わかりづらい半導体業界、5分でわかる業界ニュース!!
こんにちは。
さて、今回はビジネスネタです。半導体業界です。少し前に半導体業界があまりにわかりづらいので、整理も兼ねて、次のような記事を書きました。
「わかりづらい半導体業界を超わかりやすく解説する!!」
https://blogs.itmedia.co.jp/takuma/2024/09/10.html
この記事で半導体業界の構造を押さえた上で、昨年末までの半導体業界の動きを追ってみたいと思います。とにかく、この業界は毎日、なんらかのニュースがあるほど変化の激しい業界なので、そんなダイナミズムを感じてみたいと思います。
1. インテルの凋落
インテルの2024年4-6月期の業績が悪かったニュースについては前回の記事でもお話ししていますが、一応おさらいです。
まず、その業績数字は以下のとおりです。
売上高128億3300万ドル(約1兆9100億円)
最終損益マイナス16億1000万ドル(約2300億円)
売上高は前年同期比1%減とあまり変わっていないのですが、なんと損益が赤字に転落してしまいました。
その原因は3つあるとニュースソースにありました。
「インテル苦境、3つの誤算 実らぬ投資/シェア低下/AI出遅れ 年初から時価総額年初から半減」(2024.9.30 日経新聞)
1つ目は受託生産でかさんだ投資負担です。受託生産事業部門の4-6月の営業損益が28億3000万ドル、大きな赤字となっていることが直接原因のようですね。
2つ目は稼ぎ頭のCPUのシェア低下です。インテルの場合、もともとシェアが高いのですが、前年比10ポイト下がって、71%になったようです。そして、このインテルのシェアを奪っているのが米AMDなんです。AMDの場合、設計のみ行い、その受託生産はTSMCに頼んでいます。こうした事業モデルの方が、CPUについてもコストやクオリティが良くなるのでしょうか。
3つ目は生成AI分野の出遅れです。インテルも生成AI製品を新たに発表したのですが、この分野は、依然、ヌビディア+TSMCに圧倒的に負けています。
このような業績悪化から1万5000人規模の人員削減を発表したところまで前回お話ししました。
その続きです。
まず、インテル単独での事業再編としては、製造部門をTSMCのように分社化して、インル本体が設計した製品を受託生産させると同時に他からも受注を狙います。そして、何より分社化したことにより、外部から資金を調達できるようにするとのことです。
このようにインテルの経営の大転換、つまり、今までの垂直モデルをやめて、自社グループ内ですが、水平モデルになるとのことです。
「動き出すインテル救済 クアルコムが買収打診 相乗効果期待、成立は不透明」
(2024.9.22 日経新聞)
さて、ご存知のように、インテルの株価が大分下がっているからなのか、同業の米・クアルコムがインテルに買収を打診しました。これが実現すれば、テック業界のM&Aでは過去最高規模になります。ただ、独禁法などの課題もあり、インテルが受けるかは未知数です。
バイデン政権もインテルに最大85億ドルの補助金を出す方針です。さらに9月16日には、追加で30億ドルの補助金も出すことを発表しています。また、アマゾンドットコムはAI向け半導体の生産をインテルに委託すると発表して、支援するようです。
ちなみに、前回の記事では、2023年の半導体企業売上高の世界ランキングの中で1位インテル、2位エヌビディアと記載しました。両社の現在までの四半期業績を見てみると、インテルの128億3300万ドルに対して、エヌビディアの4-6月売上高はなんと300億ドルいっているので、2024年の1位はエヌビディアになる可能性が高いですね。
インテルは1位からどこまでランキングを落とすのか注目で。
2. ラピダス半導体工場建設に関連して
前回の記事でも記載した、北海道に半導体生産工場を建設している国産メーカーのラピダスですが、次のような3つのニュースが関連して出てきています。
「3メガ、ラピダスに出資へ 計150億円、政投銀も100億円 半導体量産化へ資本増強」
(2024.9.27 日経新聞)
「ラピダスに事業会社も追加出資意向 NTTやソニーG」(2024.9.28 日経新聞)
2022年8月のラピダス設立時には、トヨタ、ソフトバンク、NTT、ソニーグループなど8社が計73億円を出資しています。これに加えて、3メガバンク、三井住友銀行、みずほ銀行、そして政策投資銀行が新たに株主として出資しました。三菱UFJ銀行は既存株主でしたが、新たに追加で出資しました。
3メガバンクはそれぞれ最大50億円を出資、日本政策投資銀行は100億円拠出したようです。
それと合わせて、既存株主のNTT、ソニーグループ、NEC、キオクシアも追加出資する意向を示しているそうです。結構な出資額が集まったような気もしますが、ラピダスの資本目標額は1000億円を掲げているので、まだまだですね。それというのも、ラピダスが2027年までに必要な資金はなんと合計9兆円だそうですよ。資金集めも大変ですよね。
「脱原発ではラピダス成長できず 再稼働が経済を支えている現実」(2024.9.12 日経ビジネス)
ラピダスのような半導体生産工場には数十万キロワットの電力が必要とされます。そこでポイントとなるのが、北海道電力の泊原発の再稼働です。現在、原発の再稼働にはハードル高めですが、こうした半導体産業などの大型投資を行う際には、地域電力の確保が条件となっています。
TSMCの熊本工場もそうした電力の大量需要を見込んで、熊本にしたということです。
「半導体人材の不足深刻 TSMC進出、熱狂の裏側」(2024.9.16 NIKKEI Film/日経新聞)
現在、TSMCが2024年末に熊本工場を稼働するために半導体工場の人材を急募しています。同じように、ラピダスも2027年の量産化のために半導体工場で働ける人材が大量に必要となります。
こうした半導体人材不足に対して、先行している熊本では、熊本大学が早速、半導体分野を対象とする教育コースを設置しました。ラピダスがらみでは、旭川市の工業専門学校にて半導体科目を追加したようです。
この問題は熊本や旭川だけの問題ではありません。今後、日本全体として半導体スキルの育成は課題となってくると思われます。
3. ベトナムの半導体ビジネスはFPTがリードする
「ベトナム半導体 IT大手が先導 FPT、組み立て参入へ 内製化で付加価値」
(2024.9.26 日経新聞)
実はベトナムのIT大手、FPTは2022年から半導体ビジネスに参入しているようです。半導体を設計して、製造は他に委託する、いわゆるファブレスのビジネスです。
そのようなファブレスに参入したFPTがベトナム国内に生産拠点を構えて半導体チップを組み立てたり、検査したりす工程に参入するとのことです。
そのために、半導体人材の育成に力を入れます。2030年までに半導体人材を1万人確保するとのことです。FPT大学では2030年までに約15,000人が回路設計知識とスキルを学ぶ予定とのことです。
ベトナムには既に韓国ハナ、マイクロン、アムコー・テクノロジー、そして日本のルネサスエレクトロニクスやインテルなども工場を建設して稼働しています。
FPTで育成された10,000人の半導体人材は、FPT自社で設計するだけでなく、外部の半導体企業の仕事を請け負ったり、相手先に出向いて作業をするケースも考えているようです。
まさに半導体エンジニアの供給ですね。
4. 後工程、先端半導体分野の研究開発は企業連合で
「レゾナックHD、半導体実装で川崎に「練習場」14社で「後工程」検証 米国にも開設、テック呼ぶ」
(2024.9.13 日経新聞)
今、更なる高度化が期待される半導体の後工程に対して、日本のレゾナックHDは後工程向けの材料で以下のように世界シェア上位のようです。(レゾナックHDのウェブサイトより)
ダイアタッチフィルム 世界1位
パッケージ基板用銅張積層板材料 世界2位
封止材 世界2位
レゾナックHDは、後工程の材料や装置メーカーの国内業連合「JOINT2」を設立しました。そして、2019年から設立したパッケージソリューションセンター(川崎)の研究開発拠点でNEDOの助成事業をとって、2021年から3つのテーマで検証を始めています。
また、2025年から、シリコンバレーでも日米の半導体材料、装置メーカー10社で構成される「US-JOINT」を作り、メーカーだけでなく、テック大手などの顧客企業も巻き込んだ新製品の検証を行う予定です。
このような企業連合の動きは、実は他社も活発に行っており、TSMCも茨城県の研究開発拠点で日本の材料メーカーなどと開発連携しています。
韓国サムソン電子は横浜市に後工程の開発拠点を計画しています。
インテルはオムロンなど19社で、後工程での自動化技術を日本で共同開発しようとしています。インテルは地元アメリカテキサスでも、先端半導体のコンソーシアムを2021年から設立しています。
現在はさまざまな企業連合が乱立していますが、日本の材料、装置メーカーは世界でも存在感を持っているので、日本がこの後工程、先端半導体分野でリードできるように、国内企業で作られた企業連合に頑張って欲しいものです。
5. 半導体材料のフォトレジストに強い日本企業の活発な先行投資
「富士フイルム、先端半導体素材を国内生産 「1ナノ」向け新工場棟」(2024.9.30 日経新聞)
半導体の前工程で使用する重要な素材であるフォトレジストの世界供給上位は日本のメーカーで占められています。
JSR
東京応化工業
信越化学工業
富士フィルム
この一角である富士フィルムは2025年秋に静岡に次世代の半導体材料の開発、生産拠点を稼働する計画を立てています。フォトレジストの最先端品の開発と試作、半導体メーカーの研究開発向けに「1ナノ」台の半導体に対応した材料を供給するとのことです。
以上、最近の半導体ニュースの中から、大きそうなテーマをピックアップしました。
このように、最近、半導体関連と生成AI関連は連日のように新しいニュースが届いていますので、必見です。
それでは。
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