啐啄同時(そったくどうじ)~運と縁と感は磨くもの~
啐啄同時(そったくどうじ)
「啐啄同時(そったくどうじ)と言うか、椎野さんの声かけは、いつも絶妙なタイミングなんですよね。。」
この言葉は、現在、グローバル企業でキャリアアップを続けている彼(昔のチームメンバー)が、何度目かの大きな決断の際に伝えてくれた言葉です。本当に不思議なことなのですが、数年ぶりに連絡をとると、なぜかいつも、彼のキャリアにおいて大きな決断を必要としている時になります。
◆啐啄(スーパー大辞林 3.0版より引用)
⓪ 雛がかえろうとするとき、雛が内からつつくのを「啐」母鳥が外からつつくのを「啄」
① 禅において、師家と修行者との呼吸がぴったりと合うこと。
② 得難い良い時機
◆啐啄同時(スーパー大辞林 3.0版より引用)
禅で、機が熟して悟りを開こうとしてる弟子に師がすかさず教示を与えて悟りの境地に導くこと。
啐啄同時とは、雛鳥を弟子にたとえ、母鳥を師匠にたとえ、雛鳥が「もうすぐ生まれるよ」と内側から殻をつつき、その卵の変化に気づいた母鳥が外側から殻をつつくように、機が熟して悟りをひらこうとしている弟子に、師が教示を与えて悟りの境地に導くという意味です。
大事なのは、殻を破る人と、それを手助けする人、両者の「啐」と「啄」が、少しもずれることなく、タイミングがピッタリと合うことです。大事なのは、以下の2つがピッタリと揃うことであり、時機が早すぎると不安や迷いが生じ、時機を逃すとステップアップする時期が遠ざかってしまいます。
- 殻を破る人の準備が整っている
- 手助けする人が変化に気づく
計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)
「啐啄同時」の言葉を伝えてくれた彼と私の関わりもそうですが、私自身のキャリアを振り返ってみても、とても良いタイミングで手助けしてくれる方に出会ってきたように思います。
社会人としてある程度の年月を経てみると、個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるというキャリア理論「計画的偶発性理論/計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」を実感する方も多いのではないでしょうか?
◆「計画的偶発性理論/計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らによって考案されたキャリア理論。個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるので、その偶然を計画的に設計し、自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方。クランボルツ教授は、以下のような行動指針を持つことが大事だとしています。
- 好奇心:たえず新しい学習の機会を模索し続けること
- 持続性: 失敗に屈せず、努力し続けること
- 楽観性: 新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
- 柔軟性: こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
- 冒険心: 結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと
啐啄同時が意味するように、準備が整った状況で、手助けする人に出会えるとスムーズにステップアップできると思うのですが、変化が速い時代になったからなのか、最短距離で効率よく、猛スピードで目的地に達成する方法(How to)を探す方々が多いように感じています。
効率よく仕事をすることも大事ですが、猛スピードで目的地まで走ってしまうと、途中で出会う予期せぬチャンスを見逃してしまうこともあります。
猛スピードで目的地に達成する方法を考えるよりも、「計画された偶発性理論」の5つの行動指針に基づいて行動する方が、キャリアアップの機会を得たり、手助けしてくれる人に出会えるような気がしています。
まさに、運と縁と感は磨くものなのではないでしょうか?