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プログラミングが大好きな方へ Platform Leadership ~ あの人にお勧めしたい1冊

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これまでお題に乗っかろうとすると締切りを過ぎていることが多かったオルタナティブブログ「事務局だより」のお題。今回は間に合いそうだ。お題は「あの人にオススメしたい、この1冊」。

Annabelle Gawer and Michael A. Cusumano: "Platform Leadership," Harvard Business School Press (2002)

具体的なプログラミングのことは書いていないが、プログラミングが大好きな方に読んでいただきたい。プログラミング、設計が大好きでご自身のソースコードから新たな価値を生み出したい方、ずっとコーディングやレビューをやっていきたいという方にお勧めしたい。ソースコードやソフトウェアアーキテクチャの美しさを磨くための時間やコストはそれらの外側をも設計、実装して生み出さなければならないことが多いからだ。

同タイトル「プラットフォームリーダシップ」で和訳されたものもある。原典は英語だが技術文書なので解釈に苦しむ部分はないだろう。原典のほうが少し安いので、和訳のクオリティと比較しつつどちらを読むか決めてみるのも1つの手だろう。

対象としている話題は、少し古いが、インテル、マイクロソフト、シスコシステムズ、パーム、NTTドコモ、Linuxを題材として他社(サードパーティ)が参入しやすいプラットフォームを作り、他社、他社同士でのイノベーションを誘発するための仕組みづくりや施策を事例で紹介している。

この本をプログラマに勧める理由は、過去にプログラミングが大好きと言った私に著者の1人のM. Cusumano氏本人が勧めてくれたからだ。「本当にプログラミングが好きならば、プログラムだけでなくそれを取り巻く環境も設計し、実装しなければならない」と言われた。まだ出版されていなかったころにこの本(正確には博士論文のテーマ)を勧めてくれた(ありていに書くと、このエントリは受け売りということになる)。Cusumano氏が奈良先端科学技術大学院大学で講演し、当時、博士課程の学生だった私が最寄り駅までの案内中に交わした雑談の中での話だ。

当時はこのことがよく理解できなかったが、2003年にこの本とその言葉をふと思い出した際に購入し、その意図が理解できたことを覚えている。

この本はもう1人の著者のAnnabelle Gawer氏のマサチューセッツ工科大学での博士論文「The Organization of Platform Leadership: An Empirical Investigation of Intel’s Management Processes Aimed at Fostering Complementary Innovation by Third Parties (2000年)がベースになっている。博士論文ではインテルのことが中心に記されており、書籍にはそれ以外にも企業のプラットフォームについても言及されている。

amazonで中身をみることもできるし、博士論文はPDFとしてMITの電子図書館からダウンロードできる。

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