マイクロプラスチックが動脈硬化からの死亡リスクを増大させる!ライフスタイルの見直し、待ったなし。 ~日用品公害・香害(n)~
人体からマイクロプラスチック。その生体リスクがあきらかに。
「人体からプラスチック粒子が・・・懸念される健康リスク」
NHK総合、2月3日(月)に放送された「クローズアップ現代」のタイトルだ。
マイクロプラスチックとは、ご存知のとおり、プラスチック素材が微細化した粒子。ただし、砕ける前から劣化は始まっているという。これを取り込むことで、生体にリスクが及ぶ。すでに人体の各部位から見つかっている。海外の研究によれば、動脈硬化からの疾患の患者の死亡リスクが高まったという。
食品容器や什器備品にも使われていることから、誰も避けて通ることのできない問題だ。
「NHKプラス」で見逃し配信を視聴できる。配信期限は、2月10日(月) 19時57分。できるだけご試聴を。
環境中を巡る、マイクロプラスチック。空にも、海にも、どこにでも。
同番組は、富士山の山頂の研究所から始まる。大気中マイクロプラスチック研究の第一人者、早稲田大学・大河内博教授が、雲水中にマイクロプラスチックを確認、特徴や起源を解明したのだ。それは海洋マイクロプラスチックが輸送された成れの果てである可能性を示唆している。
この研究は、2024年10月20日に放送された「サイエンスゼロ」「雲をとらえろ!最新科学に挑む富士山頂の"研究所"」でも放送されている。
雨水が汚染されれば、河川に、森林に、田畑に、影響がおよぶ。われわれの暮らしに、健康に、甚大なリスクをもたらす。雲の中のプラスチック、では終わらない。
さらに、東京農工大学 高田秀重教授がスタジオ出演。水環境中のマイクロプラスチック研究の第一人者だ。
すでに水棲生物から、マイクロプラスチックが検出されている。
今回の番組では、イタリアの研究論文が柱。冒頭に書いたように、動脈硬化の患者の死亡率が数倍、高まったという。
高田教授は、視聴者に伝わるよう補足解説をされている。わが国でも同様の研究が進行中だという。
最初から大きいプラスチックのリスク、最初から小さいプラスチックは?
「クローズアップ現代」で取り上げられたのは、砕けて小さくなったマイクロプラスチックだ。容器や袋に由来するものもあることから、世界中の誰も避けようがなく、すべての人に関係する問題である。
一方、最初から小さいマイクロプラスチックについては取り上げられていない。たとえば、日用品に含まれる、樹脂製マイクロカプセルだ。これは、まだ、全世界の人に関係する問題ではない。一部の国の問題だ。
だからといって、軽微な問題ではない。われわれは、環境中に放出され、大気中に漂うそれを吸気し、食品に付着したそれを食べている可能性が高い、これにより、体調を崩す人が出始めている。生体リスクは、化学物質の有害性だけで決まるわけではない。「リスク=有害性 × 暴露量(摂取量)」だ(環境省による)。ひょっとしたら有症状者は、総曝露量、あるいは継続曝露の多い環境に住む人、勤務する人かもしれない。調査が待たれる。
香り付き柔軟剤や抗菌系合成洗剤には、メラミン樹脂などのプラスチック製マイクロカプセルが含まれていると言われる。もっとも、原因として、それらの製品のリスクが囁かれ始めれば、メーカーは他の素材への切り替えを図る。最新の製品にも含まれていのかどうかは不明だ。しかし、すでに流出した物質があるのではないか。ユーザー・ストックもある。それらが一掃されない限り、環境中には留まり続ける。
大河内教授は、そうした「香料を芯材とするマイクロカプセル」の問題にも取り組み、実際に洗濯ものからの検出を試みている。任意の高残香性柔軟剤を使い、規定量で洗濯した場合、約42万個の香料マイクロカプセルが洗濯物に付着することがわかった。これも、NHKで放送されている。「香りで体調不良の相談増加なぜ?マイクロカプセルが...」
洗濯排水中の子マイクロカプセルとおぼしき物体も捉えている。拡大画像の小さな物質のサイズは、0.45μmだ(nm。ナノメートル、1μm=1000nm)。450nm、つまり、砕けた結果、ナノサイズの物質が、環境中に流出していることになる。
「洗濯に使用した柔軟剤に含まれる香料マイクロカプセルのうち約75%は洗濯排水として流れ」るというのだから、すでに、取り返しがつかないほど、膨大なマイクロカプセルが流出していることになる。追跡・捕集する技術が確立されないまま、拡販が潜行している。
目に見えない、微細な「従来はなかった」化学物質。われわれは、普段の暮らしの中で、気付くことなく、体内に取り込んでいる。
身のまわりを眺めてみよう。プラスチックの使い方を見直そう。
「クローズアップ現代」の中で紹介されていたグラフでは、プラスチックが増加したのは80年代以降だ。
筆者の経験からいえば、70代までは、身のまわりのプラスチック製品は、限られていた。
家庭内では、冷蔵庫とテレビと固定電話。バイクや自転車のパーツ。車はまだ少なかった。金属製の石油ストーブや扇風機で、エアコンはなかった。食品ストッカーは木製の「みずや」。衣装ケースはなく、木製の箪笥と桐の和服入れ。
藤の籠を提げて買い物に行けば、野菜も果物も魚も卵も木の箱に盛られており、肉は対面の量り売りで、緑色の紙に包んでくれた。
それが80年代から、がらりと変わった。外食産業が増え、24時間営業が当たり前になり、大型店が出店して個人商店は次々と廃業。
そして、男女雇用機会均等法。1985年制定、翌年施行。女性がペイドワークとアンペイドワークを兼業することになれば、家事を効率化するしかない。便利な家電、便利な備品、自家用車。プラスチックが増えた。
それでもまだ、90年代までは、電化製品の筐体には、金属が使われていた。デスクトップパソコンの筐体も金属だった。
今では、ラップトップ、携帯端末、周辺機器、すべてがプラスチックだ。
読者の皆さん、デスクの上を、家の中を、見渡してほしい。
大量のデバイス、ケーブル、周辺機器。デスクに、チェアに、フィギュア。菓子の袋に、トング、飲料ボトル。そこかしこに、プラスチック。
リストアップしてみよう。そのすべてが、生存に必須だろうか。不要なものはないだろうか。減らすことはできないだろうか。
日本人には生活習慣病の患者が多い。パソコンの前に座り続けるITエンジニアは最も危険だ。動脈硬化の患者の死亡率が数倍ハネ上がるのでは、待ったなしだ。今すぐライフスタイルを見直さなければ。
本稿執筆中の2025年2月6日、「NATIONAL GEOGRAPHIC」2月のトップ記事は、マイクロプラスチックと生体リスクの関係だ。関心をもつ人が増えているのだろう。
「脳から「衝撃的」な量のマイクロプラを発見、認知症ではより多く しかも8年間で約50%増加、認知症との因果関係は不明、米研究」
大河内研究室のXアカウントでは、マイクロプラスチック以外の環境リスク、たとえば「PFAS」についても取り上げられている。
「認定NPO法人富士山測候所を活用する会」ともどもフォローして、身近に迫る危険を、いちはやく捉えよう。
そして、できることから、ライフスタイルを見直していきませんか。
大河内教授の研究
動画:『『Plastic Cloud: New Study Analyzes Airborne Microplastics in Clouds』(Wed, Sep 27, 2023)』
論文:『Airborne hydrophilic microplastics in cloud water at high altitudes and their role in cloud formation』
解説(日)『雲水の野外観測で初めてマイクロプラスチックの存在を実証』
解説(英)『Plastic Cloud: New Study Analyzes Airborne Microplastics in Clouds』
FRIDAY DIGITAL
「息をするだけで体内に...? 「マイクロプラスチック」は大気の中にも! 富士山頂の観測で発見」
2024年11月29日
NEWSポストセブン
「《体内に入り込むマイクロプラスチックから身を守るには...》"効率的な体外への排出"が期待できる食事は「根菜」「海藻」などの和食」
2024年6月11日(女性セブン2024年6月20日号)
JBPress
「マイクロプラスチックは海洋中だけではなかった!大気中に浮遊するマイクロプラスチックが人体に与える影響とは
【関瑶子の研究って楽しい】早稲田大学・創造理工学部環境資源工学科教授の大河内博氏が語る最新研究」2024年4月7日
Forbes JAPAN Web-News | Forbes JAPAN編集部
「マイクロプラスチック汚染を森林が解消 ナウシカのようなお話」2024年4月3日
Science Portal
「マレーシア・パハン大学のヒダヤ先生と室内環境マイクロプラスチックの共同研究をスタート」
Washington Post
「The latest unlikely place where you can now find microplastics
Tiny plastic particles have been found in the clouds above Mt. Fuji. Researchers say they could affect the climate.」
November 2, 2023
ASIAN SCIENTIST
「Microplastics In clouds: Scientists Warn Of "Plastic Rainfall"
Airborne microplastics in the cloud water originates primarily from the ocean.」December 1, 2023
早稲田大学
「最新の注目研究者をピックアップ 2024」
新聞記事
「微細プラが雲や雪に混入する問題」共同通信の取材記事、神奈川新聞、日経新聞にも転載
あわせてこちらもご一読を。
The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE「Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events」Published March 6, 2024(アテロームおよび心血管イベントにおけるマイクロ/ナノ・プラスチック)
高田教授の研究
科研費研究「生物組織中のナノプラスチックの同定・定量と添加剤の同時測定による化学物質曝露評価」(2022-06-30 - 2024-03-31)
微細化したプラスチックの生体内蓄積が懸念されても、分析法は欠如したままだった。高田教授のプロジェクトは、マイクロ/ナノプラスチックと関連化学物質の同時測定法を開発した。
科研費研究「フェノール系内分泌攪乱化学物質の都市水域への負荷源解析、動態把握、歴史変遷の解明」(2020-04-01 - 2025-03-31)
NATIONAL GEOGRAPHICの「研究室に行ってみた(文=川端裕人、写真=内海裕之)」に詳しい。
「このままだとみなさん、プラスチックの屑がまじった魚を食べることになりますよ。もう食べているかもしれない」
2015年、東京湾のカタクチイワシの8割の消化管の中から、プラスチック片が見つかった話は恐怖である。少数ではなく「8割」。
プラスチックの添加剤と内分泌撹乱物質についても取り上げられている。
「第1回 忍び寄るマイクロプラスチック汚染の真実」
「第2回 2050年には海のプラスチックの量が魚を超える!?」
「第3回 皇居の桜田濠でもマイクロプラスチック汚染」
「第4回 マイクロプラスチックの健康への影響は?」
「第5回 日本でもレジ袋の規制に踏み出すべき時」」
「第6回 1億種以上の化学物質と人類の未来について」
関連ブログ
「これがマイクロカプセルか!?その衝撃的な画像に、研究者のツイートがバズる!~日用品公害・香害(n)~」