インバウンドマーケティングの本質は桃李成蹊と去華就実
ネットマーケティング界で流行り、かつ、その正体は何かと混乱が起きている言葉、「インバウンドマーケティング」。この半年ほど、その正体を考え続けてきたのですが、やっと、「インバウンドマーケティングは、桃李成蹊(とうりせいけい)と去華就実(きょかしゅうじつ)である」という結論に至りました。
インバウンドマーティングについて、Wikipediaでは以下のとおり紹介されています。
- For the synonymous term coined by Seth Godin, see Permission marketing. For the product management sense of Inbound Marketing, see Product management.
Inbound marketing is advertising a company through blogs, podcasts, video, eBooks, enewsletters, whitepapers, SEO, social media marketing, and other forms of content marketing.[1][2][3]
まず、そもそも、先行概念としてセス・ゴーディンのパーミッション・マーケティングという概念があります。日本では、阪本啓一さんの訳本で2000年頃大いに話題になり、広がった概念です。オプトインをもらい、好みにあった情報を受け取る。対義概念は、阪本啓一さんは土足マーケティングと訳した、インタラプトマーケティングです。好みなど関係なく送りつけるEメールや繰り返し来る売り込み電話などをそう呼んでいます。ITの世界では情報システム担当者の興味関心に合わせて情報をとれる、キーマンズネットが当時上手く機能していました。
しかし、Eメールオプトインとか興味関心のマッチングとかは情報の洪水とか、興味関心自体が移ろうことで上手くいかないものとなりました。
欲しいから取ったはずのメルマガ・ニュースレターも多すぎると溢れてしまうのです。
そういう状況下で、インバウンド型のマーケティングオートメーションツール、HubSpot の共同創業者、ブライアン・ハリガン(Brian Halligan) が2005年にインバウンド・マーケティングという概念を生み出しました。「見つけられる(get found)」ようにするというのです。
In one case inbound marketing was defined by three phases: Get found, Convert and Analyze.[1] A newer model illustrates the concept in five stages:[7]
- Attract traffic
- Convert visitors to leads
- Convert leads to sales
- Turn customers into repeat higher margin customers
- Analyze for continuous improvement
見つけられ、期待を得て、信頼を得る、ために、ブログなどの記事や情報を書き、パーミッションを取るための、ホワイトペーパーや事例といった、プレミアムコンテンツを用意して、「リード」へ、売上へと変え、そして、顧客へより付加価値の高い製品やサービスを売り、過程を分析するわけです。
ここで、「見つけられる」というのは非常に従来のマーケティングでは発想が違うため誤解が広がっているように思います。ただ、これはマーケティングだけではなくて古来から考えられ、故事成句として残っている考え方です。
桃李成蹊:桃李言わざれども下自ずから蹊を成す
桃やすももは、自分で呼び込み宣伝をするわけではないが美しい花の姿や美味しい実の香りで人が自然と集まり、道が自然とできる。そのように徳の高い人素晴らしい人物の元には自然と人が集まるといいます。
去華就実:外見の華美を捨て去り、実際に役立つ人となること
結局のところ見つかるべくして見つかるわけですが、いいものでも見つからず埋もれる、本人がその良さのポイントを分かっていない とかいうケースもあります。中国の故事成句ではいい言葉があります。「千里の馬は常に有れども、伯楽は常には有らず」です。
桃李成蹊の反対の言葉ですが、マーケティング的に解釈すると、
いい商品やサービスもその特長を掴み、戦略を立て、ポジショニングした上で、適切なブランディングをして知らしめて、伝え、見つけてもらう必要があるわけです。インバウンド・マーケティングの好事例と以前紹介した、水回りのサンリフレも、自社の構造的強み・特長をWebで表現し、豊富なブログ記事や顧客事例で表現し、不安を解消して、売上に繋がるしくみをつくっていました。
1:リフォームは総額が不明瞭で不安 → 取り扱い商品を絞り、料金体系を簡素化、視覚化
2:馴染みがなくて不安 → 豊富な顧客事例と、担当者の顔が見えるブログで解消
3:見積り訪問無料はいいけど、買わされそうで不安 → パタンを絞りデジカメ利用で無訪問見積り
物理的な桃やすももなら、人が足を踏み入れることで道が自然とできていく「はず」ですが、名人だけが知る秘密のキノコスポットのように隠れたまま、もしくは名人にすら見つけられずにいるケースもあるのが世の中です。
結局のところ、マーケティングの本質的ないろいろなことが必要というのが、インバウンドマーケティングの本質であり、インバウンド・マーケティング用のツールを入れるというより、自社の強みを「見つけ」「伝え」「納得して腑に落ちてもらう」というマーケティングの本質的なところがポイントになる、そう考えます。
となると、「インバウンド・マーケティング」という名前にこだわらず、マーケティングそのもの、コンサルティングや、売れるWeb制作、コンセプトづくりと考えた方が早そうです。例えば、
様々なECサイトの構築と運営コンサルをされている永江一石氏のブログ記事「WEBから実店舗への集客は本当にできるのか、具体的な実証例です(秘)」は非常に参考になります。
ここでは、釣り船をWebから集客するために、サービス自体の見直しをされています。
つまり、私がコンサルしたのは、単にWEBの表現だけでは無くて、業態自体を変えることでした。これがネットに親和性が高い人たちに受け入れられたわけで す。ちなみに待合室は「禁煙」にしてもらいました。 車で来られないお客さんは、船頭さんたちが駅まで車でお迎えに行きます。ビバ! サービス業。
去華就実(きょかしゅうじつ)と言っても、花がないと蝶や蜂が寄ってくれず虫媒花は実が成りません。実際に顧客に役立つこと、そして伝える媒体に即してその特性にあった役立つを提供し、表現することが大事です。桃李成蹊は、自ずと道ができるという言葉ですが、そうなるための努力や実行が大事です。
ツールや手法はそのごく一部であり、そこから離れることがインバウンドマーケティング成功の鍵かもしれません。