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愛媛県民が、北海道のお菓子を、お取り寄せしてみた(食れぽ)~嗅覚センサーを見直そう(2)~

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前回、紹介した、倶知安町ニセコ駅前の老舗菓子店お菓子のふじい(藤井菓子舗)」。ほかのお菓子も食べてみたので、れぽ。

わたしは、愛媛県民だ。愛媛には、美味しい菓子が、あふれている。善助餅ゆずっ子餡入り醤油餅まんじゅう詰め合わせ栗大福タルト坊ちゃん団子母恵夢霧の森大福ゆずずきん、愛媛にあるのに大阪屋、今では幻の銘菓となった「カブトガニ餅」(漉し餡を薄いぎゅうひで包んでシナモンパウダーをまぶした一口サイズの餅菓子)などなど挙げればきりがないほどの銘菓の宝庫、あちこちに老舗ハタダの商品は多いし、スーパーへ行けばあわしま堂の山積み。まるごとお菓子の家のような県に住んでいるうえ、出張土産やユーザーの手土産で、全国の美味を食べてきている。満足度のハードルは高い方だ(たぶん)。そんな愛媛県民が、北海道のお菓子をお取り寄せしてみた。

購入したのは、お菓子のふじい 和洋詰め合わせ。同店の銘菓を、ほぼ1種類1個ずつ詰め合わせた一箱だ。
昨年12月に購入して、賞味期限の昇順に並べ直して一日1個。食べきったので、感想を書いてみる。

どのお菓子も小ぶりで、パッケージもかわいらしい。重厚な印象はない。ところが、なぜか、1個食べると満足感がある。
不思議なことに、洋菓子には僅かながら和菓子のテイストがあり、和菓子には僅かながら洋菓子のテイストがある。だから、洋菓子でも、紅茶より、緑茶やほうじ茶の方が合うような気がする。濃い緑茶にも負けない、たたずまいだ。

ネーミング、デザイン、食感。商品企画はユニークだ。
「ヌブリ」の、サクサクとした、楽しい食感。ふわふわの、トーラス(コーヒーカップを横に置かなければ、ドーナツにも見えなくはない)。

北海道だけに、てんさい糖を使ったものが多く、上白糖の菓子のような、鋭い甘さはない。
甘味がやさしいぶん、塩の役割が大きくなる。
ヌブリや、トーラスもといドーナツは、愛媛の菓子に比べると、こころもち塩が強い。その塩加減が、甘味を際立たせ、全体を引き締めている。かといって、甘味と塩気が断絶してはいない。そこは北海道、乳製品がまとめ役になっているようだ。

そして、前回書いたように、たまご臭さがない。たまごをたっぷり使っているというのに、クセも嫌みもない。

愛媛の菓子が、ひねもすのたりの春の瀬戸内海のような美味しさだとすれば、藤井のお菓子には、きりりとそびえたつ山のような美味しさがある。
その土地の産物と水で作られる食品は、風土を反映している。お取り寄せには、背景にある自然を想像する楽しみがある。

いや~、北海道、美味しいな。
愛媛の菓子が一番!と誇りを持つ県民だが、愛媛の菓子の小豆も北海道頼みなわけで、そこは素直に認めようじゃぁないか。やるな北海道。サトウダイコンと小豆と乳製品の産地だけのことはある。ミクさんルカさんの生まれ故郷だし(そこ?)。

以下、各々の菓子について、感想を書いてみる。

焼きドーナツ5種類抹茶あずき、いちごホワイトチョコ、有機チョコ、蘭越産かぼちゃ、きな粉。スポンジだけで成立するケーキの趣。甘さは強め。
抹茶は、しっかりと抹茶だが、かといって主張しすぎていない。飾りの小豆粒も柔らかくて美味しい。いちごホワイトチョコは、チョコの量と硬さのバランスがよく、生地とマッチしている。有機チョコは、濃厚だが、纏わりつかない。かぼちゃは、飾りのかぼちゃのタネがアクセントになっている。きな粉は風味がよい。どれも、口当たりがよく、脂肪分のしつこさもなく、上品。やわらかく、ふわふわして、かわいらしい食感だ。
個人的には、抹茶あずきが気に入った。

コーヒーマドレーヌ ミルクコーヒーのまろやかな味わい。牛乳プラス練乳が、なんともやさしい。口に運んだ後でコーヒーの香りが立つ。

たまごのマドレーヌ 素直なたまごの香りと味。先にも書いたが、たまご臭さがない。ストレートティーに、2個添えたい。

ゴマヌブリ 食感の勝利。サクサクしていて塩加減が絶妙。ショートニング遣いは???だが、それでも、この食感には、何度でもリピしたくなるような、おもしろさがある。一度は食べてみるべき。

半月湖緑 やわらかい板状のチョコレートクッキー。チョコと生地の柔らかさは、和の半生菓子のような食感。カントリーマアムをよりしっとりしっかりさせて、チョコと生地の境界もなくして、最高品質を極めました、みたいな印象。

半月湖白 緑の半月湖より、もっちりしている。どちらも個性的だが、白は食感が癖になりそう。
前回書いたように、絵や文字を印刷してもらえるので、技術セミナーのおやつに好適。

米粉のかすていら パッケージデザインがシンプルで楽しい。米粉特有の、膨らんでいるけれども密度のある、ずっしりもっちり感によって、小ぶりでも食べごたえがある。

とうきびパウンド とうもろこしの香りがふわっと漂い、素材そのものが感じられる。コーン好きなら、ハマるだろう。

ながいもパウンド パウンドケーキの重さはなく、シャキシャキとして、あっさりしている。白ごまがアクセント以上に効いていて風味が立ち上る。

にんじんバウンド ほどよくしっとり、しっかりした生地だが、もたれない。くるみが出しゃばらずに良いアクセントになっている。にんじん嫌いの人も、これなら食べられるはず。

北海道産ミルクまんじゅう(コーヒー) コーヒーマドレーヌと饅頭のいいとこどり。個人的には、コーヒーと餡という、二大好物の相乗効果で、これがいちばん気に入った。

北海道産ミルクまんじゅう(いちご) 手亡豆好き。饅頭、好き。手亡豆とミルク味って最高の組み合わせじゃないですか。おいしくないわけがない。

くるみゆべし 甘すぎず、アッサリし過ぎず、甘さ加減がちょうどよい。

ごまゆべし ごまが濃厚で、ほどよくもちもち。かなり、やわらかい。やわらかさを比較すれば、藤井さんのゆべし>愛媛県松山市複数のメーカーの「餡入りしょうゆ餅」>愛媛県西条市の銘菓「星加のゆべし」。柔らかい餅菓子も、なかなかよいものだ。

カシュカシュきなこ 大豆の味が濃い。ほうじ茶に合う。ご高齢の方にも喜ばれそう。カシュカシュしている。

カステらすく抹茶 一口サイズの歯触りのよいサイコロ状のラスク。抹茶の味が濃い。試してはいないが、ホットミルクや生姜薄めの葛湯に、クルトンみたいに浮かべたら、よいアクセントになりそうだ。

ニセコ最中(粒餡) さっぱりとした餡が、美味しい。しっとりした重い甘みではなく、小豆の豆の味が前に出ている。

ニセコ最中(白餡) 手亡豆の白餡。手亡豆は、やはりおいしい。大昔に常駐先で、群馬県のユーザーの手土産の白手亡最中を三時にいただいたことがあり、これが忘れられないほど美味しくて、それ以来、個人的には、最中といえば手亡豆の餡が最高だと思っている。

モーなか うしもなか ミルクあん×チョコ 手亡豆のあんの中に、ホワイトチョコとミルクチョコのチップが入っている。一度冷凍した後、すこし解凍した状態で食べたら、趣の変わった小豆最中アイスみたいになって、美味しいんじゃないかなと想像。.....にしても、頭から食べるか足から食べるかを悩む。たいやきよりも、悩む。

リーフパイ リーフパイとしては厚めだが、まんべんなくサウサクしている。

クイーンロード チョコでコーティングしたブランデーケーキ。洋酒遣いのスィーツ好きに。1個で満足。食べごたえがある。

わたしの個人的な好みでいえば、ベスト5は、北海道産ミルクまんじゅう(コーヒー)、ゴマヌブリ、半月湖緑、とうきびパウンド、コーヒーマドレーヌ。北海道ならではの素材力と、ふじいさんの企画力が、相乗効果を生んでいるお菓子が美味しかった。ひとひねりした味が、記憶に残った。

食レポを書くのは、35年ぶり。それぞれの菓子の味、伝わっただろうか。

このアソートのセットには、同店の目玉商品「ポン男爵」は含まれていない。
特産品の男爵いもを使ったお菓子なのだが、愛媛県民としては、「POMジュースで、ルネッサーンス!」などという絵が浮かんでしまうネーミングだ。商品名が、小林製薬的すぎるwww。

それにしても、なぜ、ゆるベジではあるが一応長年のベジタリアンの筆者が、これほどまでに乳製品やたまごを使ったものを食べたのか?
そして、清貧のライフスタイルを旨とする筆者が、北海道―愛媛間の輸送という、フードマイレージを無視するようなことをしているのか?

それは、「お菓子のふじい」を応援するために、消費者レベルでできることは、お菓子を買うことだと思ったからだ。
この感想は、「たまご臭さのない」お菓子を紹介するという目的だけでなく、藤井菓子舗を応援するために書いているこの感想を書くために、一箱をひとりで食べきったのだ。
応援しよう、と思った詳しい理由については、後日、書く。

「お菓子のふじい」の経営方針に感嘆している。そんなお店のお菓子なら間違いなさそうだ、と思う。
ビジネスにおいて利潤追求はもちろん重要だ。だが、利潤追求の前に、高い倫理観に裏打ちされた「世のため人のため」という姿勢が必須だと、わたしは思っている。人間関係も、企業も、国家も、倫理観の綻びから、崩壊が始まるものなのだ。手に触れず目にも見えぬ、抽象的な美意識の集合こそが、平和でつつがない暮らしの基盤となる。目先のキャッシュと心身のラクに重きをおく傾向が強まる世界で、逆風が吹きすさぶなかで、凛として立つことは厳しいことだけれども、ひとりひとりが踏ん張らなければ、動じない覚悟のある人間が歯を食いしばらなければ、我々の生活は足元から崩れてしまう。

食にせよ、システムにせよ、本にせよ、どんな商品にも、仕様やトレーサビリティのデータ以外に、付随している情報がある。 手に触れず見ることもできない情報、経営理念や、作り手の姿勢、つくられた場所の風土など。

わたしは長年メタデータを扱ってきたから、モノのデータに付随するメタ情報にこだわりすぎるきらいはある。だが、そうした、隠れた情報(わたしは「由来の情報」と呼んでいる)に、敏感でありたい。ヒトだからこそ感知できる情報、たいせつにおもう情報がある。AIなら「処理する価値なし」と判断して素通りしてしまうであろう情報に、価値を見出す。ヒトは、有益なデータのみを処理する計算機とは違うのだ。

真摯な人の作った品には、真摯な情報が付随する。
真摯でないものが淘汰され、真摯なものだけが尊重され流通する社会に、わたしは暮らしたい。実現可能性がきわめて低いであろうことは分かっていても、そんな、かすかな希望を持っている。

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