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介護が始まる前に、ファッションを確定しよう。マイ制服のススメ。~ファッション考(2)~

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母がファッションにウルサイ。90歳を超えた今では、わが子を看護師だと認識している時間が長い状態ではあるが、それでも時折、回路がつながるらしい。脱水症で入院していたときも、見舞いに行くと、「そのシャツのボタンを付けている糸の色はいいねえ」などとのたまう。

昭和一桁。だが、祖父母の「男女分け隔てなく進学させる」という方針で、高等女学校からの文化服装学院卒。富士紡に腰かけ就職し、結婚してからも、ファッションへの関心が衰えることはなかった。
亡き父も、ラフな格好を一切しない人だった。家ではこなれた着物、外出時は近所へ行くにも着替えてネクタイを締める。休日には靴を磨く。高品質のものを少し買って長く着る、というスタイルであった。
そんなだから、母と父のあいだで、ファッションがトラブルのタネになることは一切なかった。

それに比べ筆者はといえば、見た目のデザインよりも、機能性と環境負荷軽減を重視。勤務先や常駐先では服装自由、501がマイ制服。靴はといえば、しばしば現場にも足を踏み入れるから、安全靴は履かないまでも、甲の分厚いトレッキングシューズ。

それでも独身の頃は、会社帰りに、馴染みのジーンズショップに立ち寄り、店主の話に耳を傾けてはいた。ところが結婚すると、相手が予想外のソクバッキーでショップに出かけることかなわず、トップスはスーパーの吊り下げ品に。

そんな恰好をしているものだから、親の変形性膝関節症が悪化して、御用聞きのため日参するようになると、毎回、ダメだしをくらうようになった。これが、ダメだしというより、罵りに近いもので、通う気が失せる。
かといって、外出の難しい高齢者を放置することはできない。交渉でもアイデアでも技術でも解決できない課題は、金銭で解決するしかない。どうすればいい?服を買えばいい、という結論に至った。

そこで、2年ほどかけて、トップス、アウター、帽子、靴、アクセサリー、バッグ、以上を大量に購入した。
親が口出しをしないデザインで、自分の好みからあまり外れていないもの。となると、難しい。
ネットショップを探し、メーカーの環境への取り組み姿勢を調べ、品を選ぶ、とてつもない時間がかかる。
生存に必要不可欠ではないほど衣類を増やすということは、綿花栽培の農薬や、合成染料の、環境リスクに目をつむることでもある。環境汚染に加担するようなものであって、気が重い。
しかし、手持ちの服では、支援に行く気力がわかない。買うしかない。

結果、親は、ほとんど、何も言わなくなった。

購入するとき、筆者が重視したものがある。それは、色と形の統一感だ。
親はどんどん年をとる。認知機能が低下すれば、わが子のことすらわからなくなるだろう。そのとき、かすかな手がかりがあるとすれば、それは「衣類の面積の広い部分の色」と「わかりやすい特徴的な形」ではないのか、と考えたのだ。
そこで、メーカーは数社にしぼりこみ、シャツと501を基本に、ネイビーのジャケットやコートを、マイ制服として買いそろえた。

これは功を奏した。
和ふとんに寝ていると目に入る、501のロールアップされた裾を見て、筆者を認識。
ベッドにいるときは、シャツの柄やジャケットの襟の形、そして、常に付けているバングルやリングを見て、認識している。

というわけで、アドバイス。

軽度認知障害か、その手前の親がいる読者諸氏には、マイ制服の設定を、おすすめしたい。
ヘルパーさんや看護師さんたちと被らない、統一感のあるファッションをなにかひとつ決めて、洗い替えも含めて購入しておくのだ。そして、介護が始まるまでに、服の見た目を、親の海馬を焼き付けておけばよい。

顔貌や声からわが子を認識できなくなっても、見慣れた色、知っている形の服を見て、「自分にとって最も親しい人」であることだけは思い出すにちがいないから。

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