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つくしのたまごとじ。

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愛媛県には、土筆を食べる習慣があります。
県内のスーパーには、パック詰めしたものが売られています。
筆者は、スーパーでは買わず、無農薬・無肥料・無除草剤の土筆を育てて(?)います。

ぜんまいや蕨のようにすこしほろ苦く、食感は柔らかいエノキタケのよう。
いちばん一般的な食べ方は、卵とじです。
おひたしにする人もいます。マルトモ花かつおを塗すといいですね。試したことはありませんが、天ぷらにしてもよさそうです。三つ葉やしらすとかき揚げにするといいかもしれません。

土筆は成長が早く、5cmほどの丈から、短期間で、20~30cmになります。
美味しく食べるには、摘む時期が重要です。
丈が短い間は、ハカマとハカマの間隔が狭すぎて、食べる部分がありません。10cmくらいに伸びても、胞子を飛ばす前は、まだ、硬いです。
胞子を飛ばす直前が食べごろだとおもいます。力を加えなくても、スッと収穫できます。
ただし、彼らも子孫を遺したいでしょうから、すこし揺らして、胞子を飛ばしてから、収穫します。
それ以上に成長すると、プラスチックのストローのような食感になってしまいます。伸びきってしまうと、スギナのような緑に変わってしまい、食用には適さなくなります。

3月10日に収穫した土筆です。これにたまご1~2個で、2~3人前(2~3皿分)になります。

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ハカマを手でとるのは非効率的です。
キッチンバサミではなく、文具のサイズのハサミを用意してください。
ハカマの下を切って、ハカマを下に引っ張ると、簡単に取れます。
1本の土筆には、5個ほどのハカマがついています。つまり、ハカマの除去に要する時間は、摘むのに要した時間の5倍ほどです。頭が黒くなっていたり、雨や露で傷んでいたら、カットします。

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ハカマが取れたら、大きな鍋に入れて、多めに水を注ぎ、ザッとかき混ぜます。何度か水を変えながら、汚れを洗い流します。このとき、もし誤って混入したハカマがあったら、浮いてくるので、取り除きます。

湯を沸かし、土筆の鍋に注ぎ、火にかけて、1~2分、下茹でします。
湯を捨てて、水を注いで冷まし、軽くしぼります。

小さい鍋かフライパンに、ごま油を熱して、土筆を入れて、サッと炒めます。
ここに、てんさい糖を振りかけて混ぜ、濃い口しょうゆを入れてさらに混ぜます。
好みで、みりんや酒を使ってもよいでしょう。料理の苦手な人は、めんつゆで代用するとよいです。
卵を1~2個割り入れて、菜箸で手早く混ぜながら絡めます。
すこし冷ましたほうが、味が馴染んで美味しくなります。

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写真のたまごとじには、筍が入っています。
前日に筍の煮物を作ったので、取り分けておいたのです。
この煮物は、干ししいたけを戻し、昆布と煮て、油揚げも入れたものです。
土筆の調味には、てんさい糖としょうゆではなく、その煮汁を使いました。干ししいたけと昆布の旨味で、味に深みがあり、より美味しくなりました。筍を、土筆に合わせて細切りすれば、さらに美味しくなります。

細く切った油揚げを入れてもよいですし、鶏ひき肉でそぼろ炒めにするのもよいでしょう。

白いごはんに、若竹汁、菜の花のからし和えを添えれば、贅沢な春の献立になります。
食後は、桜茶を楽しみたいですね。

安全な土筆が手に入ったら、試してみてください。

筆者が小学生の頃は、住宅地の中にも田畑があり、たくさん生えていました。友だちのお父さんが土筆を大好きだというので、皆で摘むのを手伝っていました。酒の肴に好適なのです。
戦前からある黒土であれば、除草剤を使わずに放置して何年か経つと、土筆が生えてくるはずです。カラスノエンドウやホトケノザやハコベを引き連れて。
それが今では、田畑はコンクリートの駐車場に変わり、黒土は造成土に変わってしまいました。

さらに、さいきんでは香害という厄介な現象があります。
近隣に香害原因製品のユーザー宅があると、それらに含まれる成分が流れてきて付着するため、食用には適さなくなります。筆者の居住する地域にも、ユーザー世帯がじわりと増えつつありますが、幸運なことに、距離や風向きの関係で、影響を避けることがきています。

土の中の、種や球根や虫や微生物の存在を、尊重しなければなりません。降り注ぐ雨水に、感謝しなければなりません。
われわれは、長い歳月をかけて構築された自然のバランスを、この半世紀で、破壊してしまいました。
どれほど大きなものを、失ってしまったのか。それは、この国に生きるものたちの、共有の、かけがえのない、財産だったはずなのに。

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