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Re: ドロップ・キャッチ・システム構築に関する問い合わせ

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今年はドメインに関するアドベントカレンダーでもやってみるか、と思っていたのですが、オルタナティブブログのシステムが変更されたにも関わらず、うっかり初日の昨日分を旧システムに投稿してしまい、公開できなかったことに今頃気付きました。描き溜めてあったわけでもないので、また来年にでも(気が向いたら)やろうと思います。ただ、一時期、Yahoo!知恵袋にドメインについて書いていたせいか、今年はドメインに関して見知らぬ人からの問い合わせが2件あり(*)、それについては、今年のブログとして書き残しておくことにします。3カ月ごとにアニメ情報を出すだけになってしまうのもアレですし。
*単純な「売ってくれ」「買ってくれ」という問い合わせを除く。

今回はその1件目で、今年の春ごろに「ドロップ・キャッチ」のシステムを作ってくれないか、という問い合わせがありました。ドロップキャッチとは、ドメインが削除(ドロップ)される瞬間を狙ってキャッチ(再登録)するというものです。gTLD(.com/.net/.org など)以外に、日本にも .jp を対象にしたドロップキャッチサービスがあります(お名前.comもやっています)。こうしたサービスを「バックオーダー」と呼ぶこともありますが、バックオーダーすれば再登録できるわけではなく、良質のドメインについては業者どうしの競争になります。かつて、ドメイン業界がおとなしかった頃は、私自身が自作のソフトを作ってそれなりに成功していたのですが、今は専門業者が専用のシステムを作っているので、太刀打ちできません。以下は、その方の問い合わせに対するお返事です。

<非公開>

ご連絡ありがとうございます。
おそらく、仕事としてお受けすることはないと思いますが、せっかくドメインのバックオーダー(ドロップキャッチ)に興味をお持ちになられたようですので、知る限りの情報をお答えします。

ドメインのバックオーダーに必要なことは、(当たり前ですが)ドメインが削除される瞬間を狙って登録することだけです。gTLD は、レジストラレベルでドメインが削除されたてから35日後に、.jp は失効してから1カ月後の月初に削除されます。

強いプログラムを作るためには自らレジストラ(登録業者)になり、レジストリ(卸元)のシステムをアクセスできるようにします。たとえば、.com/.net の場合は VeriSign が、.jp の場合はJPRS がレジストリです。当然レジストリになるには登録費用などが必要になると思います。かなり前に聞いた話ですが、1つのレジストラに許される同時アクセス数は制限されているようなので、より強いシステムを作るために複数のレジストラを作る業者もいます。eNom はバックオーダー用に100以上の兄弟レジストラ(?)を作ったようです。
※こうしたレジストリとの契約(諸費用)や技術的な詳細は、私には経験がありません。

正直なところ、バックオーダーサービスだけでビジネスを運営するのはリスクが高いと思います。ほとんどの業者はドメイン登録を運営しつつ、バックオーダーサービスを提供しています(国内外とも)。このようにレジストリとのアクセスが確保できれば、プログラムは難しくないと思います。(指定されたプロトコルにしたがって、ドメインの登録コマンドを発行するだけのはずなので)

ちなみに eNom は"リセラー"のために自らドメイン登録用のAPI を提供していますが、(少なくとも7年ほど前には)ドメイン登録 API の呼び出しに「ドメインが登録できる状態であるか確認すること」という条件があったので、ドロップキャッチには向きません。
(ドロップキャッチの集中する時間帯は、空きが確認された次の瞬間には登録されているので、連続的に登録コマンドを発行しなければなりません)
eNom もそうですが、今はどこかのバックオーダーサービスと契約しているレジストラも多いので、ただのユーザーがバックオーダーのために既存のレジストラを使うことは難しいのではないかと思います。

ただし競争的なものを作るのでないなら、レジストラの登録機能を呼び出すバックオーダーサービスを作ることもできると思います。(かつて、ExpireFish という名前のサービスがありました)

なお、gTLD については 2005年頃に「レジストリがバックオーダーサービスを提供している場合、自社の保有ドメインが対象ならばレジストリから削除せずに登録名義だけを移す(→他社はキャッチできない)」ということが一般化し、今ではドロップキャッチで良質のドメインを確保することは難しくなっています。
.jp については、バックオーダーを提供している大手レジストラのお名前.comが「レジストリから削除せずに名義を移す」ことを信義上の問題があるとして実行していないので、他社にもキャッチの可能性がある状態が続いています。

私は、2002年頃にはバックオーダーのプログラムを自作していました。これは、通常のレジストラ(ドメイン登録業者)のウェブサイトを操作して自動的にドメインを登録するプログラムです。今は、レジストリレベルで"回復猶予期間"が設けられていますが、当時はレジストラからドメインが削除されたら再登録できました。この削除される時間がレジストラごとに異なっており、Network Solutions 以外については詳しく調べていた組織・人はほとんどいませんでした。私は大量のドメインについて削除される時間を追跡調査していましたので(専用のプログラムを作りました)、比較的良質のドメインを登録できる機会がありました。(※注 具体的なドメイン名については略します)
半年ほど経つと専門の業者が真似するようになって太刀打ちできなくなりました。それ以降は、先の URL に挙げたドロップキャッチ業者を使うようになりました。今ではほとんど手を引いた状態で、最近の動向については、あまり追いかけていません。

このようなところです。
一部、伝聞や推測を含んでいます。ご了承ください。

では、頑張ってください。

大野

※この連絡の後、お返事はありませんでした。

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