IT業界でやっていくのに必要な能力
「わたしは文系なのですが、IT業界、大丈夫でしょうか?」
前職で、新卒採用をやっていたとき、文系の学生から、よく、こんな風に聞かれました。
わたし自身は理系出身ですが、今の仕事が理系でないと出来ない、と感じたことはあまりありません。
わたしが最初に就職したのは、メーカ系のSIerで、配属された部署は、理系出身者ばかりでした。わたしが在籍していた10年間で、文系出身の社員は、女性ただ一人だったと思います。(実は、その女性こそ、現奥さんなのですが、わたしの結婚のナレソメはどうでもいいですね。)
彼女は、確かに相当、苦労してたと思います。
ただし、プログラミングができないとか、コンピュータの用語が理解できないとか、そういう意味ではありません。
科学技術計算が主な仕事だったその部署では、
- お客様と話をする上で、応力、振動数など、難解な言葉が出てきても慌てず、後で調べらることができる
- 空間座標、偏微分など、仕様書にふんだんに出てくる数式に嫌悪感を抱かず、理解する努力ができる
そんな能力が求められたのです。(最初から解っている訳がないので、調べたり、努力したりできるのが大事)
ITというのとはちょっと違いますね。
わたしも、理系出身といっても、ちんぷんかんぷんなことが多く、そのたび、高校や大学で使った教科書を引っ張り出したり、図書館で調べたりしながら、改めて、「あー、学生のとき、もっとまじめに勉強しておけば良かったなー」などと思ったりしていました。
理系出身者がほとんど、という部署にいたのは、後にも先にも、そこだけです。
その会社でも、メーカ系とはいえ、全体では、文系、理系が、半々、いや文系の方が多かったかも知れません。
「誰が、理系出身か」等、あまり、意識はしていなかったので、正確には分かりませんが。
科学技術計算は少し特殊な気もしますが、販売管理のシステムに携われば、受発注、在庫、出荷、債権債務、CRMシステムだっったら、マーケティング理論や営業活動、マイニングなど、やっぱり、何をするにしても、その分野での知識が必要になります。
そして、学生時代に、それらを学んでいなければ、そのシステム開発ができないか、というと、決してそんなことはありません。
逆に、学生時代の知識だけですぐ仕事ができるか、というと、そんなことは、ほとんど無く、何をするにしろ、学習は必要になります。
例えば、プログラム。
学生時代にやってきた人は、やっていない人と比べて、入社のとき、1歩リードしているとは思いますが、じゃあ、すぐにプログラマとして、活躍できるか、というと、それは難しい、と思います。
また、新人研修の間は、差があったとしても、1年もすれば、その差は、ほとんどなくなり、2年もすれば、社会人になってからの学習量や経験の違いによる方が大きくなるよう思います。
- 学生時代にやっていたことが自信になって、どんどん積極的に、学習に取り組めている人
- 学生のときに、少しカジっていたばかりに、変な癖やこだわりがあって苦労している人
- プログラミングの知識がなかったけど、素直に吸収できて成長している人(先輩からも可愛がられて、たくさん教えてもらえている)
いろんな人がいて、いろんなケースがあります。そう思うと、文系・理系はもちろん、情報系の学科かどうかも、あまり関係ないかも知れません。
たまに、情報処理試験の学習をしていて、
「2進数とか無理。文系なので」
と言う人もいますが、二進法は、小学生でもやってたりします。今の小・中学校教科書には載っていないようですが、20代の人は、中二のときに、「整数の表し方」(位取り記数法)でやっていると思います。「理系」でないと理解できないような、専門的な話じゃないんですね。
得意、不得意、好き、嫌いは人間なので、誰しもあると思います。
でも、仕事なので、得意なことばかり、好きなことばかり、という訳には行きません。
文系だからできない、と言っている人は、「ダメ」、「ムリ」と、自分で学習の壁を作ってしまっているように思います。
コンピュータは理系。そんなイメージを持ってしまっているのかも知れませんね。
好奇心旺盛な子供は、理系・文系、関係なく、みんなコンピュータに触りたがります。
そう、IT業界でやっていくのに必要な能力は、好奇心なのです。
そして、その好奇心を妨げ、自分の幅を狭めているのが、「コンピュータは理系」というイメージなのだと思います。先入観、といっても良いかも知れません。
先入観で壁を作らず、子供の頃のように好奇心をもって臨めば、苦手、と思っていることでも、すんなりと学習に取り組めるはずです。
理系・文系関係なく、学習に取り組む基礎は、学生時代に身につけているのですから。