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新型コロナ: イベントを補償なしで中止するために

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※2020/7/4重要な追記。トップページに案内されているとおり、オルタナティブブログ全体でコメント機能が無効化/非表示となりました。新たなコメント、過去コメントについては「はてなブログ」を参照してください。

※2020/4/2追記。「新型コロナ: お詫びとお願い」という記事を書きました。(こちらにもリンクを追加します)

■検査原理主義
今回も、前振りから。
新型コロナの感染者が発見されたクルーズ船「グランド・プリンセス」はオークランド港に入港し、カリフォルニア住民はトラビス空軍基地に隔離されていましたが、San Francisco Chronicle紙はこのように報じました

"Even as positive coronavirus test results came back and other tests had not been returned, Gov. Gavin Newsom approved releasing Grand Princess cruise passengers from California back to their homes over the weekend, days before their 14-day quarantines at Travis Air Force Base were scheduled to end, a source close to the situation told The Chronicle."

「コロナウイルスで陽性の結果が返されて他の検査結果が戻っていないとしても、グランド・プリンセス号の乗客は14日間の検疫期間が終わる前の週末に自宅に戻ることがギャビン・ニューサム知事によって許可された、と情報筋により本紙に伝えられました。」

症状がある人は入院しているのかもしれませんが、症状が出ていない人について、そこまで厳密に隔離しようとはしなくなっているようです。「下船前に全員検査する」と言っていたペンス副大統領は、今ではこう言っています

"If you don't have symptoms, don't do a test. It is another way that the American people can make sure that we are preserving the resources that our healthcare workers need to administer and support those who are dealing with the #coronavirus."

症状がなければ検査しないでください。それが、アメリカ国民がコロナウイルスに対処している医療従事者に必要な管理と支援のリソースの保護を確実にするための一つの手段です。」

イギリスのボリス・ジョンソン首相は、「自宅にいて、命を救う人々を守ろう」という、ツイートをRTしていました。

大量に検査を実施しているドイツは、比較的死者数が少ないと言われてきましたが、この記事によれば「Keine Tests bei Verstorbenen(検査されない死亡者)」という項目で、次のように記載されています。

"Eine andere Erklärung könnte italienischen Experten zufolge sein, dass in Deutschland im Allgemeinen keine Post-mortem-Tests vorgenommen werden. Wenn ein Mensch demnach in Quarantäne sterbe, ohne in ein Krankenhaus eingeliefert worden zu sein, tauche er mit hoher Wahrscheinlichkeit in der Statistik der Corona-Todesfälle gar nicht auf, ..."

「イタリアの専門家によれば、一般的にドイツでは死後の検査は行われません。このため、入院せずに検疫で死亡した場合は、コロナウイルスの統計に含まれることはほとんどありません...」

ドイツは人口の76%が60歳未満ですが、3/23付けの資料では感染者の82%を占めています。ドイツではスクリーニング(事前の選抜)をせずに大量の検査をしているそうですが(3/15時点で16.7万件)、若者の方が積極的に検査しているということではないでしょうか。そもそも大量検査は偽陽性の人数も増やします。3/15時点で少なくとも1%の偽陽性がいるとすれば1670人で、この日までの感染者数(3795人)に比べて無視できる人数とは言えません。
ドイツは感染者数に対する死者数が比較的少なく(3/24現在で感染者29056人、死亡者123人、単純計算で致死率0.4%)、大量検査と医療制度によって致死率が抑えられているかのように見えたのですが、高齢者を検査せず、死因すら調べもせず、分母なる感染者数には感染していない偽陽性が大量に混じっている、これでは安心できません。
韓国も大量検査を実施している国ですが、それによって感染を抑え込めているわけではありません。
※2020/3/28追記。韓国の "Active Cases" はピークアウトしていました→「新型コロナ: 日本が韓国に大敗北する日」参照。
ただし、大量検査によって偽陽性も含め感染者数が割り増されることには効用があることにも気づきました。それは「感染者数が水増しされることで社会に対する規制を正当化できる」ということです。
現在、ドイツも韓国も社会活動を大幅に規制しています。(在デュッセルドルフ日本国総領事館「ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州内における新型コロナ・ウィルス感染状況について」、Yahoo!「感染対策に「緩い日本」! 「キツイ韓国」! 日本は自主判断、韓国は半ば強制!」)
日本で感染者がそれほど増えなかったのは、感染者数が少ないころからイベントの自粛や一斉休校を要請したからだと書きましたが、今では世界の方がより強く規制されています。三連休に人出が多かったとか、大規模イベントが開催されたとか、聖火に何万人も集まったという「気の緩み」を感じる報道がありましたが、今後の感染の広がりが懸念されます。
検査原理主義の人たちは、これからは「数が水増しされなくて危険性が認知されなかった、と言いたかったんだ」と言い訳してください。

■イベントと補償
さて、イベントの自粛が"要請"されているのに何も補償がない、本気でやめてほしければ政府が補償しろ、という意見があちこちで聞かれます。

「ば~~~~っかじゃねぇの!?」(©ハルパゴス)

どこまで補償するのでしょうか。払い戻すチケット代でしょうか、使わなくなった会場費や機材費、出演料を補償するのでしょうか。用意した物販も補償するのでしょうか。イベントや演劇がすべて、入場料だけのビジネスとは限りません。そこに宣伝のための展示や、さらにモノを売る会社があったかもしれません。コミケなんて誰にどういう補償をするのでしょう。印刷した同人誌を買い上げるのでしょうか。自粛要請でまっさきに中止されたPerfumeのライブなんて、そのために"遠征"して宿泊予約していた人もいたでしょう。運営は補償されるけれど、ムダになった宿泊費はどうするんでしょう。
もし、そういう中止した場合に関連するあらゆる費用がすべて補償されるなら、一番やめたいと思っているのは東京オリンピックでしょう。収入の73%を占める放送権料がなければIOCは破綻するかもしれません。その巨額な損失を日本の税金で補償しろというのでしょうか。大きな経済ダメージを受けて税収が減り、医療費の増大が予想され、それが何年続くかもわからないというのに。
「イベントをやめたら破綻する、だからリスクはあってもやめられない」
わかります。現状は法で強制されていないのだから、私が何か企画していたとしても破産すると分かってやめる判断は難しいでしょう。まして多くの人を巻き込んで破綻することなど、容易なことではありません。でも、それは自らのリスクを回避するために社会にリスクを負わせているということです。すでに観光や交通など、新型コロナによって致命的な打撃を受けている業界はあります。そんな中、「イベントを補償しない政府が悪い」と現実的でない非難を浴びせても何も解決しません。頭を冷やしましょう。

■補償なしでイベントを中止させるために
相次ぐキャンセルでイベント(ライブや演劇)が存続の危機にあります。せめてチケット代の払い戻しをしなくてすむようにしましょう。具体的には、今後企画するイベントのチケットは「新型コロナにより自粛の要請が解除されなければ払い戻しなしで中止することがあります」という条件を追加しましょう。もちろん、購入時にはハッキリわかるように表示してください。ゴールデンウィークに予定されているコミケ98はとっくに登録通知が届いているようですが、今からでも規約を変更して、それが嫌だという参加者には"今のうちに"払い戻して、別の参加者を募りましょう。中止になったらコミケ存続の危機に陥るそうです。中止覚悟で申し込みを維持するのもいいでしょう。(消費者庁に文句を言われるでしょうか。お願いです、目をつぶってください)
今年イベントを企画している皆さん、イベントの自粛要請がそんなに早く解除される可能性はないと思います。むしろ、この状況で解除するようなことがあれば安倍首相の資質を疑います。感染が広がれば、いずれ他国のように中止が強制される可能性すらあります。もちろん補償なしで。わずかな望みをつないで企画するのであれば、自粛要請が続く中で開催を強行する、という状況にならないようにしてください。
ニューヨークでは非常事態宣言が出た後も、何日かはブロードウェイの上演が続けられていました。それが理由であるとは分かりませんが、今、アメリカで急増する感染者数(3/24現在での46116人)の半数はニューヨーク州が占めています(同23230人)。

■自粛要請はいつ解除されるか
東京オリンピックはほぼ延期で確定しているようですが、会場問題などを解決すれば1~2年先に開催できると信じている人が多いのは不思議でなりません。インフルエンザの時期は過ぎたのに感染は勢いを強めて広がり続けています。ドイツや韓国が示している通り、大量に検査したところで新型コロナは収束しません。世界の中で収束に向かったのは強権で社会生活を大幅に規制した中国だけです。感染者数があまり増えていないのは(日本以外では)早くから規制をかけたシンガポールや台湾くらいですが、それでも患者が増加するのを避けられているわけではありません。
社会生活を規制する以外に感染を防ぐ方法は見つかっていないのです。今、判明している感染者数は38万人"しか"いません。世界人口のたった1万分の1以下です。感染を防止するワクチンが実用化されるまでに1年以上かかると言われていますし、そもそもできるという保証はありません。感染のペースを抑えたとしても止められなければ感染が広がり続けるのです。治療薬があっても治療が追い付かなければ感染を防ぐしかありません。そして感染のペースを抑えられたとしても、何か月、あるいは何年もかけて広がり続けるということです。NHKスペシャルによれば、「日本は運がよかった」だけで、いつかは感染爆発が起きます。もともと医者の過重労働によって支えられていた日本の保険医療は破綻するでしょう。
また、中国でも武漢封鎖からはじめて増加が減少に転じるまでに2週間、2桁増になるまでには1カ月半かかっています。中国ほどの規制がかけられない国ではもっと時間がかかるでしょう。対策の見通しが分かってから実際に収束(あるいは終息)するまでに何か月もかかるでしょうし、医療制度や経済を立て直すのにも時間がかかるでしょう。
新型コロナ以前の日常が取り戻せるのは当分先のことです。パラリンピックの出場者は感染が命にかかわるリスクになるそうです(そうでなくても致死率は低くありません)。どうしてこんな状態で自粛要請が解除されると期待できるのでしょうか。社会生活を規制したままオリンピックだけを開催するのでしょうか。

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