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2012年秋アニメの私的レビュー

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なんだかタイミングを逸しすぎた気がしないでもないですが、夏アニメに続いて、秋アニメについての個人的な評価をまとめます。思いおこせば、4作品(再放送の「STAR DRIVER」も含むと5作品)ものアニメが1話からキスシーンがあるという始まり方をした秋アニメでしたが(←どうでもいい)、全体的には「惜しい」感じのするものが多かったという印象です。以下、できるだけ抑えているつもりですが、その性質上、多少のネタバレを含みます。(当然、見てない作品は選考外です。デュフフ)

■作品賞「ソードアート・オンライン」
「ソードアート・オンライン」は、ナーヴギアと呼ばれる装置で実現される完全な仮想空間に構築されたゲームの名前であり、その仮想空間が舞台です。実は前半(アインクラッド編)の締めくくりには腑に落ちない点があるのですが、それでも全体としては大変面白く楽しめました。ネタバレにならないよう紹介するのは難しいのですが、とくに初期の話では伏線の敷き方が絶妙だと感じました。さまざまなドラマで伏線(後の展開のためにほのめかされる事柄)が使われますが、よくできた伏線には必ずしもドラマの中だけで収まっていないものがあります。(ある映画のネタバレに近いのですが)たとえばクイズ番組が設定されて「オーストラリアの首都はどこでしょう?」「シドニー!」「正解です、おめでとう!」という流れがあるとします。実際の首都はキャンベラなので視聴者は「クイズ番組そのものが偽物」と気づくかもしれませんが、うまく気づかなければ最後に「してやられた」という印象を持てます(伏線だと思っていたら、たんに設定を間違っていただけというケースもありますが)。「ソードアート・オンライン」の場合は、舞台が仮想空間なので、どのようなその仮想空間で設定になっているかということが必ずしも判明しているわけではありません。そのため、どんなオチが用意されているのか予想するのは難しいのですが、それでも「なるほど、そういう設定はあるだろうな」と思わせる、その作り方が見事でした。

■主演女性キャラ賞「水谷雫(となりの怪物くん)」
「となりの怪物くん」は、冷淡で友達もいない高校生が恋をするというラブコメです。雫は、頭がよくて、冷たい口調ではあるんですけど、そういう設定にありがちな“ツンデレ”ではありません。好きだと思ったら、それを隠さず口にする。実に素直な性格で、よくある「好きだけど、照れて気持ちをうまく伝えられない」というパターンとは一線を画しています。「となりの怪物くん」の登場人物は、その形はどうであれ、みな素直な性格で、まさに素直な気持ちのぶつけ合いでドラマを作っているという感じです。ただ、残念ながらアニメそのものは中途半端に締めくくられてしまった感じです。

■主演男性キャラ賞「富樫勇太(中二病でも恋がしたい!)」
「となりの怪物くん」の吉田春と迷ったのですが、吉田春は自分の身の回りにいたら、ただの迷惑なヤツになりそうな気がするので、「中二病でも恋がしたい!」の主役、富樫勇太を選びました(「ソードアート・オンライン」のキリトは前回選んだので外しました)。「中二病でも恋がしたい!」は、作品としても好きなアニメです。当初は「京都アニメーションは、もう一度“けいおん!”を作りたいのか?」と思うような話でしたが、結果としてはそのような日常モノではありませんでした。原作からは大幅に変更されているようですが、映像もストーリーもよく、非常にアニメらしいアニメだったと思います。富樫勇太は中二病を“卒業”した高校生で、ヒロイン(小鳥遊六花)を思いやり、自身の心も揺れるのですが、福山潤さんの好演もあり、非常に魅力的でした。

■助演女性キャラ賞「夏目あさ子(となりの怪物くん)」
「中二病でも恋がしたい!」の丹生谷森夏や「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のバルメと迷いました。夏目あさ子は、1話で「ゲロを吐く」という大変インパクトのあるシーンがあり単発で終わる脇役かと思っていました。しかし、その後も、さまざまな場面でヒロインの水谷雫を応援する形で登場し、そのたびに“純”な性格がにじみでていて好感のもてるキャラでした。

■助演男性キャラ賞「エレクパイル・デュカキス(イクシオンサーガDT)」
「イクシオンサーガDT」は、「これで2クールもやるのか」と思わざるを得ない突拍子もないアニメなのですが(どこが突拍子もないかを書くのは控えます)、この「エレク様」はとてもかわいそうなキャラです(なぜ、かわいそうなのかを書くのは控えます)。エレク様は、助演じゃなく主演じゃないかという話もありそうで(wikipedia でフルネームを調べたら“もう1人の主人公”と書かれていました^_^;)、その意味では「PSYCHO-PASS」の狡噛慎也もいい役どころだと思うのですが、今回はエレク様を選びました。どうしてディオ(ジョジョの奇妙な冒険)じゃないんだと言われそうな気もしますが、ほかにも「となりの怪物くん」のささやん、「BTOOOM!」の平さんなど魅力的な脇役キャラが多かったです。「さくら荘のペットな彼女」の三鷹仁も、いいキャラなのですが、後半の展開に期待します。

■非人間キャラ賞「メイドちゃん(さくら荘のペットな彼女)」
この名目で、かつて「ムルムル(未来日記)」を選んだことを思うと、「巴衛(神様はじめました)」も候補にしてよいかもしれませんが、ちょっと違和感があるので、「さくら荘のペットな彼女」の天才プログラマー、赤坂龍之介が開発した2次元キャラであるメイドちゃんにしました。コンピューター上の仮想キャラという意味では、「ソードアート・オンライン」のユイもよかったですね。

■女性声優賞「種崎敦美(夏目あさ子、となりの怪物くん)」
ここで主演じゃない役というのもどうかと思ったのですが、前述の夏目あさ子は、キャラもよかったのですが、声もピッタリでした。割と新人の方のようですが、特徴的な声ですし、今後も活躍されるのではないかと期待しています。新人に近い方としては「新世界より」で主人公の渡辺早季を演じている種田梨沙さんもよかったと思います。ちなみに、「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」の主人公、姫小路秋子を演じた木戸衣吹さんは、なんと14歳(誕生日を過ぎた今は15歳)です。セルアニメの販売にレーティングがかかっているわけではないのですが、どうみても性的な演出を含むオープニングを含め、この役を中学生にやらせて大丈夫だったんだろうかと余計な心配をしてしまいます。個人的には「さくら荘のペットな彼女」の椎名ましろ、「好きっていいなよ。」の橘めい、「ガールズ&パンツァー」の武部沙織など多数の役を演じ、「氷菓」のラジオでもパーソナリティを担当していた茅野愛衣さんの活躍っぷりがハンパないとも思ったのですが、キャラのインパクトと、その声の印象がよかったので種崎敦美さんを選びました。

■男性声優賞「福山潤(富樫勇太、中二病でも恋がしたい!)(マリアン、イクシオンサーガDT)」
福山潤さんはベテランの声優で、これまでに多くの主役を演じられているのですが、この富樫勇太の(元)中二病という設定で出てくる“ダークフレイムマスター”を演じる声は、「コードギアス 反逆のルルーシュ」のルルーシュ・ランペルージを彷彿とさせます(もちろん本人)。「コードギアス」も好きなアニメなのですが、その印象が「中二病で恋がしたい!」での中二病設定に“再利用”されてしまったかのようでした。「イクシオンサーガDT」のヒロイン(?)のひとりであるマリアンも設定からして凄い訳でした。「コードギアス」のc.c.とルルーシュを“足して2で割ったキャラ”とも言われているようです。「さくら荘のペットな彼女」で神田空太を演じる松岡禎丞さんは、「ソードアート・オンライン」のキリトと違ったコミカルな喋りがよかったですし、さまざまなアニメでの活躍っぷりという意味では子安武人さんも大活躍だったのですが、富樫勇太の中二病が実にすばらしく表現されていたという点で福山潤さんを選びました。

■コマーシャル賞「神様はじめました」
「神様はじめました」の CM は、アニメよりも漫画を売り込むもので、お笑いタレントの AMEMIYA さんがギターを弾きながら、アニメよりも先のストーリーを歌いながらバラしてしまうというものでした。twitter でもさんざん「ネタバレやめろ!」と言われていましたが、他のアニメCMにないインパクトがあったのはたしかです。

■主題歌賞「割れたリンゴ/渡辺早季(cv種田梨沙、「新世界より」エンディング曲)」
「新世界より」は、人々が“超能力”を使えるようになった1000年後の世界が舞台です。原作は2008年の日本SF大賞を受賞したそうですが、ユニークな設定でアニメそのものも話も映像も面白いものです。2クール続くもので、まだ前半が終わったところです。このアニメはオープニングらしいオープニングがないこともあるのか、モノトーンを中心としたエンディングは他のアニメに比べてよく作りこまれています。その映像にとてもマッチしているのが、この曲で、難しそうなコードで進むアコースティックギターのイントロから引き込まれます。他にも、「さくら荘のペットな彼女」のオープニング曲(「君が夢を連れてきた(ペットな彼女たち(茅野愛衣、中津真莉子、高森奈津美)」)とエンディング曲(「DAYS of DASH/鈴木このみ」)、そして今期のダークホースと言ってもよい「ガールズ&パンツァー」のエンディング曲(「エンター エンター ミッション/あんこうチーム(渕上舞、茅野愛衣、尾崎真実、中上育実、井口裕香)」)もよかったです。

■脚本賞「バクマン。3」
実のところ、深夜アニメ以外はあまり見ていないのですが、その中でずっと面白いと思って見ているのが「バクマン。3」です。実在の漫画も登場し、かなりリアリティを意識した作品だと思うのですが、実際の年月とは関係なくテンポよく話が進んでいきます。漫画制作の背景ばかりでなく男女関係も絡んできて、なかなか目が離せません。

■映像賞「中二病でも恋がしたい!」
前期の「氷菓」もそうでしたが、いかにも京都アニメーションらしい素晴らしい映像でした。他のアニメだと、ときとしてスケジュールの厳しさを物語るように作画が崩れたり、止め画が続いたりということがあるのですが、京アニの作品ではそのような心配はありません。このアニメでは、普通の高校生活が舞台ですが、そこでの細かな描写が行き届いているだけでなく、(中二病という設定による)妄想バトルがまた素晴らしいものでした。「絶園のテンペスト」や「ソードアート・オンライン」もよい作品でした。ちなみに、「K」の1話の映像は凄かったのですが、その凄さが1話だけだったのは残念です。

■オープニング賞「ジョジョの奇妙な冒険」
すでに2部で変わっていますが、1部のオープニングは凄いものでした(2部もよいです)。私は読んだことはないのですが、元々原作の漫画が大人気だそうで、まさにその漫画のシーンを活かしたオープニングになっています。MARVEL アニメの実写化映画を彷彿とさせると言ってもよいのですが、それだけではなく劇画調の漫画のコマをそれらしく使った上で、セリフも含めてアニメーションとして動かしています。そして、それがシーンの一部として使われていて、めまぐるしく展開していくというものです。お金や手間がかかっていそうなものというのは他にもありますが、最初から最後までどのシーケンスも手が抜かれることのなく緻密に計算されています。レコーダーが普及した今は何度でも繰り返し見ることができますが、昔なら毎週オープニングで何がどう見えているのか確認するだけでも楽しみにしていたことでしょう。

■エンディング賞「えびてん」
「えびてん」そのものは、パロディ満載の、わりとくだらない、いやむしろひどい内容(←褒め言葉)のアニメです。エンディングは、その回で取り上げたパロディネタに合わせて毎回変えられていました。最終回が「うる星やつら」の映画2作目「ビューティフルドリーマー」のパロディでしたが、レンタル屋で「ビューティフルドリーマー」を借りてしまったほどです(最終回の直後にはレンタル中になっていたので、先にどこかの「えびてん」視聴者が借りていたに違いありません)。このように毎回エンディングが変わるのは「そらのおとしもの」と似ているのですが、シリーズ構成が同じ柿原優子さんなので、そのせいかもしれません。「エンター エンター ミッション」に合わせて、毎回違うデフォルメキャラが揺れる(だけの)「ガールズ&パンツァー」もよかったのですが、ここは「えびてん」に譲ります

■予告賞「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」
「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」(略称「おにあい」)は、サブタイトルがすべて4文字(文章の略語)なのですが、予告もすべて4文字のかなで表されていました。サブタイトルが4文字というパターンは「xxxHOLiC」にもありましたし、予告が文字だけというパターンは「Angel Beats!」にもありましたが、予告を4文字かなだけで表現するというのは携帯小説のようで(←古い?)、なかなか新鮮でした。

■エンドカード賞「BTOOOM!」
「中二病でも恋がしたい!」の六花はかわいかったし、「うーさーのその日暮らし」もよく描き込まれた感じでしたし、「好きっていいなよ。」の水彩画っぽいエンドカードも爽やかでしたが、「BTOOOM!」のエンドカードは凄みを感じさせるものでした(とくに8話)。

■アイキャッチ賞「えびてん」
「えびてん」については上記のとおりですが、アイキャッチもパロディによって毎回趣向が変わっていました。こういうところに手が抜かれていないのは好感が持てます。「中二病でも恋がしたい!」や「神様はじめました」もよかったです。

■フレーズ賞「闇の炎に抱かれて消えろ(中二病でも恋がしたい!)」
これは前述の福山潤さんの功績ですね。

■提供画面賞「さくら荘のペットな彼女」
提供画面で“遊び”が入ることはよくあることで、「イクシオンサーガDT」の両脇のコメントも笑わせてくれるのですが(「男子高校生の日常」を思い出します)、「さくら荘のペットな彼女」は面白い部分を繰り返すだけでなく、スローモーションのような効果を入れたりしていて楽しめました。

■ベストシーン賞「バクマン。3」

ここは思いっきりネタバレします。元々、こういう“ベタな展開”が好きなのです。「バクマン。3」の7話で、女性漫画家、蒼樹紅に思いを寄せる怠け者の漫画家、平丸一也が漫画の連載が終了した後、彼女に告白するための“特別な一日”に全力を賭け編集担当者から逃げ回ったあげくにつまかりかけて、彼女のそばで編集担当者に言うセリフです。「……描くのが嫌なんだ。今日こうして締め切りに追われず、マンガの事も考えずに解放された蒼樹さんとの時間がどれだけ楽しかったか。あんたに分かるか!今日という日は、僕の人生で一番幸せな一日だったんだ!」

■ラジオ賞「となりの怪物くん」
例によってアニメラジオは、かなり多いのでごく一部しか聴いていませんが、よくあるパターンは声優の方がパーソナリティを務めて、アニメにちなんだテーマで投稿を募集して紹介するというものです。ですから、どうしても、そうでないものが気になります。「となりの怪物くん」のラジオも本編はそういうものですが、冒頭の「ゴルベーザあさこの友達のできるおまじない」という短いコーナーが印象的でした。

■再放送賞「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」
再放送モノというのは、私が本放送時に見ていなかっただけのものなので選考から外してきたのですが、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」はとても面白い作品でした。これが文章のようなタイトルが流行するハシリだそうですが、(あまり色々知っているわけではないですが)「エロゲー好きの妹」という設定から予想したものとはまったく違って、優しい兄の話でした。4月から2期がはじまるそうで、楽しみです。

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