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教えるコトは、学ぶコト ~自分を磨いてくれる人の見つけ方~

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昨日、IT業界11年目の方から「一緒に仕事をしている2年目社員の仕事ぶりが素晴らしいので、理由を聴いたら新入社員研修のおかげと言っていました。だから、椎野さんの研修を受けに来ました」というコメントをもらいました。

研修の効果は、『人の成長』という可視化が難しい(研修との相関関係の証明が難しい)ので、このように第3者の立場の方から客観的評価を伝えてもらえるのは、とてもありがたいことです。

昨日は、このような嬉しい出来事があった一方で、外出時に残念な出来事に遭遇しました。それは、40代~50代と思われる男性2人が、それぞれの企業に入ってきた新入社員を評して「最近の新入社員は・・・」と否定するような会話が繰り広げている光景でした。

新入社員研修のシーズンが終わり、新入社員が配属されてしばらく経つと、このように「今ドキの若い人は・・・」「最近の新入社員は・・・」という否定的な言葉や会話を耳にすることがあります。

このような言葉を訊くと、私は、とても残念な気持ちになります。それは、冒頭や啐啄同時(そったくどうじ)~運と縁と感は磨くもの~に書いたように、自分を磨いてくれる人の出会いによって大きく成長できるのは、昔も今も変わらないからです。また、そのような否定的な考え方を持つ前に、ビジネスパーソンの先輩として「お互いに磨く」という観点で考えてほしいと思うからです。

そこで、今日は、社会人として自分を磨いてくれた「私にとって世界一の上司」Aさんの話を書きたいと思います。

『好奇心』と『冒険心』と『持続性』の育て方

社会人1年目の最初のマネージャだったAさんの育成方針は、「自分がやりたいと思ったら、手をあげなさい。1年目だろうと、2年目だろうと、年次に関係なく、やりたいという思いに対して、機会を与えるし、最大限のサポートをする。そして、俺が任せたからには、俺が責任をとるから、安心してやりなさい」というものでした。

個々のエピソードの詳細については割愛しますが、この言葉どおり、年次に関係なく、常に新しいことに安心してチャレンジできる環境を用意してくれました。そして、そのような環境が用意される中で、何よりも心強かったのは、誰かがミスをした時のAさんの対応でした。例えば、私がミスをして他部門から電話で叱られていると、私の受話器を取り「もしもし、Aです。私が指示をしていることなので、何か言いたいことがあれば私に連絡してください。」と、私が委縮することのないよう、感情的な怒りから守ってくれていました。そのおかげで、「新しいことは、何でもやってみよう」という『好奇心』と、「たとえ、結果が不確実でも、リスクを取って行動してみよう」という『冒険心』を失わずに、さまざまな経験を積むことができました。またすぐに結果出ない状況であったとしても、「自らがやりたいと手をあげたことなので、結果が出るまでやり続けよう」と努力を続けることができました。

『楽観性』と『柔軟性』の育て方

Aさんの元で働くようになって半年ほど経過したある日、Aさんから『オリジナル資料を見せてほしい』と言われたことがありました。

「他の人達のアンケートには、「為になった」「分かりやすかった」という言葉が多いのだけれど、椎野さんのアンケートには、「面白かった」「楽しかった」って書かれているんだよね」と言いながら、一通り資料に目を通したAさんが訊いたのは、「どうして、こういう資料を作ろうと思ったの?」ということでした。

(この時点では注意されていると思っていたので)緊張しながら、Aさんの質問に答えました。
「教えてくださる先輩の皆さんに申し訳ないくらい、あまりにも分からなくて。分からなすぎで自分が理解できるようになるまでに、試行錯誤した結果です」と。

「なるほどねー。椎野さんは、俺が叱っていると思った?そうじゃないんだよ。楽しいとか、面白いって思ってもらえることは、ものすごく難しいことなんだよ。ということは、意図的に面白くしようとしている訳ではないという見解であっている?」(はい、あっています)

「意図してやっている訳じゃないから、なぜ、面白かったとか、楽しかったって言われるのか、自分では分からないかもしれないけれど、為になった、役に立ったより、面白い、楽しいって思ってもらえることの方が難しいんだよ。」

「長く社会人をやっていると、純粋に楽しいとか、面白いという気持ちを忘れてしまう人も多くなるんだよ。」

「椎野さんに伝えたかったのは、いつまでも、楽しかった、面白かったと言われる人を目指しなさいということ。それは、自分自身が楽しくなければ、できないことだからね。だから、面白い、楽しいって思ってもらえることを忘れてはいけないし、今のやり方を大事にしてほしい。」

今日は、新しい説明の仕方を学ばせてもらったよ。ありがとう

このエピソードから、私は「自分が楽しいと思えること」と「柔軟にものごとに向き合うこと」の大事さを学びました。そして、私の社会人としての原点をつくってくださったのは、紛れもなくAさんであり、それは何年経っても変わらないと思っています。

教えるコトは、学ぶコト

私は、自分を磨いてくれる人は「言われたことを、言われたとおりにやりなさい」という人ではないと考えています。Aさんをはじめ、私が今まで出会った「自分を磨いてくれる人」の共通点は、「教えるコトは、学ぶコト」ととらえ、所属や役職などの立場に関係なく、人対人としてフラットな関係で、互いの考えや意見を知ろうとするというです。

これからも、「教えるコトは、学ぶコト」であるという原点を忘れずに、異なる世代の視点や感性を教えてくれる新入社員の方々からメッセージを励みに、「自分を磨いてくれる人」と出会えるよう審美眼を磨き、自分をアップデートし続けていきたいです。

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いつか私が理想としている「上司」や「社会人」になれた時、椎野さんから教わったことを自分の言葉で説明していきたいと思います。本当にありがとうございました。
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きっとこの研修が教えてくれた、この"考える楽しさ"が今後僕らのプロフェッショナルとしての人生を彩ってくれるだろうと今日の発表会を通じて強く感じた。
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椎野さんがいつもお話されていた「最高の上司」と、椎野さんは一致していると感じていた。担当することに関して全て責任をもち、新人を導いていく姿は非常にかっこいいと思う。
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椎野さんのおかげで私は前を向いて過ごしていくことができました。私にとっても「最高の上司」であったことは変わりありません。ありがとうございました。
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