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2012年夏アニメの私的レビュー

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例によって夏アニメの個人的な評価をまとめます。作品数こそ少な目だったものの、夏アニメはけっこう良作が多かった印象です。以下、いくらかネタバレを含みます。

■作品賞「氷菓」
春から2クールの作品です。原作は米澤穂信氏の古典部シリーズで、「氷菓」はその最初の作品です。初回からお気に入りだったのですが、春アニメでは、あえて別の作品(「謎の彼女X」)を選びました。夏アニメにも面白い作品は多かったのですが、結局「氷菓」を超えたと思うものはありませんでした。「氷菓」は推理小説ですが、特別派手な事件が起きるわけではありません。大作映画などで「前代未聞の大事件」とか「○○の危機」という宣伝文句が飛び出してくることがありますが、そうしたものとは対極的です。しかし、どうせフィクションなのですから、事件の規模ではなく、解決していく過程やその描写こそが惹かれるものであってほしい、そういう期待に応えてくれるのが本作品です。全22話は、数話で語られる長編(「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番)と1話で完結する短編で構成されますが、とくに長編のものにはとても引き込まれました。映像も京都アニメーションらしく素晴らしいものですし、モブキャラと呼ばれる端役を有名な声優が演じたりしています。「愚者のエンドロール」では学生が映画撮影に挑む場面では素人っぽく棒読みしているのですが、その無理やり感が楽しめます。アニメ終了後に原作も読んだのですが、原作に忠実ながらも細かい部分が修正されていて、それもまた良い方向だと感じられます。良さを感じられる作品でした。ちなみに「氷菓」の紹介として「青春は、優しいだけじゃない。痛い、だけでもない。ほろ苦い青春群像劇」と語られていますが、主人公たちは、けっこう甘いです。

■主演女性キャラ賞「わたし(人類は衰退しました)」
人類が衰退した未来の世界を描く「人類は衰退しました」の主人公です。名前はないのですが、エンディングのキャスト欄で「わたし」と紹介されています。「人類は衰退しました」自身も良い作品ですが、さまざまな事件に巻き込まれている“わたし”ちゃんは、おっとりして巻き込まれているのではなく、色々と見抜いたり、逞しかったりする側面を持ち合わせていて、「良い性格」というより「いい性格してるな」という印象もあります。作品の良さや声優の中原麻衣さんが好演していることもあると思いますが、とても魅力的なキャラクターです。

■主演男性キャラ賞「キリト(ソードアート・オンライン)」
「ソードアート・オンライン」の主人公です。これは川原礫氏原作のアニメで、秋まで2クール続きます。仮想現実に入り込む形で参加するMMORPG、「ソードアート・オンライン」に参加者が“閉じ込められる”というもので面白い作品です。序盤は一話完結の構成で、やや展開が速いと思うくらいでしたが、(たまに青臭いセリフが出てくることを除けば)MMORPGという舞台をうまく活かしています。同じ川原氏原作の「アクセル・ワールド」も春からはじっており、今期で終了しました。こちらの主人公、有田春雪もよいキャラですが、どちらが魅力的かといえばやはりキリトに軍配を上げます。ヒロイン(アスナ)とともにベストカップルだと思います。

■助演女性キャラ賞「赤座あかね(ゆるゆり♪♪)」
昨夏人気だった「ゆるゆり」の二期「ゆるゆり♪♪」で、主役(ただし影が薄い設定)の赤座あかりのお姉さんです。一期は存在がほのめかされていただけですが、二期では実際に登場して極度のシスターコンプレックスぶりを発揮してくれました。登場する回数は少ないのですが、「ゆるゆり」が百合アニメだということを思い出させてくれるインパクトの強いキャラでした。

■助演男性キャラ賞「福部里志(氷菓)」
「氷菓」の主役、折木奉太郎の親友で、古典部の部員です。“データベース”を自称し、同じ古典部員の伊原摩耶花から求愛され続けているのに、はぐらかし続けているという大変羨ましい役どころです。前回は「アクセル・ワールド」の黛拓武に譲りましたが、今期は奉太郎に対する嫉妬とも思える感情や、摩耶花の求愛に対する対応など、見どころのある展開がありました。

■敢闘賞「蕪羅亭魔梨威(じょしらく)」
「じょしらく」は“女子落語”の略称で、女子の落語家の会話劇をもとにしたアニメです。原作では、すべて楽屋だけで話が進んでいくそうですが、アニメ版では「楽屋」「東京の名所(アニメのオリジナル)」「楽屋」という3部構成になっていました。なかなか破天荒な内容だったのですが、主役の(と思ったら、wikipedia によれば主役じゃないそうです)蕪羅亭魔梨威(ぶらていまりい)の体を張った演技は(以下、お察しください)。

■非人間キャラ賞「妖精さん(人類は衰退しました)」
これは文句なし。人類の英知の結集とも思えるような知性を持ちつつ、嬉しいと増殖し、落ち込むと消えていくという、よくそんな設定を考えたものです。アニメのキャラデザインとしては、なんとなく「もやしもんリターンズ」の細菌たちを思い起こさなくもなく、そちらも候補ではあったのですが、妖精さんの魅力が上回りました。
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■声優賞「水島大宙(八重樫太一、ココロコネクト、以下同)、豊崎愛生(永瀬伊織)、沢城みゆき(稲葉姫子)、金元寿子(桐山唯)、寺島拓篤(青木義文)」
今回は、女性・男性と分ける代わりに「ココロコネクト」の5人の主役の声優さんを挙げることにしました。「ココロコネクト」は、人格が入れ替わる「ヒトランダム」(5話)、秘めた欲望が解放される「キズランダム」(5話)、若返ってしまう「カコランダム」(3話)という3つのストーリーがありましたが、人格が入れ替わるヒトランダムでは、別の人格を、若返るカコランダムでは幼い役を、元のキャラの担当声優さんがそのまま演じていました。みな、プロの声優なのですから、当然といえば当然なのかもしれませんが、まさに“プロの演技”を見た(聞いた)気がします。

■声優特別賞「神田沙也加(艶光路撫子、貧乏神が!)」
「貧乏神が!」は幸運の持ち主(市子)のもとに貧乏神がやってくるというアニメです。私は、いわゆる芸能人声優には否定的なのですが「神田沙也加が声優デビュー」という記事を読み、「声優の専門学校にも通ってきた」のがどの程度のものか、“あの神田沙也加”がどんな役をやるのだろうという興味がわきました。第1話を見ても彼女が演じる“撫子”がどこで登場していたのかわからなかったのですが、実はチョイ役でしか出ておらず(本編ではセリフもない)、最後にネタとして「ここに出てました」と紹介する短いコーナーがあるだけでした。“あの神田沙也加”の“声優デビュー”をあざ笑うかのような役ですが、笑いものキャラの演じ方が見事でした。「二期があれば撫子が活躍する場面も増えるはず」だそうで、そのためだけに「貧乏神が!」の二期に期待したくなります。ちなみに神田さん、毎期、すべてのアニメの初回を録画してその期に見るものを判断するのだそうです。もう、どっぷりと浸かったアニメオタクです。

■主題歌賞「Wake Up(ClariS、もやしもんリターンズ)」
今期も良い曲は多かったのですが、特に気に入ったのは「Wake Up」(もやしもんのオープニング曲)、「ユメのなかノわたしのユメ」(人類は衰退しましたのエンディング曲)、「パラダイム」(ココロコネクトのオープニング曲)、「ユメセカイ」(ソードアート・オンラインのエンディング曲)あたりです。謎の女子高生デュオClariSが歌う「Wake Up」は、メロディーがよい作品でした。

■脚本賞「人類は衰退しました」
もちろん「氷菓」は素晴らしいのですが前回選んだので、今回は「人類は衰退しました」を選びました。軽くネタバレになってしまいますが、(どうやら原作と違って)時系列がシャッフルされています。そして、この話の構成が実に巧みだと感じました。ときどき本編がエンディングにまで及んでしまったり、やや駆け足に感じてしまうほどのトピックが盛り込まれていたり、あるいは一度見ただけでは理解しにくいほど難解な回もあったのですが、全体的には大変面白いストーリーでした。

■オープニング賞「ソードアート・オンライン」
手間のかかったカッコいい映像を選ぶのか、インパクトのあるものを選ぶのか悩むのですが、ここは映像的にかっこいいものを選びました。本編のシーンも少しずつ登場し(使いまわしではなく)、その世界観を端的に表現しているものです(これは他のオープニングも同じですが)。中には一話完結ものでしか登場しないキャラたちもいます。

■エンディング賞「人類は衰退しました」
遠い未来を描く「人類は衰退しました」のストーリーは、現在の文化や社会の縮図でもあるのですが、このエンディングがまさに人類の栄枯盛衰を90秒で表現しているように感じます。伊藤真澄さんの歌う「ユメのなかノわたしのユメ」の素敵な歌声とともに、本編のよい締めくくりとなっていました。ときどき本編が割り込んできて映像がカットされてしまったのが残念なくらいです。ちなみに、「だから僕は、Hができない。」のエンディング(3話~)もなかなかインパクトがありました。

■アイキャッチ賞「この中に1人、妹がいる!」
いわゆるガチャガチャを模して、デフォルメされた妹候補が出てくるというものです。ストーリーは突拍子もないのでどうでもいいといえばいいのですが、なんだか映像が低画質だったのは残念でした。

■フレーズ賞「私、気になります」
前期は「うー!にゃー!」(這いよれ!ニャル子さん)に譲りましたが、「氷菓」の千反田えるの好奇心を率直にあらわすこのフレーズは気になります!

■予告賞「カンピオーネ! ~まつろわぬ神々と神殺しの魔王~」
「カンピオーネ!」については、「アニメでエロい描写をしたい場合に、服を脱がせたりパンツや乳首を見せる必要など全くないということを証明してみせたという点で、語り継ぐべきアニメ」という、とあるコメントに同意するのですが、本編の展開がどうあれ、立木文彦さんがナレーションする予告が素晴らしい“締め具合”でした。ここで「夏休みは終わりだっ!」と言われたら、「ははっ、その通りです」とひれ伏すしかありません。

■ラジオ賞「だから僕は、Hなラジオができない。(だから僕は、Hができない。)」
アニメの多くが(ネット)ラジオ番組を配信していることに気付いて、いくつか聴くようになりました。そんなにたくさんのラジオを聴いたわけでもありません。一番よく聴いていたのは「氷菓」のラジオ番組「古典部の屈託」です。このように主役、準主役の声優さんがパーソナリティを担当しているというものがほとんどです。「だから僕は、Hができない」のラジオ番組「だから僕は、Hなラジオができない。」は、2つのパターンが交互に配信されているのですが、たまたま聴いた回が主人公(加賀良介)役の下野紘さんとヒロインのリサラ・レストール(CVは遠藤綾さん)がパーソナリティを務める回でした。決して下野紘さんと遠藤綾さんではなく、あくまで下野紘さんとリサラの掛け合いになっているのです。これが徹底されているので、リサラは(遠藤さんとは違って)毎日高校に通っている学生として会話が進んでいき、なかなか面白い内容でした。

すでに秋アニメが始っているものもありますが、今期はどのように楽しませてくれるのでしょう。今期は数も多く、とても楽しみです。→「2012年秋アニメExcelシート(関東ローカル版)

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