情報系の学生に望むこと
以前、ITエンジニアに必要なものについて書きました。
(「IT業界でやっていくのに必要な能力」)
その際、プログラミングなども、入社前に身につけておけばアドバンテージはあるものの即戦力として役立つ訳ではなく、勉強し続けていく「好奇心」が必要、と書きました。
大学でキャリアデザインの講義にお邪魔したとき、前回書いたこと(「キャリアデザインの講義で話してきたこと」)の他に、この点についても話してきました。
IPAの「IT人材白書2010」によると、「今後10年間に重要となるスキル」について、企業側と教育機関でギャップがあることが分かります。
教育機関では、テクノロジ系で、「プログラミングスキル」や「ネットワークに関する技術力」を重視していますが、企業側では「セキュリティに関する技術力」や「分野を横断する幅広い技術力」など、高度なスキルを重視していますね。
また、テクノロジ系以外の面を見ると、「業務や業務分析に関する知識・スキル」や、「プロジェクトマネジメント能力」など、企業側があげているものを、教育機関で身につけることは、なかなか難しいですよね。
つまり、教育機関で学んだことだけでは、この10年は活躍できない、と企業側では判断している、と言えると思います。
同白書で、企業が「情報系専攻の新卒学生に求める知識・経験」を見てみましょう。
「チームによるシステム開発経験」が第二位に来ていますが、たぶん、入社してから、受け入れ側も入った側も苦労しているのでしょう。
ただ、わたしは、この点も、大学で教えるのは難しい、と思います。
実際プロジェクトでは、様々なスキルやバックボーンを持った人間が、いろんな立場で参加してチームを形成します。年齢、所属会社もバラバラなケースが多いです。
大学で学生同士チームを組んでやれば、プロジェクトの大変さが解るとは思いますが、実戦で学ぶことに比べれば、ほんの触りでしか無いと思います。
最近は、PBLなど、こうした実践的な講義を始めている教育機関もあり、それはそれで、視野を押し広げてくれて、現実に一歩近づくので、良いことだと思いますが、その効果を過度に期待するのは誤りだと思います。
PBLでも、即戦力の人間が養成される訳ではないのです。
また、「今後10年間に重要となるスキル」では教育機関の半分しか重要視されていなかった「情報系分野の基礎理論と基礎知識の習得」が80%で第一位になっていることからも、企業側が即戦力の人材を求めている訳では無いことがはっきりと分かります。
情報系を専攻しているのですから、情報系分野の基礎理論と基礎知識を学習するのは当然です。
つまり、企業側は、「きちんと勉強していける人」、「入社してからもどんどん学習できる人」を求めているのです。
大学は学習していくための基礎を身につけるところだと思います。
大学で身につけられる「学習していくための基礎」は情報系分野に限りません。
せっかく、大学に入ってまで勉強するのですから、わたしは「情報系の基礎」だけでなく、様々なことに興味を持って、学習に取り組んで欲しいと思っています。