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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

製品品質の定義を広めに調査した論文

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複数の分野において製品品質(product quality)を調査した論文があり、今でも通用する部分が多く、示唆が深いと思ったので紹介します。スクラムフェス新潟の基調講演(5月9, 10日 詳細はこちら)を仰せつかっており、ここでも紹介します。

GARVIN, David A.; QUALITY, What Does "Product Quality" Really mean, Sloan management review, 1984, 25: 25-43.

論文は「製品の品質」という概念が様々な意味を持つことを説明しています。「品質」の定義は一様ではなく、学術的にも実務的にも長年の議論の対象となってきたことを述べています。

論文では製品の品質を定義する主要な5つの方法を報告しています。

  • 超越論的方法(Transcendental approach)
    品質は直感的な感覚で捉えることが多く、明確な定義は困難であるとしています。
  • 製品を起点とした方法
    品質を製品を対象として測定できる量として定義します。例えば、アイスクリームの乳脂肪分の量などがこれに当たります。
  • ユーザーを起点とした方法
    使用目的への適合性として、個々の消費者のニーズや好みを満たす度合いを品質と見なします
  • 製造を起点とした方法
    品質を仕様や基準への適合性として捉え、製造工程におけるエラーや欠陥の少なさを品質とみなします。例えば、自動車の組み立てラインにおける不良品の少なさです。
  • 価値を起点とした方法
    品質を価格に見合う価値として定義し、消費者が支払う意思のある価格とします。これと製品の性能や特性とのバランスで品質とします。

また、論文では品質の側面(特性)についても調査結果も報告しています。

  • 性能: 製品の主要な動作特性
  • 特徴: 製品の基本的な機能に追加された特性
  • 信頼性: 製品が一定期間内に故障しない確率
  • 適合性: 設計仕様や基準への適合度
  • 耐久性: 製品の寿命
  • サービス性: 修理やメンテナンスの容易さ、スピード、正確さ
  • デザイン性: 製品の外観や感触
  • 知覚品質: ブランドイメージや評判など、消費者が認識する品質

また、論文では、これらの異なる品質の定義や側面が、状況や関係者によって重要視される点が異なることを説明しています。そのため、品質管理やマーケティングにおいてその点を考慮すべきと指摘しています。特に、品質とコストの関係は複雑であり、高品質な製品は高価格になる傾向がある一方で、不良の減少や効率化によってコスト削減も可能になるとし、その関係はすぐには解決できないとしています。高品質な製品は顧客満足度を高め、市場シェアの拡大や収益性の向上に繋がる可能性を示しています。

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