起業を考えている会社員に伝えたい3つのこと
わたしが起業(パソコンスクールを開校)して、気が付けば、6年。7年目に突入しています。
今朝、以前の会社の後輩が独立して3年経ち、「方向性を見失っている」という内容の投稿をFacebookで見て、ちょっと心配しています。
詳しい状況は分かりませんが、3年経って、自分自身の内面の変化、だけでなく、いろいろと独立前に築いた関係や環境が変わってくる頃なのかなー、と思います。
まだ会社員時代に、こんなエントリーを書いたのを思い出しました。
若い人の場合は、やり直しもきくし、フリーのSEであれば、借金を背負って、ということも無いでしょうから、どんな決断をしても、「やり直し」というよりは、むしろ、成長につながると思いますので、頑張って欲しいです。
同じ起業でも、わたしと同世代や少し上の先輩の場合は、ちょっと話が違ってきます。
「役職定年で大幅年収ダウン。やってられない」
「SEとして限界を感じる」、「案件にアサインしてもらえない」
「老後が心配」、「年金じゃ生活できない。自営業なら引退(退職)がなくていいね」
「もう飽きた」
最近、こんな話を良く聞きます。
気持ちは分かりますが、こうしたネガティブな理由で起業を考えているなら、全くおススメしません。
そういう方が、経営者になっても、得られることより、失うことの方が多く、また、得られることより、失うことの方が、その人にとって、「優先順位が高い」ことなのでは?と思うからです。
まあ、そういう人は、実際に、起業まで辿り着けないと思いますので、これについては、また別の機会に書くとして、問題は、具体的な「夢」があり、自分の体力や気力を考えたとき、今がラストチャンス、と考えている人です。
「問題」というと失礼ですね。より「深刻」というか、現実的なアドバイスが求められる状況だと思います。
相談されたときに、私が伝えることは3つあります。
「お金を十分、貯めてください」
「上手くいかなかったときの撤退の基準を明確にしておきましょう」
「夢とビジョンは違います」
1.お金を十分、貯めてください
お金がなくては、何もできません。
まずは資金です。これが十分でないとすぐに終わってしまいます。1000円で、パチンコ屋にいっても、あっという間にすってしまうのと一緒です。(わたしはパチンコはやりませんが)
最近は、新規事業支援があるから大丈夫、なんて思っていたら、大間違いです。
都道府県や市町村の「新規事業支援」の多くは、「融資」です。全く資金が無く、新規事業を始める人には貸しません。借りられるのは自己資金と同額程度までです。いろんな「支援(融資)」がありますが、違いは、借りられるMAXの額と金利と保証金で、借りられるかどうかの基準は変わりません。わたしが、新規事業で借りたときは、審査時に、預金通帳の残高が分かる写しまで求められました。また、上手く借りられたとして、借金ですから、返さなくてはいけません。
わたしは、創業時の借金は返し終わりましたが、もう1つ教室を増やして撤退したときの借金はまだ返し続けています。
「助成金」であれば、返済は必要ないのですが、何かやるための何割かを援助します、というものであり、ただで欲しいだけもらえる訳ではありません。また、ほとんどは「雇用」に関するものです。
他に資金を得る方法は、「投資」、「賞金」がありますが、よほど、ビジネスプランがしっかりしていて、新規性のある事業でないと難しいと思います。
しっかり準備して、これなら大丈夫、と思って起業しても、すぐ結果が出ることは稀です。市場にアジャストするため、あるいは、市場を開拓するために、努力と時間が必要になります。そのとき、必要なのが資金力です。
どんなに売上があっても資金がショートすればそれで終わりです。また、運転資金だけでなく、税金や社会保険、生活費も考えなくてはいけません。これは意外にかかります。
2.上手くいかなかったときの撤退の基準を明確にしておきましょう
事業は新しく起こすよりも、撤退の方が難しい、と思います。
「もう少し続ければブレイクするかも」、「今は調子悪いけど元々はもっと凄かった」と撤退するタイミングを誤り、取り返しのつかない結果になってしまった例を数多く見てきました。
新規事業を次々に生み出して成長をしているある企業では、撤退基準を明確にし、ルール化していると聞きます。そこまでしないと、容易には撤退できない、ということだと思います。
挑戦して、失敗して、「ハイおしまい」では済みません。その後の生活があります。
わたしが、教室を1つ増やしたとき、既存店の売上・利益も食いつぶし、毎月、赤字でした。
そのときの恐怖は、たぶん、現在、普通の会社員の人には想像できないと思います。
(わたしは、まだ会社員の頃、経営陣が不祥事を起こし、経営を引き継いだとき、実態は赤字で、「このままでは賞与が払えない」、「何日までに入金がないと資金ショートする」といったことを体験していたので、まだ冷静に対処でき、大怪我にならなかったと思います。)
地獄の入口を見た、そんな気分です。(そちらの方が想像できないかもしれませんね)
その話をすると、「オレも(飲み代などで)毎月は赤字だよー」なんて言う会社員の方もいますが、賞与で補填できるという安心感、または、飲みにさえ行かなければお金は残る、という安定収入があるからこその発言だと思います。
若い人と違って、再就職は難しく、「起業」のチャレンジをキャリアとしてプラスに捉えてくれる企業も多くはありません。一度、起業してしまえば、雇用保険も関係なくなります。
3.夢とビジョンは違います
わたしは、大学で「キャリアデザイン」という講義を持っています。今の学生は安定を求める人が多いのですが、たまに、「アプリで儲けた経験があるから起業したい」なんていう子がいます。イラストでお金がもらえたとか、最近は、素人でも、そういう発表の場というか、お金を得る手段があり、プロとアマチュアの境は明確ではありません。
まだバイトで月十万前後しか稼いだことのない学生が、50万とか100万といった金額を目にすれば、「これはイケルのでは」と考えても不思議ではありません。
「プロとして生活するには稼ぎ続けなくては行けない」、「稼ぐには費用がかかる」ということが抜け落ちているんですね。自宅から通っていたり、仕送りをもらっていたりすれば、生活費も甘く見ているのかも知れません。
学生なら仕方ないのですが、長年、企業で努めてきて、プロジェクトの管理や部門の費用の計算をしているはずの会社員の人も、いざ、起業となると、その辺が抜け落ちている人が多いように思います。
「やりたいこと」ばかりで、誰のためのサービスなのか、どうすれば競合に勝てるのか、それがやるべきことなのか(コスト、時間、技術)、が無ければ、例え、まぐれ当たりがあったとしても、生き残れることはないでしょう。
興味があること、に引っ張られて、それが競合に勝つための秘策だ、なんて、後から関係付けしているようでは、経営とは言えないと思います。
先日、見かけた記事、
【現代ビジネス】飲食店経営に手を出して地獄を見る人の「三つの共通点」
には、こんなことが書かれています。
会社を定年退職して、退職金で自分の思うようなカフェやレストランを始めようとした場合、とかく「自分の作りたい料理を提供して、内装にこだわって、使いやすい設備をいれて...」と、考えがちだ。顧客が何を望んでいるかではなく、「自分が何をやりたいか」しか考えない...これがプロダクトアウトの発想だ。
気持ちはよくわかる。だが残念なことに、これが失敗の始まりなのだ。
確かに、そこを考えるのが、楽しいところ、なんですけどね。
これらの失敗を避けるためにも、飲食店を始めるなら少なくともマーケットインの発想に立たなければならないのだ。
「いま、世の中にはどういった店(食べ物やスタイル)が求められているのか。出店するならどこがいいのか。そのエリアの競合店舗を考えると、どういった店であれば勝てるのか...」
こんなことを、リサーチしながら延々と考えていく。その結果「この場所でこの業種なら勝てる、生き残れる」という道を見出すことが正解なのだ。
会社員で、「今は、やらされてばかり。起業すれば好きなことができる」と考えているようでは、難しい、ということです。
経営では、「やりたいこと」より、「やらなくてはいけないこと」が、優先します。
また、こんな記事も見かけました。
【スポーツ報知】古坂大魔王、YouTube収入だけでは食えないと断言 ピコ太郎「PPAP」で再生1億超
古坂大魔王はトップ・ユーチューバーのHIKAKINを引き合いに出し「(彼は)毎日、何個も動画をあげているんですよ。それでなんとかやっていける」と、YouTubeで世界的ヒットした本人だからこそ分かる実情を明かしていた。
YouTuberも、一発当てればOK、という世界では無いようです。