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わかりづらい半導体業界を10分で超わかりやすく解説する!!

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こんにちは。



先月、半導体業界において、ものすごく景気の良いニュースが飛び込んできました。
エヌビディア売上高2.2倍 5-7月純利益とも最高(日経新聞 8.29 夕刊)

ご存知のように、エヌビディアは半導体の企業でAI半導体と呼ばれる製品の大手企業です。今回はITの仕事をしていながら、今までわかりづらいと避けてきた「半導体業界」について整理した内容をわかりやすく解説していこうと思います。
特に経済ニュースでたびたび取り上げられる半導体がらみのテーマやエヌディビアに代表される半導体業界の主要プレイヤーそして最後に日本国内の動きについてもみていきたいと思います。

1. 半導体とは

まず、大勢の人が、実はなじみのない「半導体製品」について整理していきます。
数年前、コロナ禍の中で騒がれたのが半導体不足でしたよね。車や家電で必要な半導体のサプライチェーンが停滞して、消費者に製品を納入する時間がとてもかかった時期がありました。

その時、影響を受けた製品が以下のようなものです。
・スマホ
・デジカメ
・パソコン
・テレビ
・自動車
・エアコン
・洗濯機
・冷蔵庫 等


つまり、現代のほぼ全ての電化製品(車含む)には半導体が搭載されています。
ニュースなどでは一言で半導体として語られていますが、半導体って何でしょうか。

半導体とは、電気を通す導体と通さない絶縁体の中間の性質を持つ物質です。半導体の材料でよく使われているのはシリコン、ゲルマニウム、セレンなどだそうです。

それぞれの製品での目的に合わせて、この半導体はいくつかの種類、分類があるようです。
その代表例を示します。
・集積回路(IC)→コンピュータなど
・オプト半導体→LED、太陽光パネルなど
・センサー半導体→センサー
・ダイオード→ラジオ、太陽電池
・TVS→電子機器内で回路や素子を保護
・パワーモジュール→産業機械、自動車、鉄道など
・スイッチング素子→電子機器の電源供給


さて、ここでは集積回路(IC)に話をしぼりましょう。
集積回路は複数の素子をひとつの基盤にまとめたものを言います。製品にもよりますが、ひとつの基盤の上に、多いものだと数十億個以上のトランジスタが搭載されているようです。

2. CPUとGPU、インテルとエヌビディア

この集積回路の代表的な用途がパソコンやスマホのCPUとなります。
CPUとは中央処理装置(Central Computer Unit)のことで、コンピュータにおける中心的な処理装置となります。

ここで、最近出てきたもうひとつのワードがあります。それがGPUです。
GPUはその名の通り、画像演算装置(Grafics Processing Unit)のことです。GPUは、従来はパソコンやゲーム機の画像処理を得意としていました。画像処理は高速大容量の処理が必要なことから、GPUは基本的に並列処理を行います。最近では、AIの高速処理を可能とするため、GPUが多く使われ出したのです。

つまり、従来の計算処理やコンピュータ全体の管理はCPUが行い、画像処理やAI機能、そして高速処理が必要な部分にはGPUが使われているのです。
例えば、最新のスーパーコンピューターの上位100機のうち、GPUを採用する機種の割合は2023年には58%と増えています。

そして、CPUに代表される一般的な半導体市況はパソコン向けを中心に低迷が続いており、本格的な回復は来春以降と言われています。このことはCPU最大手の企業であるインテルの業績に現れています。インテルはつい最近、8月1日に2024年4-6月決算の最終損益が16億1000万ドルの赤字になることを公表しました。そして、同時に業績悪化を受けて、全従業員の15%にもなる1万5000人のリストラを発表したのです。

インテルの業績がこのように悪化した原因はCPU市況の低迷だけではありません。GPU市場に出遅れたこともその原因のひとつなのです。それでは、GPU市況についてお話しします。

GPUに代表されるAI半導体の2023年の市場規模は前年比30%増の218億ドル(3兆1600億円)と急拡大しました。さらには、今後のAI需要の活況から、2030年に1650億ドル(24兆円)と2022年の半導体全体規模の3割程度の規模に成長すると言われています。

そして、この急拡大しているGPUの最大手がエヌビディアなのです。特にデータセンター向けAI半導体では、なんと9割のシェアをとっています。エヌビディアの主力GPUであるH100、H200は、現在、需要に供給が追いつかず、納入は1年待ちだそうです。人気の高い新車なみですごいですね。

そして、さらに、今年、GPU製品の最新モデル、グレースホッパーを発表しました。こちらはGPUだけでなく、自社開発したCPUも搭載して、GPUとCPUの通信速度も従来の7倍に引き上げました。エヌビディアはグレースホッパーによって、さらにAI半導体の総取りを万全なものにする戦略をとっています。向かうところ敵なしですね。

もう少しエヌビディアのことを話します。
こうした業績好調と今後へのさらなる期待感から、エヌビディアの株価は上がり続け、2024年6月には一時マイクロソフトを抜いて、時価総額で世界一となりました。(現在は1位ではないようです)このように、半導体業界において、CPUとGPU、インテルとエヌビディアでは、まさに明暗が分かれた状況となっているのです。

インテルに関しては、先日新たなニュースが入ってきました。

インテル救済に官民一丸、半導体受託製造に4200億円補助(日経新聞9.17)

動き出すインテル救済、クアルコムが買収打診(日経新聞9.22)

インテル救済のために米国政府は約30億ドルの補助金を追加支給し、

アマゾンドットコムはAI向け半導体の生産をインテルに委託する、

そして同業のクアルコムがインテルに買収を打診している、という

驚きのニュースまで飛び込んできました。

3. 半導体の製造工程別の企業群

最近のニュースでは、よく半導体製造工程の記事がでてきます。これを理解していないと内容に追いついていけません。

例えば、先ほどのエヌディビアは設計工程のみ、エヌビディアからGPUの生産を委託されている台湾の半導体企業TSMC(台湾積体電路製造)は、生産の前工程のみを行う企業で、ファウンドリーと呼ばれています。

また、インテルは逆に設計から製造(前工程/後工程)まで全てを自前で行う企業で、IDM(Integrated Device Manufacturer)と呼ばれています。

整理すると以下のようになります。
設計工程(ファブレス)→ エヌビディア、クアルコム、ブロードコム
前工程(ファウンダリー)→ TSMC、サムスン電子
後工程(OSAT)→ ASE ,Amkor、インテル、TSMC、サムスン電子
設計から製造を一貫して行う(IDM) → インテル、サムスン電子

先ほどのAI半導体市場を独占するGPU、H100とH200はエヌビディアが設計して、製造はエヌビディアからTSMCにほぼ全て委託されています。

このように、半導体業界がわかりづらいのは、インテルのような垂直統合型だけでなく、工程ごとに分かれた水平分業型の企業が増えてきたことがその原因ですね。

そして、この製造工程において、最近のトレンドはAI半導体の製造に重要とされる後工程を狙っていこうという動きです。この後工程の技術で、最近、特に注目されているのは「先端パッケージング」という技術です。
「先端パッケージング」とは、異なる機能を持つ複数の半導体をひとつの入れ物(パッケージ)に収め、あたかもひとつの半導体のように連動させる技術です。
この「先端パッケージング」を行う企業の市場は、現在はTSMC、インテル、韓国サムスン電子と米中台3社の6社で8割のシェアとなっており、寡占状態です。

例えば、TSMCは2024年6月に台湾中部の新工場などで、この後工程での「先端パッケージング」の生産能力を増やすことを発表しました。対して、インテルも同月にポーランドに後工程「先端パッケージング」を行う工場を新設すると発表しています。

4. 半導体製品を扱う企業群

半導体の主要製品のひとつがコンピューターのメモリです。現在、メモリは電源がなくても記憶が保持できるNANDメモリと電源が切れると記憶が消えるDRAMメモリに大別されます。

経済産業省の資料「世界の半導体市場の主要プレイヤー」からNANDメモリを製造する企業は以下のようになります。
<NANDメモリー>
サムスン電子
キオクシア
SKハイニックス
インテル
ウェスタンデジタル
マイクロン・テクノロジ

また、DRAMメモリの主要プレイヤーは以下のようになります。
<DRAMメモリー>
サムスン電子
SKハイニックス
マイクロン・テクノロジ

「世界の半導体市場の主要プレイヤー」には、こうしたメモリープレイヤー以外に、その他関連企業として以下の企業も含まれています。
<パワー半導体>
インフィニオン・テクノロジーズ
オン・セミコンダクター
STマイクロエレクトロニクス
NXPセミコンダクターズ
三菱電機
東芝

<イメージセンサー>
ソニー
サムスン電子
インテル
オムニビジョン・テクノロジーズ

<アナログ半導体>
テキサス・インスツルメンツ
アナログ・デバイセズ
クアルコム
ルネサスエレクトロニクス

この領域まで来ると、ようやく日本の企業名が出てきましたね。
メモリー大手のキオクシア、パワー半導体の三菱電機と東芝、イメージセンサー大手のソニー、アナログ半導体のルネサスエレクトロニクスなどです。

5. 半導体関連企業の世界ランキング

ここまで、半導体業界の状況を理解した上で、2023年の半導体関連企業売上高の世界ランキングをみてみましょう。


1位 インテル(英)
2位 エヌビディア(米)
3位 サムスン電子(韓国)
4位 クアルコム(米)
5位 ブロードコム(米)
6位 SKハイニックス(韓国)
7位 AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(米)
8位 Apple(米)
9位 インフォニアン・テクノロジーズ(独)
10位 STマイクロエレクトロニクス(スイス)
11位 テキサス・インスツルメンツ(米)
12位 マイクロン・テクノロジー(米)
13位 MediaTek(台湾)
14位 NXPセミコンダクターズ(オランダ)
15位 アナログ・デバイセズ(米)
16位 ルネサスエレクトロニクス(日)
17位 ソニーセミコンダクターソリューションズ(日)
18位 マイクロチップ・テクノロジー(米)
19位 オン・セミコンダクター(米)
20位 キオクシア(日)
(ちなみに、こちらのランキングには製造を委託しているTSMCのようなファンドリー企業は含まれていないとのことです。)

こちらは2023年度の売上高ランキングですが、エヌビディアは2022年に8位だったところから、今回、初の2位、しかも1位のインテルへ20億ドル差まで迫ってきています。冒頭のように、今年の業績も過去最高を記録していますので、このままいくと2024年はトップになりそうですね。

トップ10はほぼ米国と韓国、ヨーロッパの企業にとられていますが、11位から20位を見てみると、ようやく日本の企業の名前がでてきます。
16位のルネサスエレクトロニクス、17位のソニーセミコンダクターソリューションズ、そして、現在、上場すると騒がれている東芝からスピンアウトしたキオクシアが20位につけています。

先日、半導体企業の今年の4月から6月までの四半期における

純利益のランキングが発表されていました。こちらも参考までに書いて

おきます。エヌビディアの純利益は前年比2.7倍の165億ドルだったそうです。すごいですね。

1位 エヌビディア(米)
2位 TSMC(台)
3位 サムスン電子(韓国)
4位 SKハイニックス(韓国)
5位 クアルコム(米)ブロードコム(米)
6位 テキサス・インスツルメンツ(米)
7位 STマイクロエレクトロニクス(スイス)
8位 マイクロン・テクノロジー(米)
9位 AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(米)
10位 インテル(英)

6. 半導体周辺業界の企業群

さて、半導体の話はこれで終わらないところが、業界を複雑にしている要因ですが、半導体を製造する企業に対して、それができるように支えている周辺業界があります。経済産業省の「世界の半導体市場の主要プレイヤー」から周辺企業を拾ってみます。

<設計支援(IP(回路設計図)ベンダー)>
アーム・ホールディングス(英)
シノプシス(日)
ケイデンス・デザイン・システムズ(米)

<設計支援(EDA(電子設計自動化支援ツール)ベンダー)>
シノプシス(日)
ケイデンス・デザイン・システムズ(米)
メンター・グラフィックス(米)

<製造装置>
アプライド・マテリアルズ(米)
ASML(オランダ)
ラムリサーチ(米)
東京エレクトロン(日)
SCREENホールディングス(日)
ディスコ(日)
キヤノン(日)
KOKUSAI ELECTRIC(日)

<素材>
信越化学工業(日)
SUMCO(日)
グローバルウェーハズ・ジャパン(日)
シルトロニック(独)
JSR(日)

このように、この半導体周辺業界は、意外と日本企業が非常に強い領域なのです。この中で、最近、特に話題になっているのが、日本企業が強い半導体素材業界です。日本勢の半導体材料の主要6品目(半導体素材)のシェアは5割に達しています。

特に、半導体製造の前工程における露光工程使うフォトレジストという素材については、信越化学とJSRで世界の4割のシェアをもっています。また、信越化学は、基盤であるシリコンウェハーでは世界1位で、約3割のシェアを持っており、さらに、フォロマスクブランクスという素材も世界2位で約2割のシェアをもつなど、半導体素材業界の中で世界的に大きな存在感を示しています。

そんな信越化学の記事が、先週の日経新聞に掲載されていました。
信越化学、半導体装置革新へ 次世代向け、製法提案から材料拡販へ

この記事に書かれているのは、信越化学工業はフォトレジストに代表されるように、半導体製造の前工程で必要な素材に強みを持っています。ところが、最近の半導体製造のトレンドとして、AI半導体などで必要な後工程で複数のチップをひとつのパッケージ基盤に集積する「チップレット」という新技術が注目されています。
信越化学工業は、この「チップレット」でチップ同士のデータのやりとりをパッケージ基板に微細な回路を書き込むことでできるようにする技術を2025年以降、市場に投入する予定とのことです。これは、半導体製造の後工程でゲームチェンジャーと呼ばれるくらい物凄いインパクトをもった技術のようです。

このように、信越化学工業は盤石な前工程のビジネスに加えて、後工程でも革新的な素材、装置を提供することで、半導体の「オールラウンダー」を目指しているとのことです。信越化学工業の株は買いでしょうかw

半導体素材と同様に、日本勢が強い分野が半導体装置です。半導体工場を立ち上げる際に欠かせないのが半導体製造装置です。中国市場に続いてインド市場、そしてAI半導体の需要により、日米欧でも半導体工場を次々と建設されていることから、半導体製造装置メーカーである日本の東京エレクトロン、SCREENホールディングス、ディスコ、KOKUSAI、キヤノンなどのメーカーの業績はすこぶる好調のようです。

7. 日本における半導体関連ニュース

以上、半導体業界の動きや、誰が主要プレイヤーなのか、そして、これから何に力を入れていくのかを整理してきました。最後に、日本国内でこの半導体業界というレッドオーシャンに官民がどのように動いているかを整理していきます。

<国内半導体工場の建設>

2024年2月よりTSMCの子会社が熊本に半導体工場を開所
現在、北海道千歳市にラピダス(日)の次世代半導体工場が建設中

まず、TSMCのような既存のビッグファウンダリー工場を誘致しようという動きと合わせて、国産の次世代半導体工場を建設する動きもあります。このように、内外の企業の半導体工場を地方に建設するメリットは地方の電力会社の安定需要を見込める効果もあるようです。

<半導体素材メーカーの工場を国内に集積>

現在、日本企業が強い半導体素材の新工場を国内に作る動きが進んでいます。先ほどの信越化学工業が群馬県に新工場をつくれば、三井化学も山口県に増産体制を整える、また、EV向けなどに使うパワー半導体の性能向上を担う次世代素材についても、国内の企業で活発に動きがあります。
パワー半導体の次世代素材は、従来のシリコンに代わり、炭素とシリコンを結合した炭化ケイ素(SIC)を使った基盤の需要が強くなっているようです。

国内半導体素材メーカーも、この流れを受けて、SIC基盤を量産する動きが活発化しています。
レゾナック・ホールディングス(旧昭和電工)は山形県の工場などに次世代のSIC基盤の生産ラインを新設して、2027年から量産を始めるとのことです。
オキサイドも2024年3月に山梨県に基板の量産ラインを新設しました。
ロームもパワー半導体の基板の量産を宮崎県の工場で量産します。ロームもSIC基盤を使ったパワー半導体では世界シェア8%程度もっているそうです。

<国のスパコン「富岳」の後継機の開発にGPU搭載を検討>

理化学研究所は2025年から現在のスパコン「富岳」の後継機の開発検討を始める予定だそうです。このポスト富岳では、従来のシミュレーションとAIの両方の計算で世界最高性能を目指すそうです。そのため、理化学研究所が共同開発する企業は、従来の富士通などの他に米国の半導体メーカーであるAMDとエヌビディアに参加を求める可能性があるようです。後継機はGPUを搭載することを念頭に置いたものと思われます。

以上、わかりづらい半導体業界について、業界図とその流れを整理してみました。

半導体業界では、こうした複雑な相関図を頭に入れながら、ウォッチしていく必要がありそうですね。

それでは。

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