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経営情報研究室と名乗ってます

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私の大学では、研究室に、「ビジネスモデル研究室」、「経営企画研究室」など、ニックネームというか、その専門がわかる名前が付いています。

で、私は「経営情報研究室」と名乗っているのですが、今回は「経営情報」という言葉について書きたいと思います。
「経営情報」っていうワードをWebで調べると、「経営情報システム」のことを説明している場合もあって、ちょっと違うんだけどな、と思ったりします。
あと、前回取り上げた「データサイエンス」というワードも、「経営情報」と似たような使われ方をされたりしていて、混乱気味です。

私の中では、次のように整理しています。

経営情報
システム
狭義には、MIS(Management Information Systems)のことで、企業の経営・管理などの意思決定に必要な情報を収集・分析するためのシステム。広義には、経営に関わる情報システム(POS、MRP、SCM、CRM、ERPなど)の総称として用いられる
経営情報 企業の四大経営資源(「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」)の一つである「情報」を活用して、企業のマーケティングやビジネスプロセスの効率化などの課題達成、経営問題の解決を図る
データ
サイエンス 
データを収集・整理し、統計学、数理工学などを活用してデータを分析、有益な知見を見出す

3つのワードを整理するには、「データ」と「情報」の意味の違いが重要で、「データ」とは、事実を表す数字や記号です。「データ」が、問題解決や課題達成のために、ある目的において解釈・評価された時点で「情報」になります。
「データ」から「情報」にする手法が「データサイエンス」、その「情報」を経営に活かすのが「経営情報」、さらに、情報システムとして、企業の競争戦略を担うのが「経営情報システム」という感じで捉えています。
イメージ的には、データサイエンスの一部(情報を活かすのは経営の他にも、社会、スポーツなどの分野もありますから)のようであり、経営情報システムの一部(といっても、根幹ですよね)のようでもあり、両者を橋渡しするようなものでもあります。
思いつく関連キーワードをマップにしてみるとこんな感じ。

イメージマップs.png

あくまでも私の頭の中のイメージで、位置や大きさは、正確に何か数値を元にして表している訳ではありません。
「経営情報システムは、大学で学習する内容だと、マップ右上(ビジネス)じゃなく、左上(教養)なんじゃないの」とか、「機械学習とプログラミングが離れた場所にあるけど、機械学習をやろうと思ったら、プログラムが必要だよね」とか、いろいろ、ツッコミどころが満載のマップですが、皆さんが、ワードを整理するときの参考になればと思います。

そうそう、「AI」というワードはマップに入れてません。
「AI」については明確な定義がなく、人や時代、場面によって、解釈が大きく異なるので、あえてマップには記載しませんでした。(マップすべてがAIとも言えますし、機械学習のところだけを指している場合もあると思います。)

ここで、一番大きな円で、中心に置いたのは、「コンピュータサイエンス」です。
「コンピュータサイエンス」というワードは、「IT(インフォメーションテクノロジー)」とか「ソフトウェア工学(ソフトウェアエンジニアリング)」などと似たような使われ方をしていますが、これらの違いは、私の説明よりも、情報処理学会策定のカリキュラム標準J07(最新はJ17)を見ていただいた方が良いと思います。
それぞれ重複している部分も多いのですが、コンピュータサイエンスは、ITよりも理論的で、ITと違って情報システムについてはあまり含めない、という感じでしょうか。ソフトウェア工学はコンピュータサイエンスとITの中間、ソフトウェア開発に重心がある、といったところだと思います。
コンピュータサイエンスは、データサイエンスとも重複するところが多いと思いますが、データを収集することも、分析することも、シミュレーションすることも、コンピュータを使わなくてもできる(注1)ことなので、「データサイエンス = コンピュータサイエンス」では無いのは明白ですね。近年では、コンピュータサイエンスの上で成り立っていると言えるほど、コンピュータ無しでは考えにくいと思いますが。

いろいろなワードが出てきましたが、学生に研究室のことを説明するときには、「AI(機械学習)などのコンピュータサイエンスを用いて、マーケティング分析、ビジネス業務の効率化など、経営問題の解決を図る」という言い方をしています。
また、研究室のホームページの中の「経営情報とは」というページでは、概念的な説明よりも、回帰分析やコンジョイント分析、テキストマイニングなどの実例を示して、「経営情報」がどんなことなのかをイメージできるようにしています。

実際には、学生にどう伝わっているのでしょう。
私の研究室への志望理由を学生に訊ねると、大抵、
「社会に出たときに『経営』の知識が役に立ちそうだから。あと、『パソコン』も使えるようになった方がいいと思って」
という回答が返ってきます。
いいんです。まずは「経営と情報(=パソコン)」という理解でも。

パソコン博士s.png

注1:例えば、東京タワーの構造計算は、コンピュータどころか、関数電卓も使わず、計算尺による手計算とのこと

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