今現在の国際情勢を考える-寺島実郎講演会-
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先日、寺島実郎さんの講演を聞く機会がありました。
この方も、現代を考える上で、是非とも耳を傾けたい論客です。
寺島さんは、今年から母校多摩大学に学長として赴任されています。
それをきっかけに、今年の夏ごろからかなり注目しています。
僕自身が特に意識しているからか、最近メディアにも頻繁に出られているように思われます。
以下に1時半ほどの講演におけるトピック、および主張をまとめてみました。
- 貿易構造の変化
対米貿易の大幅な減少と対中貿易の拡大
(貿易総額における比率・・・2000年:対米25.0%、2009年半期:対米13.5%、対中20.5%) - 大中華圏(Great China)の存在感
中国本土に限らず、華僑の影響の大きい地域(香港、台湾、シンガポール等)を含めた経済圏を指し、その割合が非常に大きくなっている
→対大中華圏:30.6% - オバマのグリーン・ニューディールは成功するか
再生可能エネルギーはいずれも小規模であることが特徴であり、そのままでは現在のエネルギー供給構造をそのまま代替することは難しい
ただし、EV(電気自動車)、ITを組み合わせることで大転換を起こす可能性がある
(Googleのスマート・グリッドは先見の明がある)
→歴史の転換点は常に「相関」により起こっていることから - 米国を考える
リーダーには、常にレジティマシー(legitimacy:正当性、理念性)が求められる
9.11以降、米国の戦争による死者数が5000人を超えたこと
(19世紀の米国の戦争死者数はおよそ4000人)
→この数字のインパクト:時代を捉える上で、数字に対する感受性を持つことが重要 - 日本の産業の発展の道筋を考える
金融不安の中で学んだことは「実体性への回帰」、「自律性への志向」である
→食料自給率の低さ、化石燃料の輸入依存状態からの脱却
国土面積は世界61位だが、経済水域を含めた海洋面積は世界6位である
→海洋資源開発の推進を行う
プラットフォーム型産業の中核として、宇宙航空産業を据える
→自動車以降のプロダクトとして、裾野の広い産業を育てる必要がある(MRJは先駆け)
宇宙開発、準天頂衛星(GPS代替)の打ち上げ
→海洋資源開発とも密接に関係(相関)する
講演会にて、いきなり20ページにもわたる資料冊子が配られるとは思いませんでした・・・。
それだけ、実際の数字に基づいた分析、それを根拠とした論理展開をしている、ということがよくわかります。
しかし、講演で触れられたトピックは上記の点のみで、資料の内、たったの4ページほど分でしかありません。
残りの17-8ページについては資料準備だけして、そのとき(その数日という意味で)一番注目している点から関連する話題についてだけ講演する、というスタイルではないかと思います。
気ままにトピックに触れているようでいて、内容の深さに脱帽です。
というわけで、残りのページの資料については自分で数字を読み解いて、展開してみたいと考えてます。
また、寺島先生の視点で特徴的なのは、歴史背景を非常によくご存知であるがゆえの論理展開がをされる点だと思います。
時代背景をここまで調べられているのか、と驚かされたのは『二十世紀から何を学ぶか』でした。歴史の重みを再確認した一冊です。
また、今回の講演で取り上げたトピックを読みやすくまとめた新書も近日、出版されるとの事でした。
今回は武蔵野大学での一般講演でしたが、多摩大学でも是非とも、開催していただきたいものです。
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