安倍政権は何を撤回したのか
オリンピックの東京開催が決まったことは喜ばしいですし、福島原子力発電所についてことさら不安を煽りたいとも思いません。むしろオリンピック成功のためには状況の改善は避けられないわけで、税金の投入を含め、財務的にひっ迫しているとしか思えない東京電力への依存度を下げられるだろうという予想もできます。
そういう状況の改善が見込まれるという意味でも好ましいことだと考えているのですが、オリンピック誘致の最終プレゼンテーションで、安倍首相が福島原子力発電所の事故について自信満々に「状況は制御できている(the situation is under control)」と語ったと伝えられていることには疑問を感じずにはいられません。
福島原発の事故は、発生当初から困難な状況が続き、9か月後にやって民主党・野田政権が「収束」を宣言しました。このときの会見のようすは首相官邸の公式サイトで見ることができます。このとき、「事故は片付きました」と言っているわけではありません。実際、野田首相は以下のように発言しています。
これによりましてステップ2は完了いたしますが、原発事故との戦いが全て終わるわけではありません。これから原子炉については、事態の安定を目指す段階から、廃炉に向けた段階へと移行します。
その後、自民党が政権を奪還しました。そして、今年の3月に、安倍首相は野田政権の収束宣言を撤回しています。産経新聞の報道では、次のように伝えられています。
「地域の話を聞けば政府として収束といえる状況にない。安倍政権として収束という言葉を使わない」
東京電力が事故の状況に水を差しているという報道もありますが、そもそも安倍首相自身が半年前には「収束してない」という発言をしていたわけで、この発言以降に特別な進展があったのでしょうか(あるいは゛撤回”は撤回されているのでしょうか)。それとも「収束はしていないが、制御はできている」と言っているのでしょうか。ただ民主党の宣言に反対したかっただけなのでしょうか。東京都のプレゼンテーションは中継もされていたようですが(私は見ていませんでした)、現場の記者で、この点を質問した人はいなかったのでしょうか。どうにもすっきりしません。