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gTLD 別ドメイン登録数の推移(2001~2013年)

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少し前に「新たに登場した gTLD たち」というエントリで、新gTLD(generic Top Level Domain)の運用が続々始まっていることを取り上げました。日本時間の今日になって、ICANN の月間報告で昨年12月までの gTLD の登録数が公開されましたので、こちらをまとめてみます。実は、主要な gTLD については、4年ほど前に「キラードメイン×ブランディング~ドメイン登録数の推移とTLD」というエントリで取り上げたのですが、今回は ICANN の報告書にあるすべての gTLD を対象にしました。

■gTLD別ドメイン登録数の推移

以下の表は、2001年以降のgTLDごとのドメイン登録を各年の12月の数字です。以前のエントリにも書いた通り、かつて gTLD と言えば、(古くからある).com/.net/.org のことであり、.info 以降はいわゆる“ドメインバブル”崩壊後に登場したものです。

Gtldnumbers

これをグラフにします。

Gtldchart1

このままでは .com 以外がわかりにくいので、.com を除いたグラフも示します。

Gtldchart2

上記の表において、全 gTLD ドメイン登録に占める .com ドメインの数は、2001年12月の76%から、2004年12月には71.6%まで減りましたが、その後再び増え続け2013年12月では75.6%にまで戻っています(増減の大きな要因は .info です)。.com/.net/.org ドメインは、今なお全体の 92.8% をカバーしています。

■TLD の認知

ドメインは、インターネット上の住所(URL)を特定するための基礎となるものです。インターネット関連ビジネスの急成長期が「ドットコムバブル」と呼ばれたこともあるように、「.com」がその王座に君臨しています(".com is the king")。一方、特定の国に紐づけられた ccTLD(country code TLD)の中にも人気を博しているものはあり、DENIC によれば .de は .net を上回る1572万以上の登録数を誇ります。.tv(ツバル)のように、本来の国を離れた意味での利用を普及させることに成功した ccTLD もあります。

また、近年では、URL短縮サービスなどで2文字のccTLD(カントリーコードTLD)が重宝されることもあり、以前に比べて gTLD 以外のドメインが大手のサービスに使われることも見られるようになりました。Google は goo.gl(グリーンランド)、Twitter は t.co(コロンビア)というドメインを URL短縮に使っています。マイクロソフトは、1drv.ms や aka.ms、ch9.ms のように .ms(モントセラト)ドメインを使っていますし、WOWOW は放送衛星(BS)にちなんで wowow.bs(バハマ)というドメインを使っています。

しかし、これらは例外的なものです。上記の表や図から、古い gTLD、とくに .com の登録数が圧倒的に多いことがわかります。.com の2013年の年間純増数(5,853,412)は、.com/.net/.org/.info を除く他の gTLD の“すべて”の登録数(5,136,230)よりも多いのです。当時、新gTLDを登場させたのは、「古い gTLD ではまともな名前が登録できない」「TLD は不足している」という声を受けたためですが、それでも人々は古い gTLD(とくに .com)で登録したがり、他の gTLD は、あまり見向きされていない実情です。

新gTLD のうち .info の登録数が飛び抜けて多いのは、格安の登録キャンペーンを何度か行ったためです。2004年には“無料”で登録できるキャンペーンも行われました。それだけに登録されても実際に使われることは少なく、この2年間は登録数が激減しています。なお、初年度に限って登録費を無料に近いほど抑えるというキャンペーンは他の TLD でも行われています。

なりふり構わず登録数を増やした .info、.com の代替になりそこないつつ早期の運用で登録数を確保した .biz 以外で比較的成功したと言えるのは、モバイル向けの .mobi とアダルト業界向けの .xxx です。.mobi は登録費が安くない(.comなどの、およそ倍)にもかかわらず、登録数が120万件を超えています。.xxx は登録数は12万程度ですが、登録費が100ドル前後もします(安いgTLDの10倍)。.aero や .museum のように、登録資格が必要なものは別にしても、新たな gTLD をドメイン(インターネットの住所)として認知させることは、たやすいものではありません。

■新gTLD時代は来るか

新たに登場した gTLD たち」で紹介した通り、前述の“旧”新gTLDとは別の仕組みで、昨年末頃から“新たな”新 gTLD の運用が次々と始まっています。ICANN によれば、今日時点で204もの新gTLDがルートゾーンに追加されており、これには .ryukyu や .yokohama なども含まれています。.moe は、どこかよその国の単語なのかと思いましたが、http://whois.nic.moe/ を見る限り、間違いなく「萌え」のようです。

.mobi のことを考えれば成功の可能性はまったくないとも断定しにくいですし、そもそも新ビジネスに対してダメだということは、うまくいくと予想するより気楽なことではあります。Google という大企業が「.みんな」の運用をはじめることがニュースになったり、.nagoya を SKE48 というアイドルグループでプロモーションしたりすることで、当初は興味を持つ人もいるかもしれません。しかし、過去のデータを見る限り、よほど魅力的でユニークなプランを持っているのでなければ、ほとんどの gTLD にとって継続的な成功は難しいように思えてなりません。

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