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肩書きを明かさず、ピンでどれだけ通用するか。

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肩書きを明かさず、ピンでどれだけ通用するか。

数日前のブログで、組織の外に出て身にしみる「信用」のありがたさ

というタイトルで書かせていただきました。その続きです。
自分の肩書き(所属)が通用する世界にいると、自分の社会に対する実力がどの程度なのかがはっきりわかりません。特に、大学にいると一層わかりません。例えば、実験装置、実験部品を業者へ発注することがありますが、その相手の業者さんは、勿論、一般のサラリーマンなので、たとえ、発注主が学生であっても、当然お客さんとして扱ってくれます。年齢では、相当離れているような場合でも、売主と買主であることには変わりません。

このことは、街のお店で買い物する場合も同じといえば同じですが、大学院の学生ともなれば、街のお店で買い物する時にはありえないような、かなりの高額の買い物を任されることも少なくありません。研究分野にもよりますが、実験装置というのは、既製品を買って済むようなことはなく、世界に2つとない詳細なカスタムメイドになることが多いです。その仕様について学生が詰めることになります。逆に、そうでないと研究になりませんし、学位も取れません。

業者さんが売掛販売をする時には、相手の信用度を勿論、気にしますので、信用が取れてないような場合は、即現金払いしか受け付けてくれないことあるかと思います。それが、大学という、絶対に回収不能になることのない相手であれば、完全に信用されて、発注主が学生であっても、完全に信用されるわけです。

ただ、ひとたび、大学の外へ放り出されると、全く素性のわからない人間の一人に陥るわけです。営業に行ったとしても、どの誰だかわからない、新しい会社であれば、社名も知らない、まして、その中の人間なんて知る由もない。1円で株式会社を設立できるというのはいいのですが、資本金1円の会社を作ったとして、その会社を一体誰が信用するのか? 

私の場合は、そんな全く信用がない中でのスタートでした。ポスドク真っただ中の出来事です。ただ、ピンの自分自身の存在が、どれくらい通用するものか、全く通用しないのかを試したくて、あえて、身分を明かすことなく、肩書きゼロで業者さんと接触しました。そんな中、業者さんとの付き合いでまず大切だと思ったことは、売掛に対する支払いをすぐに行うことでした。それがまず信用につながる第一歩であると強く感じていました。請求書が送られてきたら、即日で振込む。それを習慣化することで、次にその業者に動いてもらいたい時に、すぐに動いてくれますし、他の業者さんへの信用も徐々に得られていくというのがわかりました。

あとは、理不尽なことがない限り、絶対に値引きしてくれといわないことも大切かなと思っています。金額が高額な場合には、相見積をとることもありますが、基本的には、全うな業者であると自分が判断できれば、値引きを言うことはありません。なぜなら、サラリーマンが、会社から「給料をまけてくれ!」っていわれて、すぐに「はいはいそうですか」と納得する人はいないと思います。それと同じですね。自分が支払いを滞らせば、自分の給料の受け取りが滞っても文句は言えないわけです。つまり、明日は我が身というわけですね。

友人に大工がいるのですが、彼がこんなことを言っていました。「こちらの見積通り払ってくれれば、しっかり工事をするけど、まけろ、まけろ!とうるさかったりすると、くぎを6本打たないといけないところが、4本になる。」逆に、ある業者の方はしっかり満額払うと、頼んでいないことでも、気づくと色々とサービスでやってくれたりします。そうして徐々に信頼関係が生まれてきます。

それに、「まけてくれ!」って言って、簡単にまけてくれるような場合って、なら、最初の価格は一体何だったのか?ってことにもなります。

だいたい、ある決まった商品なら高い安いで判断できますが、家のリフォームなど、相見積の金額だけを単純に比較できないような場合に、値段の高い安いだけで判断はできませんし、なまじ安い方を選んだがために、短期間で再びお金をかねなくてはならないようなことにもなりかねませんね。見積書の詳細な質問などで精査する必要があるでしょう。

これも微分と積分のバランスです。初期コストは安く済んだとしても、トータルでかかる費用は多くなってしまうことも少なくありません。住宅ローンやインクジェットプリンタ、携帯電話の支払いもそんな例だと思います。

以上のような観点が身につくと、少し前の武富士の問題の本質も見えてくるような気がします。次に、その話を書きたいと思います。

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