「日本流」の実現にまず必要なもの
外資系で10年以上マーケティングをやった人間として、今泉さん、高橋さん、永井さんの「日本流」の話題は乗らざるを得ないでしょう(笑)。
一連のエントリでは日本IBMが事例なので、うまく行った例しか取り上げられていませんが、多くの外資系IT企業ではグローバル統合偏重でうまく「日本流」を組み込むことができていないのが実情でしょう。では、「日本流」を実現するには、まず何が必要なのか?
それは、日本法人社長の強い意思です。私自身の経験、他の会社での担当者の話などを聞いてそう確信しています。社長が、日本市場に対して日本のやり方でやると明確な意思表示すること。必要ならば本社と戦うこと。それがあって、初めて現場の人たちは自らの企画する「日本流」をインプリメントできるのです。日本IBMの椎名さんの例も、まさにこれにあてはまります。
私が、ロータスで10年以上マーケティングに携わっていましたが、当時の社長であった菊池三郎さんは、一貫して「日本市場に合ったやり方でやれ」「私も本社と戦う」という姿勢でした。社長のこの姿勢があったからこそ、私たちは日本独自のマーケティングを行うことができました。この姿勢のもと、いわゆる広告宣伝や販売促進(日本だけはIBM買収までは完全に独自路線でやっていました)だけでなく商品企画すら行うことができました。
古くはノートPC用の「1-2-3/Notebook」。世界で始めてノートPC用の廉価版(といっても38,000円でしたが(笑))を出しました。パッケージも小さくコンパクトに独自デザイン。当然ながら、このときも本社からは「そんな勝手なことをするのはまかりならん」という意見がありました。しかし、菊池さんが日本で必要なことをやるというスタンスを貫いていたため、私自身もこのプランを本社の連中に強く押すことができましたし、菊池さん自身も本社役員を説得してくれました。それ以降も、ジャストシステムと組んだ「ハーモニー」、日本だけ名前を変えた「スーパーオフィス」、日本だけ普及戦略を採った「インプロブ」など、数多く日本だけの戦術を行ってきましたがそれを支えたの社長の「お前らがそう考えるなら本社と戦ってよし」という意思でした。また、これらのことを交渉し実現するには、本社の連中と膝を詰めて話す必要がありますが、そのための本社出張も自分の裁量でかなり頻繁に行かせてもらいました。
現場にいて市場と接していると、様々な「日本流」のアイディアが出てきます。しかし、それを実行できるかどうかは、やはり日本法人トップの強い意志だと考えています。