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iTMS(iTunes Music Store)、本日サービス開始?

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iTMSが日本国内で有料音楽配信サービスを開始された。6日には渋谷公園通り店をオープンするなど、Appleは非常に元気がいい。

iTMSのビジネスモデルは、他の音楽配信サービスと比べると、シンプルではあるが凝っている。まず、音楽配信そのものは(黒字が出ているらしいが)プロフィットセンター、つまり利益の源泉としてのビジネスとは考えていないらしい。赤字にならなければラッキーで、多くの集客が出来ればいいという考え方だ。ではどこで儲けるかというと、言わずと知れたiPodである。iTMSでダウンロードした曲はもちろんMac/PC上で再生したり、CDに灼くことも可能であるが、基本的にはiPodに保存して外で聞く。iTMSの音楽圧縮フォーマットは基本的にiPodでしか再生できないので、iTMSのユーザーは自然とiPodを使う、というわけだ。
もともとiPodがブレイクしたのはiTMSのサービスが普及したためでもあるが、今となってはiTMSのほうがiPodの大ヒットに守られて、他の音楽配信サービスを圧倒するという逆の構図が成り立っている。

Itms

AppleがiPodをリリースしたときにはRioをはじめとするMP3プレイヤーは既にあったし、iTMSがサービス開始したときにはNapsterをはじめとする(無料)音楽配信サービスが世を席巻していた。
Appleは、既存のMP3プレイヤーに対しては
 - HDD搭載による大容量
 - 持ち運ぶものとして最高にクールな外観
- これ以上無いシンプルな操作方法
を持ち込んで対抗した。
さらに既存の音楽配信サービスへは、
 - 有償サービスによる、音楽提供者への安心
 - 1曲 99セントという、無料ではないが高くもない、という絶妙な価格
 - iPodとの組み合わせ及びMacへの無料ソフトのバンドル
という方法を使って対抗し、そして勝ったのである。

結果として、この二つの革新的なアイデアの組み合わせがキラーとなり、Appleはこの業界での勝者となり、さらにWindowsユーザーを取り込むことによってAppleというブランドの拡張にも成功した。この成功は、やがてAppleを家電メーカーへと変貌させる道を拓いたと思う。

iPodの場合、当時の競合他社の製品がCD一枚分くらいの保存量でしかなかったことに目を付け、小型HDDの採用により、「1,000曲」を持ち運べる、プライベートジュークボックス的な提案が、音楽を聞くという行為におけるパラダイムシフトを起こした。ケータイが電話を持ち運べるようにしたことで、コミュニケーションのあり方が劇的に変わったことと同じである。
そして、iTMSは99セントという絶妙なプライシングが決め手になった。初年度から黒字に、しかもほんの雀の涙ほどの利益を出した、という事実が、彼らの価格戦略が如何に巧みであったかが分かる、というものだ。

日本において、iTMSがどのような発展をするかは分からない。日本では近所に幾らでもTSUTAYAがある。価格面では不利と思われるiTMSがどのようなブレイクスルーを果たすか、非常に楽しみである。

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