オルタナティブ・ブログ > コンテクストクリエーションによるプラットフォームビジネス >

コンテクスト(文脈)を創造が新しいビジネスの価値創造につながります。色んな角度から「コンテクストクリエーション」をみてみましょう

強いAIにはなかなか近づけない

»

強いAIと弱いAIという言葉があります。ジョンサールという哲学者の1980年の論文"Minds, brains, and programs"という論文で登場します。その論文での定義は以下のようになっています。

  • 弱いAI(Weak AI):心の研究において、コンピュータをあくまでツールとして使う(とする立場)。
  • 強いAI(Strong AI):正しくコンピュータにプログラムすれば、それ自体が心になる(とする立場)。

もう少しわかりやすく噛み砕くと、強いAIはコンピュータを発展させれば心ができるはずと言い切る立場であり、弱いAIは心の研究の一部分、そう一部分を模倣しているに過ぎないよと考える立場ということです。実際、サールの論文では、「"weak" or "cautious" AI 」("弱い"もしくは"慎重な"AI)と表現しています。

ここから読み取れるのは、もともと強いAI、弱いAIというのは、AIを形容するよりは、研究者の立場を表現する用語だったということになります。しかし、私もそうですが、「空を飛びたいと思った時に鳥を作るのが強いAI、空を飛びたいと思った時に飛行機を作るのが弱いAI」という感じで考えてくださいと表現をしてしまいます。

強いAIと弱いAIとあるくらいだから、研究者でも二分しているのではないかと思われるかもしれませんが、実は、ほとんどの研究が弱いAIです。結果的に人間と同じ処理を行うようなアルゴリズムや機構の開発しているような状態です。今話題のディープラーニング、ニューラルネットワークもニューラル(神経の)という形容詞を含んでいるので、なんとも人間に近いイメージはありますが、結局は弱いAIです。

強いAIってどんな研究なのか、、、。

例えば、「Hacking the human brain: Lab-made synapses for artificial intelligence」という記事を見つけました。脳をハックする?シナプスを模倣することに成功したらしいです。シナプスを模倣できたら、脳を人工的に作る、それこそ人工知能だと思ってしまいますが、あくまでもどこまで行っても模倣です。この人工シナプスによって、脳みたいなものはできるかもしれませんが、そこに心が宿るかは別問題です。ただ、それこそディープラーニングのようなアルゴリズムの研究が主だと思いきや、こういう脳というハードウエアにチャレンジしている研究も進みつつあるということです。

どこまで行っても心や意識というものに到達するのに大きな壁がある気がします。人間というハードウエア、ソフトウエア、両面から研究が進んでいきますが、それだけではないです。ハードウエア、ソフトウエアで構成される人間というシステムが重要であると思います。非常に簡単なようで難しいです。我々がそのシステムそのものであるが為にそれを実現することが難しい面もあります。

強いAIにはなかなか辿り着けず、弱いAIで人間の模倣のパーツを研究しているのが、今の研究者です。

それは責めることではなく、鳥を作るより飛行機を作った方が、たくさんの人を乗せられるように、弱いAIの研究によって我々の生活を豊かにするものをたくさん作りだしているのは事実です。

Comment(0)