イノベーターだったベートーヴェン ピアノのキャズム越えはいつか
映画「不滅の恋 ベートーヴェン」をご覧になりましたか?
ベートーヴェンが、ピアノの弟子でもあり、当時の恋人でもあったグイチャルディ伯爵の令嬢ジュリエッタ・グイチャルディの家でピアノを弾くシーンがあります。
その頃のベートーヴェンはすでに難聴が始まっており、それをひた隠しにしていました。すでに有名人となっていたベートーヴェンですが、もし耳が聴こえないということが知れてしまうと、音楽家としての評判が落ちて活動出来なくなってしまうのではないかと恐れたのです。
そのため、人前での演奏は行っていませんでした。
そんなベートーヴェンにピアノを弾かせようと、ジュリエッタは
「家中留守にしますので、ロンドンから取り寄せた最新型のピアノを弾きにきませんか。」
と誘います。
音楽界の革命児でもあるベートーヴェンの想像力は、当時の楽器の能力をはるかに越えていました。
彼は、常に性能のよい最新の楽器を求めていたのです。それをジュリエッタはよく分かっていたのですね。
ピアノの上蓋に耳をのせて、体全体で楽器の振動を感じとりながら弾き始めるベートーヴェン。有名な「月光」のソナタです。
このときの楽器は、イギリスのブロードウッド社製のものだと思います。
ブロードウッド社はピアノの開発を重ね、大型で、音量も大きく、より頑丈な楽器を作っていました。
ベートーヴェンは、このピアノを大変気に入ったそうです。
それによって表現力の可能性も広がり、ベートーヴェンのピアノソナタは、よりスケールが大きくダイナミックな作品へと発展していくのです。
ピアノの歴史は産業と鉄の歴史でもあります。
ピアノの命は木の枠と鉄骨です。
その後、産業革命によって大幅な技術革新を遂げ、今の楽器に近く、多彩な表現が可能なピアノが作られるようになってきました。
さらに、貴族でなくては持てないような高級品であったピアノが、一般市民でも入手できるような楽器も出現し始めます。
6月9日の第5回朝カフェ次世代研究会でもありました、顧客の新製品に対する関心度「ちょっと興味がある2.5%」であるまさにイノベーターがベートーヴェンだったのですね。
産業革命以降、アーリーアプター13.5%からアーリーマジョリティ34%に移行するあたり、少しお金持ちの一般市民がピアノを入手できるようになったところが、ピアノのキャズム越えだったのかもしれませんね。
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