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2012年春アニメの私的レビュー

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冬アニメに続いて、春アニメの個人的な評価をまとめます。いくらかネタバレを含みます。

■作品賞「謎の彼女X
今季始まった作品で特に気に入ったのは「謎の彼女X」と「氷菓」の2作品です。「氷菓」は原作(「古典部」シリーズ)を買ったくらいお気に入りの作品です。しかし、「氷菓」は2クールで来季も続くため、あえて今季のみの「謎の彼女X」を選びました。何しろ「謎の彼女X」はテーマが“涎”です。サンズイに延びると書いて“よだれ”と読みます。そう、あの口から出る(普通はあまり出ない)“ヨダレ”です。主人公の椿明(つばきあきら)と彼女の卜部美琴(うらべみこと)がよだれを舐め合うというのがストーリーの要です。あまりに突拍子もない設定で、事前の知識なく初回を見たときにはかなり驚きました。そもそも「ヨダレで思いが通じる」という設定は SF の世界で、そこにリアリティなどありません。しかし、いくつかの突拍子もない設定を除けば「両想いの高校生カップルの日常」です。ありがちな“両想いを成就するまでの過程”でもなく、主人公たちは初回であっさり恋人同士になります。その後の展開で、どんな裏切りやドロドロした展開が待ち受けているのだろうと思うところですが、そんなこともありません。エンディング曲のフレーズからも安心して“ハッピーストーリー”を期待できました。昭和を感じさせるキャラクターデザインも、かえって新鮮で、週末の楽しいアニメでした。

■主演女性キャラ賞「卜部美琴」(謎の彼女X
「氷菓」の千反田えるもよいのですが、やはり「謎の彼女X」の主役、卜部美琴がイチオシです。ヨダレで思いが通じるとか、その他の“特殊技能”が謎めいているのは間違いないのですが、アニメで描写される彼女は、大胆な面はあるけれど、恥ずかしがり屋で、一途でかわいらしい高校生の女の子です。ただ、どうやって“ヨダレの力”に気付いたのか、特殊技能を鍛えたのかについては語られていません(そこは“謎”のようです)。

■主演男性キャラ賞「折木奉太郎」(氷菓
学園ミステリー「氷菓」の主役です。折木の解く謎は、決して派手なものではありませんし、ミステリーを解く能力に惹かれたのではありません。折木の「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」という省エネ信条に惹かれるのです。もちろん、本当に何もしなければ話は進まないのですが、(主に千反田えるに)巻き込まれる形で謎に関わっていき、その謎を解いていきます。必ずしも“嫌々”解かされるわけでもなく、心境の変化にリアリティが感じられます。

■助演女性キャラ賞「丘歩子」(謎の彼女X
実のところ、「謎の彼女X」でもっとも謎なのは主人公の卜部美琴よりも丘歩子だと思います。椿明と卜部美琴の間を知る人物として描かれていますが、(本作の要であるヨダレを除けば)卜部のような特殊技能を持たない反面、ベーコン巻に108のバリエーションがあるとか、大人びた考えを持っていて卜部を追い込んでみたりとか、ときとして卜部よりも大胆さを感じることもあります。彼氏の上野公平がうらやましいですね。

■助演男性キャラ賞「黛拓武」(アクセル・ワールド
アクセル・ワールド「氷菓」で“データベース”を自称する、つまり“物知り”であることを包み隠さない福部里志も良い候補なのですが、ここは「アクセル・ワールド」の主人公、有田春雪の友人である黛拓武を選びました。彼の置かれる状況を伝えることはネタバレになってしまうので控えますが、ヒーローではない人間臭さを持っていると言えます。

■女性声優賞「阿澄佳奈(八坂ニャルラトホテプ)」(這いよれ!ニャル子さん
「謎の彼女X」で卜部美琴を演じた吉谷彩子さんもよかったのですが、「這いよれ!ニャル子さん」でニャル子を演じた阿澄佳奈さんは、役柄にピッタリでした。「這いよれ!ニャル子さん」は今回の本格アニメの前にも、2度 FLASH アニメが制作されており、たとえばバンダイチャンネルで視聴できます(※)。このときに本格アニメ化まで想定されていたのかわかりませんが(二期1話では、そのことがネタにされています)、この頃から声優陣は変わっていないようです。
一期1話二期1話は無料で視聴できます。一期の2話以降は見当たりません。

■男性声優賞「喜多村英梨(八坂真尋)」(這いよれ!ニャル子さん
同じく「這いよれ!ニャル子さん」で八坂真尋を演じた喜多村英梨さんを選びます。ニャル子と八坂真尋の体が入れ替わる9、10話では、真尋役の喜多村英梨さんとともに、ニャル子っぽい真尋、真尋っぽいニャル子が演じられていて、まさに“プロの声優”らしさが感じられます。「這いよれ!ニャル子さん」では、声優を担当した他の作品がパロディとして取り入れられていることも多く、阿澄さんとともに多くの作品で活躍されていることがうまく活かされていました。

■主題歌賞「太陽曰く燃えよカオス」(這いよれ!ニャル子さん
アニメの主題歌には聞きやすく、繰り返し聴きたくなるものが多いのですが、中でも「這いよれ!ニャル子さん」のオープニング曲「太陽曰く燃えよカオス」は強烈なインパクトを持っていました。「うー、にゃー」という新たな日本語を生み出したと思いきや、「にゃー」は英語だったようで("Let's にゃー"って^_^;)、まさにカオスが這いよってきたとか思えない曲です。放送開始時には、#nyaruko ツイートが「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー」で埋め尽くされていました。

■脚本賞「氷菓
「氷菓」には原作があるので、アカデミー賞なら「脚色賞」というところです(もっとも、ほとんどのアニメ作品には原作があります)。「氷菓」は映像もすばらしいのですが、やはり脚本が秀逸です。ミステリーですが、決して派手な事件が起きるわけではありません。むしろ、かなり地味です。しかし、フィクションで「前代未聞の大事件」が起きたところで、それはフィクションに過ぎません。ストーリーの面白さは、その規模ではなく内容によるものです。

■映像賞「氷菓
これは「氷菓」一択です。脇役キャラどころか、いわゆるモブキャラ(群衆キャラ)さえもよく動き、喋ります。それはもう微塵も手を抜かないという京都アニメーションの神髄を感じさせるものです。とくに1話では“過剰”とも言われた演出がなされるのですが(私はSFなのかと勘違いしました)、視聴者を楽しませる意気込みには恐れ入るしかありません。

■続編賞「これはゾンビですか? オブ・ザ・デッド
「君と僕。2」とどちらにするか悩みました。実のところ、「これはゾンビですか?」で伝えられる BD/DVD の売上からは二期があるのが意外でした。スタッフによれば「一期に対する視聴者の意見を採用」したらしく、おおむね評判がよいように見受けられました。パロディが盛り込まれたり、「妄想ユー」には豪華な声優陣が登場したり、頑張っていたように見えます。個人的には、前作に続いて山口理恵さんが歌うエンディング曲(「恋のビギナーなんです(T_T)」)がけっこうお気に入りでした。

■オープニング賞「這いよれ!ニャル子さん
「這いよれ!ニャル子さん」はパロディ満載で、次から次へと繰り出されるネタを楽しむことができたのですが(その場でわからなかったものも多かったのですが)、主題歌「太陽曰く燃えよカオス」によって、その勢いを集約したかのようなオープニングでした。

■エンディング賞「謎の彼女X
卜部美琴役の吉谷彩子さんが歌うオープニングもよいのですが、登場人物(3人の女性)たちがヨダレをたらしながら寝ている、というシーンで構成されるエンディングは強いインパクトがありました。エンディング曲もすばらしく、とくに最後で「魔法仕掛けの日々が続きますように」と締めくくられているので、どんな展開になっても二人の主人公の間に不安を感じずにすみました。

■アイキャッチ賞「謎の彼女X
毎回、ストーリーとは直接関係なさそうな独自の画が使われていましたが、これが“魅力的な卜部美琴”なのです(4話のみ丘歩子)。「これはゾンビですか? オブ・ザ・デッド」がコマーシャル前後で掛け合い漫才のようになっていたのも面白かったのですが、“卜部の魅力”が上回りました。

■エンドカード賞「黄昏乙女×アムネジア
「黄昏乙女×アムネジア」は序盤は幽霊を題材にしたギャグアニメのようでしたが、終盤になってややシリアスな展開になりました(アニメのオリジナルストーリーのようです)。毎回さまざまな絵師さんが主人公の夕子を描かれていました。

■フレーズ賞「(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!」(這いよれ!ニャル子さん
あくまでオープニング中の掛け声であり、本編に登場するセリフではないのですが、これを選ばざるを得ませんでした。これでなければ、千反田える(氷菓)の「私、気になります」にしたところです。

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