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「スマホ料金、東京が最高額」という報道について

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スマホ料金、東京が最高額 総務省が世界7都市調査」(産経新聞)という報道がありました。かつて「日本の携帯電話料金はどれくらい高いのか」や「「東京の携帯通話料はNYの3倍」という記事の中身」というエントリで取り上げたとおり、「日本の携帯料金は高い」という報道は、あまり正しい状況を伝えてはいませんでした。もっとも、これらは5年も前のエントリです。当時の為替レートは120円/ドル程度でしたが、今では80円/ドル程度で推移しており5割もの円高になっています。相対的には料金が高くなっているでしょうから、それを踏まえて検証してみましょう。

この記事の情報元は総務省の「平成23年度 電気通信サービスに係る内外価格差に関する調査」(PDF)です。携帯電話料金については20ページ以降に示されているとおり、典型的な利用者モデルを想定することで料金を算出するという方法をとっています。

まず、「音声通話のみ」を利用する場合の比較(20ページ~)について、グラフのみ抜粋します。ニューヨーク(アメリカ)が際立って高いのですが、これはモデルとして採用されたキャリア(Verizon)には、約$40の通話無制限プランしかないためです。Virgin mobileのように通話時間制限があり基本料金の安いキャリアもあります。このグラフは為替レートベースでの比較ですが、東京は概ね平均的な料金だと言えます。

(1)低利用者(音声月7分)
Figure1

(2)中利用者(音声月99分)
Figure2

(3)高利用者(音声月241分)
Figure3

続いて記事の本題である「音声・メール・データ利用」について見てみます(24ページ~)。まず、フィーチャーフォンと呼ばれる多機能携帯では、音声月99分、メール月438通(内発信215通)、データ月155MBというモデルで比較されています。

Figure4

この図ではニューヨークと同程度で、その他の国よりも高めになっています。また、スマートフォンの場合は、音声月61分、メール月438通(内発信215通)、データ月1.6GBというモデルで比較されています。

Figure5

たしかに、東京が最も高い料金になっています。同じ利用モデルでの比較ですから、記事の見出しに語弊があるとは言えません。ただし、最終ページには「購買力平価による比較」が掲載されています。為替レートは輸出入や経済状況などを反映しますが、それによって“物の値段”が同一になるわけではないため、購買力平価を使うことがあります(wikipedia による購買力平価の項目)。

たとえば、かつて日本の最低賃金は先進国の中では低い水準にありましたが、5年前に比べると円ベースで1割増えただけなのに、ドルベースでは6割増しにもなっています。これは円/ドルの為替レートが5割も進んだためであって、最低賃金が大幅に改善されたと思う人はいないでしょう。5年前に比べた購買力平価はせいぜい1割強増えている程度なので(OECDによる購買力平価推移表)、デフレを考えれば多少好転したという程度です。

その購買力平価に基づく比較では、日本の携帯料金も最高額にはなりません。

・フィーチャーフォンの場合
Figure6

・スマートフォンの場合
Figure7

もともと、この調査は典型的なモデルケースでの料金を比較しているだけで、通話品質やサービスなどは考慮されていません。冒頭に挙げた記事などに基づいて「日本の携帯料金は高い」と即断してしまうと、色々と誤解してしまいそうです。

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