病気のニオイの感知力が明暗を分ける!?高齢者の脱水症のニオイとは? ~続・嗅覚センサーを見直そう(2)~
先月末、急に、実親が脱水症により危険な状態となった。入院加療で、少し希望が見え始めたところだ。
しかし、超高齢。予断を許さない。それでも、筆者は、死ぬのが怖いから生きていたいという、親の後ろ向きな生存欲求の発動を信じている。
一人っ子のワンオペ介護。だが、さいわい、力強い味方がいる。主治医もケアマネも訪問看護師も、介護施設の職員さんたちも、介護機器搬入業者も、入院先の医療従事者も、密に連絡をとり、情報を共有して、プロの手腕を発揮してくれる。
さて、その脱水症。
夏場に限らず、高齢者の脱水症は容易に起こりうる。関係各所から多数のパンフレットが作成され、配布されている。
厚生労働省「高齢者のための熱中症対策リーフレット」
「一般社団法人全国訪問看護事業協会」では、高齢者の脱水予防のための冊子を無料で配布している。PDFをダウンロードできるので、介護者は目を通しておいたほうがよい。
これらの資料からわかるように、高齢者が脱水症になると、せん妄が起こる可能性がある。
すでにせん妄中の本人は、脱水に気付くことなどできない。それ以前から認知症やせん妄がある場合は、周りの者も、気付きにくい。
老々介護にいたっては、脱水がせん妄を引き起こし、せん妄により水分をとれずに脱水が加速、という悪循環に陥りかねない。
では、できるだけ早く脱水状態に気づく方法はないのだろうか?
なにかサインはないのだろうか?
尿が濃い色になる。水分が失われるのだから当然ではある。
これは重要な手がかりだが、完全な手がかりではない。
筆者の親の場合、脱水が急激に悪化した時点で、尿は非常に濃い色で少量だった。
その後、本人が、うどんツユとスポーツドリンクとみかん缶詰のシロップまで欲して摂取に励んだ結果、状態は改善、尿は普通の色になり量も増えた。
看護師資格をもつケアマネが、たまたまポータブルトイレの片づけ時に来合わせた。そして、「きれいな色になりましたね」と評価した。
そのように、色も量も改善。にもかかわらず、ニオイといえば、明らかに、憎悪していた。これまで一度も嗅いだことのないニオイが、強まっていく。
それは、加齢臭を何倍にも煮詰めて濃縮したようなニオイ。つまり、加齢が急速に進んでいるニオイだったのだ。
ところが、嗅覚で異常を察知したのは、筆者だけだった。
ケアマネも訪問看護師も、無香害。利用先の高齢者施設は、柔軟剤不使用だ。
しかしながら、訪問先や他の利用者世帯の中には、香料や抗菌系入り日用品を使用している人たちがいる。医療・介護従事者たちは、香害の充満した空間を避けることができない状況にある。これでは、嗅覚は機能しにくくなってしまう。
状態が改善しているように見えても、嗅覚は危機を知らせてくれる。
高齢者である。加齢が加速すれば、生命に危険が及びかねない。周りの者が、ニオイによって異常に気付くことができるなら、採血やMRIを待たずとも、対処できるではないか。手遅れを防ぐことができるではないか。
以前の空気事情なら誰もが気付いたはずのニオイを、香害が覆い隠す。
病院内や施設内を、不要な日用品のニオイで満たすことはやめませんか。できるだけ早く身体の変化に気付くために。