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「圧倒的な本物を見落とさないために」 競争とはコンクールとはーⅢ

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アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920年~1995年)、イタリア出身のピアニスト。
 
限られた作曲家と作品による狭いレパートリー、完璧主義者のためコンサートのキャンセルも多いことで知られる奇才。20世紀を代表する巨匠の一人でもあります。
 
しかし彼もまた、その桁外れの才能にもかかわらず、コンクールにおいて認められなかった一人。
1938年、世界3大コンクールの一つと言われる、エリザベート王妃国際コンクールにおいて、屈辱的な7位。
 
ロシアのピアニスト、ラザール・ベルマン(1930年~2005年)。
19世紀の香りを残す、スケールの大きなヴィルトゥオーゾの演奏で知られます。
彼も、ショパン国際コンクールにおいて何度も落選しています。
 
ホルヘ・ボレット(1914年~1990年)も素晴らしいピアニスト。「(楽壇からの)長年の無視に傷ついていた」彼もまた、コンクールとは縁がありませんでした。
 
もし、フルトヴェングラーが現代の指揮コンクールを受けていたら、どうだったのでしょうか。
もしかしたら落選するかもしれません。
コンクールにおいて、技術的な水準ばかりが上がりすぎてしまったのです。
 
ホロヴィッツやコルトー、グールド、シゲティ、クライスラーのようなスケールの大きな大芸術家が世に出て演奏家として大成する時代は終わってしまったのでしょうか。
 
ダイヤモンドのような才能をどこからか知れない世界から発掘してくるよりも、コンクールで合格印をもらった演奏の方にマネージメントが行ってしまう、クラッシック音楽業界の現状もあると思います。
 
しかし、あのミケランジェリでさえ、ベルマンでさえ、コンクールでは失敗してしまうのです。
 
このことを知るとき、たった何人かの人が、人を審査することの難しさを感じます。
 
そして、一部の評論家だけではなく、聴衆である私達が、出来るだけ良い耳をもって、本物を見分ける力をつけること。
 
それがこれから先、人類の文化、芸術を守っていく上で必要なのだということを思わずにはいられません。

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