ポストWeb2.0『ソーシャルストリーム』は、Webという大海の海流である
僕はブログがビジネスを変えていくとの予測から2005年2月に『ビジネスブログブック』(毎日コミュニケーションズ)をリリースし、さらにWeb2.0のムーブメントが日本にも届くとの考えから2006年2月に『Web2.0Book』(インプレスジャパン)をリリースした。
いま、僕が書きたいテーマは”ストリーム”だ。
■ソーシャルストリームこそポストWeb2.0
ストリームとは、非常に細小な粒度の情報群をリアルタイムで世界中に伝達しまくる仕組みと、その概念のことだ。
このストリームによって、Webは静的なサイトから動的な流れであることが、誰の目にも明らかになった。
みかけにはBlogにみられるように、時系列順に記事を掲載していく形式であるが、Twitterのようなマイクロメッセージングサービスの爆発的な普及と、iPhoneに代表されるWeb閲覧中心のスマートフォンの登場によって世界中に流行しつつある。
Blog全盛の時代には、更新速度の遅さがストリームの流れをゆっくりとしたものにして、それが滞っているのか流れているのかを分からなくさせていた。それがTwitter + iPhone時代には、恐ろしく速い流れであることが明確になり、かつ、驚くほど多くの支流があることも分かってきたのである。
詳しくは僕の別エントリー「Twitterを知らないオトナ達へーWebのストリーム化の兆候を見逃すな!」を参照してもらいたいが、Twitterがありとあらゆる機能をAPI化して公開したことで、Twitterでのつぶやきが、Facebookでもmixiででも、FriendFeedでも、とにかくありとあらゆるWebにも流れ込み、さらに数多くのサードベンダーがTwitterクライアントをiPhoneアプリとしてリリースしたことで、時と場所を選ばずにリアルからWebへの情報流入が活発化したことが非常に大きい。
そして、Twitterに他のメディアがどんどんすり寄ったため(YouTbueもFlickrも)、Twitterはソーシャルメディアのハブになりつつある。このソーシャルメディアのストリーム、いわばソーシャルストリームこそが最近の僕の最大の関心時であり、ポストWeb2.0として語るべきは、このソーシャルストリームだと考えている。
■ サイトからフィード、そしてストリームへ
海流や気流が地球全体の気候システムに(ということは、あらゆる生態系に)大きな影響を与えていることは誰もが知っていることだと思う。緯度や経度だけではなく、どのような海流が側にあるかによって、気候が違うことは、いまでは常識である。
海にも波だけではなくて、流れそのものが(しかもさまざまな海域や深度で)存在していることと同じように、Webにもこの流れが存在している。それがストリームである。そしてストリームも海流と同じようにリアルな社会に対して、大きな影響を及ぼすものになっている。
そんなことは分かってる、という方は多いだろう。しかし、ちょっと待ってもらいたい。
これまでのWebは HTMLファイルをページとして持つ、ファイルの固まり=Webサイト、という形でしかなかった。リンク構造がWebサイト内だけではなく、Webサイト同士、あるいは異なるサイトの中のページ同士のリンクが進み(それがパーマリンクやトラックバックなどの登場によってさらに進み)、GoogleがページランクとしてWebのネットワーク構造に着目してもなお、WebはWebサイトというコンセプトでしか語られてこなかった。
その静的なファイル構造=ページとサイト、というコンセプトを変え始めたのは、RSS/Atomを用いて情報をサイト、あるいはページから抜き出して、ダイレクトにコンテンツだけを流動化する’フィード’という考え方である。
僕はこのフィードが次のWebの姿であると信じて活動してきたが、上述のTwitterとiPhoneの台頭で、フィードをさらに飲み込むストリームという概念が急速に拡大しつつあることに、去年の秋頃から気がついていた。
ストリームは、RSS/Atomや(主にTwitter互換の)外部APIを共通フォーマットとしており、さらにモバイル上で加速している。スマートフォンの普及に弾みがついていることと、ストリームの顕在化は密接に関係があるのである。
『グランズウェル』(翔泳社)という、ソーシャルメディアについて解説した素晴らしい本があるが、Webそのものの構造変化がストリームにあることについては見落としていると思う。僕は、このソーシャルストリームと、それが引き起こしていくリアル社会の”気候変化”にこそ注目するべきであると考えている。