そもそも価値創造に必要なものは?
最近価値創造という言葉をよく耳にします。価値とはなんなのでしょうか。
価値とは「その人にとって意味のあるコト」です。あっさりとした答えになってしまいました。
「その人にとって」ということがまずポイントになります。人それぞれに物事の見方が異なります。多様性(diversity)が重要とされてきたのも、「その人にとって」ということが認められてきたからです。従来はマスメディアによって一辺倒の価値を信じ込まされる時代でした。その手法が「ブランディング」だったのです。何もないものに価値を埋め込ませて、モノを買わせていた大量生産・大量消費の時代です。多様性(diversity)が重要視されてきたのは、Consumer Generated Media(CGM)の台頭とそれに続くSNS(Social Networking Service)の台頭です。CGMによって、顧客が意見を言う事ができるようになったのです。そしてそれがネットワーク化したものがSNSとなります。SNSによって誰もが注目されるポテンシャルを持つようになりました。自分の友達は自分よりも良く知っているというフリースケールネットワークの世界です。これは、誰もがハブになる可能性があることを意味しています。ハブとは情報を広げる人のことです。このような背景から、「その人にとって」という多様性(diversity)が重要となったのです。
では、「意味のあるコト」とはなんなのでしょうか。本当に意味のない事には人間は興味を持ちません。結構人間は合理的にできています。意味付けというのは非常に重要なのです。
ここで「意味」をもう少し深く見てみましょう。「意味」というのは「コンテント」と「コンテクスト」が定まったときに、一意に定まります。「コンテント」とは、、明示的な内容のことです。商品、サービスならば、商品、サービス自体を指します。「コンテクスト」とは、分野、環境、観点、状況、立場など暗示的な内容のことを指します。商品、サービスならば、そのお店の雰囲気、店員さんの笑顔などがこれにあたるでしょう。
価値創造のためには、「コンテクストクリエーション」が重要であると考えています。つまりその商品やサービスそのものよりも、それを取り巻く暗黙的な内容を創り込むことです。
これまでの社会では、豊かさというのはモノを手に入れることでした。豊かであるというコンテクストが固定されていました。そこでどれだけ高級なコンテントを手に入れるかで意味付けされ、価値創造されていました。これは、大量生産・大量消費社会を回す為の暗示に過ぎなかったのです。
現在の社会では、コモディティ化によりコンテントに差が無くなってきました。では、どこで価値創造をしたらよいのでしょうか。答えは簡単です、コンテクストクリエーションするしかないのです。「モノづくり」から「コトづくり」へとよく言われますが、その議論の中で、日本のモノはすごいんだという的外れな意見があります。「モノづくり」を活かすための「コトづくり」、つまりはコンテクストクリエーションを重視した価値創造をするべきなのです。
では、コンテクストクリエーションとはどういうものなのでしょうか。次の会話から読み取って下さい。
(あるデートスポットでの一幕)
A:「ねぇねぇ、これ可愛い、買って!」
B:「それ近くの店でも売っているじゃないか!」
A:「ここでじゃないとイヤ!」
分かりましたか?AさんはこのデートスポットでBさんと一緒にそのモノを手に入れることが重要なのです。本当にそのモノが欲しかったら、自分で買うでしょう。コンテントにBさんとの思い出というコンテクストがくっついているのです。Bさんはコンテクストの重要性を理解してあげないといけません。
そのコンテントは、コンテクストによってAさんとBさんにとって非常に重要な宝物、価値になるのです。