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「映画離れ」の“実体”

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少し前に「「映画離れ」は「映画そのもの離れ」と「映画館離れ」」という記事が話題になっていました。その記事には次のように書かれていました。

それによれば「映画離れ」は実体として、「映画そのものから距離を置く動き(映画そのもの離れ)」と「映画館離れ」の2つの要素で成り立っていると判断できる。

その記事にある「映画は見ない」という人の割合を示す4年間の調査結果を示すグラフ(下記)を見ると、たしかに映画を観ない人が増えているようです。しかし、このグラフを見てわかるのは最新の調査でも「88.3%の人は何らかの形で映画を観ている」ということです。これは「映画離れが進んでいる」と言えるほど少ない割合でしょうか。むしろ「国民の約9割が映画を観ているなら、映画離れは進んでいない」と感じるのが普通の感覚のように思います。

2014030900033241roupeiro0013view元記事から引用。

この調査は「ライフメディアのリサーチバンク」というところで行われたもので、情報元は「映画に関する調査。4DXで上映される映画、77%が鑑賞意向をもつ。」というページです。ライフメディアでは、アンケートに答えることでポイントを受け取れる(最終的に換金できる)仕組みを提供しているようで、そもそも回答者は無作為抽出された人々ではありません。このようなアンケートがまったく無意味だとは言いませんが、実際に得られている結果を踏まえても、「映画離れ」を示す根拠として引用できるようなものではないでしょう。

さて、映画館への入場者や興行収入に限定すれば「日本映画製作者連盟」というところが過去のデータを公開しています。ここから入場者数と配収・興収をグラフ化すると次のようになります。なお、映画の収入について、1999年までは配収(配給収入、映画会社の収入)、2000年以降は興収(興行収入、映画の総売上)と異なる基準が使われているので、この年で連続性が途切れています。

Photo

ここからわかることは、「1960年代に比べれば映画館の入場者は減っているけれど、それ以降はほぼ横ばい」ということです。近年、入場者の変動は、どれだけヒット作が生まれているかという方が大きな要因となっているでしょう。もちろん、2007年に登場した「NO MORE 映画泥棒」の映像が影響を与えているという傾向は見られません。

さて、60年代に比べて入場者が減った理由は言うまでもありません。「政府統計の総合窓口」で「主要耐久消費財等の普及率(一般世帯)」を調べて、「カラーテレビ普及率」を重ね合わせてみます。

Photo_2

カラーテレビの世帯普及率は最新の調査でも99.3%に及ぶのですから、「テレビ離れ」などというのも、また“空想の産物”と考えてよいでしょう。結局のところ、「映画離れ」という言葉の正体とは、そのような絵空事に過ぎないのです。

※注 タイトルは誤字ではありません。

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