘定系システムの分野でも、従来型の「共同センター」を使った「メインフレーム型からオープン型、そしてクラウド型」にとシステムを適応していかなくてはならない状況は待ったなしです。

この「メインフレーム→オープン→クラウド」という流れの中で、現在の地銀システムはどう対応しているのか、その代表的なトピックを3つ説明します。

1. NTTデータの代表的共同センターである「MEJAR」システムのオープン化が完了
2. 「共同センター」以外の選択肢として、MSのAZURE上で動くBIPROGYのクラウド型BankVisionを採用する銀行が増加
3. SBIホールディングスの地銀への参入とクラウド型次世代バンキングシステムの提案


1. NTTデータの代表的共同センターである「MEJAR」システムのオープン化が完了

NTTデータは、従来、富士通のメインフレーム上で稼働していた「MEJAR」のシステムを3年費やして2024年に「オープン環境」に移行しました。
技術的には、メインフレーム用のミドルウェアの代わりになるオープン環境に対応したミドルウェア「PITON」を開発して置き換えたのです。

NTTデータは、このオープン対応の「PITON」を製品化して、他の共同センターシステムにも適用していく構想を持っているようです。手始めに、同じNTTデータが手がける「地銀共同センター」に導入して、同様にオープン化を推進しています。
そして、さらにはオープン型「MEJAR」を銀行専用のクラウドとして進化させ、「統合バンキングクラウド」へと2030年を目標に移行していく方向性も考えているようです。
このように、「共同センター」を運用しているベンダーの中では、いち早く「メインフレーム→オープン→クラウド」という方向性を打ち出したのがNTTデータでした。

一般的に、「共同センター」運営の中では、銀行の勘定系はコストダウンと安定運用が第一であり、あまり冒険をしたくない加盟行も多いでしょうから、オープン化、クラウド化への追加投資を積極的に行うことは難しいとは思います。
また、ベンダーにとってみても、今のメインフレームでの「共同センター」運営が、毎年、利益を稼げるのであれば、オープン化、クラウド化を自分から言い出しづらい傾向にもあるのかもしれません。
ただ、オープン化、クラウド化の波に対して何もしないというわけにもいかないため、次のシステムの更改のタイミングなどに合わせて提案する程度かと思います。

このようなことから、地銀の「共同センター」がオープン化、クラウド化していく動きは遅くなる傾向にあるのかと思います。

ただ、「共同センター」ではなく、銀行単体のシステムであればどうでしょう。
銀行幹部の中には、現在のベンダーのメインフレームシステムに払い続けている莫大な運用費用に問題意識を持っている方も必ずいると思います。
そうした銀行幹部の方が、自分の銀行は「共同センター」に加盟するのではなく、自銀の基幹システムのオープン化、クラウド化を志向したコストダウンとフィンテックなど顧客の利便性を高めていく投資に舵をきることは十分ありえます。

それが次の流れです。

2. 「共同センター」以外の選択肢として、MSのAZURE上で動くBIPROGYのクラウド型BankVisionを採用する「個別クラウド型」銀行が増加

さて、前述のような「共同センター」のモダナイズの歩みが遅いため、自行のシステムを「個別クラウド型」に一気に持っていく地銀が増えています。現在、その有力な選択肢としてあるのが、BIPROGY(元ユニシス)が提供するBankVisionです。
このBankVisionの勘定系システムはオープン型のシステムでマイクロソフトのクラウド基盤である「Azure」上で稼働しています。
現在、11の地銀がこの「個別クラウド型」のBankVisionを自社の勘定系システムを含む基幹システムとして稼働しています。このように「共同センター」ではなく、「個別クラウド型」システムを導入、あるいは移行していく地銀が今後増えてくると思われます。


3. SBIホールディングスの地銀への参入とクラウド型次世代バンキングシステムの提案

最後に、この「個別クラウド型」システムの流れに乗って、現在、地銀業界に攻勢をかけているのがSBIホールディングスです。
SBIホールディングスは、SBI新生銀行にフューチャーアーキテクトなどと共同で、クラウド上で運用する新勘定系システムを開発して導入しました。
このシステムはアマゾンウェブサービス(AWS)上で稼働する個別クラウド型のシステムです。
そして、SBIホールディングスの北尾社長はこの「個別クラウド型」システムを全国の他の地銀に提供してビジネス面もSBIグループやSBI新生銀行とサービス連携できる「第4のメガバンク構想」の実現を目指していくということです。

このように、地銀のシステムは、従来、主流だった「共同センター」という流れから、明らかに「個別クラウド」に移行する流れに変わってきています。こうした「個別クラウド」の流れが激しくなる前に、NTTデータがMEJAR等のいわゆる「共同センタークラウド」を提供できる体制を整えられるかがポイントとなります。

また、今後「個別クラウド」の提供ベンダーも増えてくることでしょう。現在はBIPROGYが優勢ですが、SBI新生銀行のクラウドバンキングシステムも、今後、仲間を増やしていくかもしれません。
または、全く新しいクラウド型バンキングシステムベンダーが市場に現れる可能性もあります。

また、これと同じ状況にあるのが、地方自治体のシステムでした。こちらはデジタル庁、すなわち政府がリードして法整備をしながら、デジタル庁が提供する「ガバメントクラウド」の標準クラウドシステムに移行することが決まっています。
地銀の場合は、民間機関なので、こうした強制的なクラウド移行の流れは起こしづらいですが、金融庁がリードして「バンキングクラウド」の推進を図っていく方向性もなくはありません。

地銀のシステム動向について、今後も目を話せません。

それでは。

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