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技術文章をクリアに書きたい方へ 「文章添削トレーニング」と類語事典 ~ あの人にお勧めしたい、この1冊

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オルタナティブブログ「事務局だより」のお題「あの人にオススメしたい、この1冊」。私のお勧めの1つ目はプログラミングが好きな方にお勧めのPlatform Leadershipだった。今回は文章書きの話。

加藤氏が紹介なさっている「理科系の作文技術」を紹介したかったのだが、出遅れたので、もう少し対象を広くして「複雑な事象を、誤解なく短時間で理解できるよう明確に書く」ときにお勧めのものにした。(私の師匠のお勧めでもある書籍と私がお勧めの類語辞典)

古郡 廷治 "文章添削トレーニング", ちくま新書

原則が8つ紹介されていて、いずれも非常に的確かつ具体的で、すぐに実行に移せるところがすぐれている。この手の本では「読み手を意識して、例示しながら書く」とか「一文ずつ書いた後に見直して明瞭でない部分を修正する」というような「わかるんだけど、どう実行に移せば?」というものが多い。本書にはそれが少ない。

8つの原則のうち、特に意識しやすく効果も上がりやすいと私が考えるのは次のとおり。

  • 短い文を書く。
  • 肯定・能動の文を書く。
  • 主題のある段落を書く。
  • 的確な語句を使って書く。

最後の項目の適切な単語の選択もかなり重要と考えている。ただ、これも「適切なものを選びなさい」と言われても、そもそもそのようなことをあまり考えていないから適切でないものを選んでしまうわけで、困る。

適切な語句を選べるようにするための方法の1つは気になるたびに国語辞典を引く習慣をつけることだろう。同じ辞典でも使い分けの書いてある類語辞典がお勧め。

類語辞典は角川書店のものが評判が高いようだが、使い分けが書いてあるものならば、この用途であれば問題ないと思う。たとえば講談社のものは語彙は多いが、全ての項目について使い分けが書いてあるわけではないので、今回紹介しているような用途には適していない。

私も学生の頃に買ったもの等、いくつか持っているが全般的に価格が高いのが難点。小学館のものは比較的安い部類に入るが、上のような使い方であればこれでも十分だと思う。たとえば、小学館の類語辞典には「考慮」を引くと、以下のように使い分けも書いてある。

208-04 考慮: 勘案/考察
・・・

【使い分け】 (1)「考慮」は一つのことを考える場合にも、複数の事柄を考え合わせる場合にも用いるが、「勘案」は複数の事柄を考え合わせる場合にしか使わない。(2)「考察」は、よく調べて明らかにするよう考える意。

この手の使い分けを数多く読んでいくうちに、自然と適切な単語を選べるようになると思う。

クリアな文章は驚くほどコミュニケーションを円滑にしてくれるだろう。

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