2012年冬アニメの私的レビュー
先日は、春アニメの放送予定表をアップロードしましたが、冬アニメについてもほぼ一通り終了しました。まだ最終回を残しているものもあるのですが、そこで、2001年冬アニメの個人的な評価をまとめてみたいと思います。なお、あくまで私的な評価であって、それこそ“好き嫌い”というレベルも含みます。また、抑え気味にするよう配慮しましたが、ややネタバレしているところもあります。今季放送されているものであれば、2クール以上で途中の作品も含まれます。当然、見ていない作品は選考の対象外です。あらかじめご了承ください。
■作品賞「あの夏で待ってる」
今季もっともお気に入りのアニメです。音楽や演出もよいのですが、なによりも青春アニメのお手本のようなストーリーが素晴らしい。wikipedia に書かれている企画経緯では「スタンダードな王道的ラブコメ」を目指したそうですが、王道を感じさせながらも、意外性のある展開で最後まで楽しめました。終盤は“やり過ぎ”を感じる面もありましたが、9・10話は何度見たことか。冷静に見れば、やや強引な設定や脚本家(黒田洋介氏)の過去作品「おねがい☆ティーチャー」との関連性が強すぎる面もあるのですが、登場人物たちの気持ちが丁寧に描かれています。また、本作品には悪役がいないのですが、登場人物の“ずるさ”を描写する場面でも切なさが潜んでいるといった感じで、とにかく幸せな気分に浸れる作品でした。
■主演女性キャラ賞「見崎鳴(Another)」
今どきのアニメには、たいてい“魅力的な女性キャラ”が存在するので大変迷うところです。見崎鳴は、“ミステリー”というより“ホラー”と呼びたくなるアニメ作品「Another」の主人公で、作品の良さにマッチした雰囲気が素晴らしいです(ただ、終盤では思いっきり突っ込みたくなる状況はあるのですが)。この点では「未来日記」の我妻由乃のパワフルさも捨てがたく、作品としては「未来日記」の方が好きなのですが、2クール続いたまま、まだ終わっていないということもあり、見崎鳴を選びました。
■主演男性キャラ賞「タダクニ(男子高校生の日常)」
女性キャラに比べて今一つだったかな、と思うのが男性キャラです。「あの夏で待ってる」の霧島海人はインパクトが弱く、「未来日記」の天野雪輝も(今のところ)ヘタレ、「Another」の榊原恒一は振り回されているだけですし、「偽物語」の阿良々木暦に至っては(妹を相手に)無法者と化してしまいました。タダクニは「男子高校生の日常」の主役(のひとり)ですが、「ゆるゆり」の赤座あかりよろしく影の薄い存在と位置づけられているようです。このような判断で選ばれることが、きっとふさわしいでしょう。
■助演女性キャラ賞「谷川柑菜(あの夏で待ってる)」
正直なところ助演扱いしてよいのか迷いますが、“あの夏の青”として絶大な人気を誇っていたように思います。貴月イチカ(主人公)が地球に来なければ霧島海人と幸せを満喫できていたかもしれないのに、すっかり噛ませ犬としての役回りを演じさせられてしまった不遇のキャラです。ちなみに、同じ「あの夏で待ってる」の超人、山乃檸檬(旧称=森野苺……に違いない)もよいのですが、そうすると「未来日記」でストーリーの要所に絡んでいたかっこいいテロリストキャラの雨流みねね(未来日記)も捨てがたいところです。でも、きっと、みんな“青”が好きですよね。
■助演男性キャラ賞「石垣哲朗(あの夏で待ってる)」
同じアニメから選んでばかりですみません。「シンフォギア」で人間離れした身体能力を持ち“お前が戦えばいいじゃん”と思わざるを得ない風鳴弦十郎もいいキャラですし、「ちはやふる」で全然振り向いてもらえない真島太一も不遇キャラとして魅力的ではあるのですが、色々な板挟みの中で自分の立ち位置をわきまえつつも、どんどん話を動かしていく哲郎を選びました。
■非人間キャラ賞「ムルムル(未来日記)」
ヒト(子供)の姿をしているという意味では、“非人間キャラ”にはふさわしくないかもしれませんが、尻尾があり“人”ではないようなので選んでみました。ムルムルは、「未来日記」のオマケとして用意された場面(パートC)の主役だったのですが、終盤では重要な役割を演じています。「ペルソナ4」の“クマ”も愛されキャラではあるのですが、後半の姿と声のアンマッチングな面があり(狙っているのでしょうが)、私にはイマイチでした。「あの夏で待ってる」の“りのん”もよいキャラでした。
■女性声優賞「村田知沙(我妻由乃、未来日記)」
「未来日記」の主役、我妻由乃は、かわいい性格から恐ろしい内面までを持ち、物語の中心的な役割を演じているのですが、ピッタリです。wikipedia を見ると出演作品はまだ少ないようで、主役級は今回が初めてのようですが、今後の活動も期待できそうです。「未来日記」は実写版ドラマも予定されていて、剛力彩芽さんという方が演じられるそうですが、こちらもどうなるのか興味深いところではあります。「ちはやふる」の綾瀬千早を演じた瀬戸麻沙美さんも、新人の方のようで迷うところでした。「キルミーベイベー」でソーニャを担当した田村睦心さんと、折部やすなを担当した赤崎千夏さんもよかったです。「キルミーベイベー」は素材は面白いと思うのですが、(おそらく意図的に)テンポよく進められていないのが気になりました。
■男性声優賞「石田彰(秋瀬或、未来日記)」
「エヴァンゲリオン」の“渚カヲル”を思い出してしまうのですが^_^;、wikipedia によれば石田彰さんは“途中から登場するキーパーソン”を演じることが多いそうです。本作品でも表向きはクールだけど信念のあるキャラが、巧みに表現されていたと思います。声優に詳しいわけではないのですが、どなたも素晴らしいですね。(アニメ映画でタレントが声優やるのは何というか……)
■美術賞「偽物語」
「偽物語」は、大変面白かった「化物語」の続編でもあり、冬アニメの中でもっとも期待していたアニメでした。おそらく原作がそうなのでしょうが、「偽物語」は会話劇が多かったり、エロいシーンが多用されていた割に本筋があっさりしていた印象があります。しかし、売れる数が見込めているせいもあるのでしょうが、映像には膨大な手間が投じられているようで、怪異という非現実を扱うストーリーをこれでもかというくらい盛り上げるものとなっています。
■音楽賞「あの夏で待ってる」
誤解を恐れずに言えば、「あの夏で待ってる」はリアリティを追求した作品ではありません。もちろん、宇宙人という設定はさておき、主人公たちが8mmフィルムを使う量は高校生のお小遣いで済むとは思えないほどですし、現代の話なのに誰も携帯を持っていません。登場人物の多くはストーカー探偵業なのかと思うくらい都合のいいタイミングと場所に出現します。ともすると、そうしたリアリティに欠けた設定は物語に感情移入する妨げになることもあるのですが、そうならなかったのは脚本が素晴らしいだけではなく登場人物の心情や場面を音楽がうまく盛り上げているためでしょう。
■主題歌賞「ビードロ模様(あの夏で待ってる、エンディング曲)」
「あの夏で待ってる」はオープニング曲もよいのですが、このエンディング曲は、まさに世間で言うところの“神曲”だと思います。物語の最後が次回に期待を持たせるものだったこともあり、とてもいい締めくくりとなっていました。歌っているのは“やなぎなぎ”さんで、これがメジャーソロデビュー曲だそうですが、「化物語」のエンディングでもボーカルとして参加されています。良い曲にめぐりあわれていますね。
■歌唱賞「風鳴翼(水樹奈々、戦姫絶唱シンフォギア)」
本作品は、初期には大きな期待感があったのですが、突拍子もないスケールに展開したり、“歌って戦う”という設定により“突然歌いだすミュージカル”と同じような違和感を持ったり、ときどき作画がいまひとつだったりするので、感情移入するのが難しかったというのが正直なところです。でも、(今さら言うことでもないですが)水樹奈々さんは凄いですね。
■脚本賞「バクマン。2」
漫画の世界を漫画で描いた作品「バクマン。」の第二期です。実は、一期は見ていません。もちろん、フィクションですが、リアリティが追及されているように思います。その上でフィクションとしての思わぬ展開もあり、毎回楽しんでみていました。おそらく、一期を見ていればもっと楽しめたのでしょうが、二期だけでも大変面白い話でした。ストーリーとしては「ちはやふる」も良作で迷いましたが、こちらを選びました。
■続編賞「偽物語」
「偽物語」「アマガミSS+plus」「アクエリオンEVOL」「灼眼のシャナⅢ」「ラストエグザイル-銀翼のファム-」のうち、前作品を視聴したのは「化物語」と「アマガミSS」くらいです。その意味で選択肢はあまりなかったのですが、前作品の設定を活かした新たなストーリー、そして作品の質という意味ではダントツと言ってよいでしょう。最後に「次回に続く」と出ていたのが気になるところですが、BD/DVD の発売予定を見ても「化物語」のようなネットで続きが配信されるということはなさそうです。映画「傷物語」か「物語」シリーズのさらなるアニメ化が(当然)計画されているということでしょうね。
■提供画面賞「男子高校生の日常」
秋アニメの「僕は友達が少ない」は、提供を紹介する際に実写のコマ撮りという趣向を凝らしたものだったのですが、冬アニメ(で視聴したアニメ)では、そこまでのものはありませんでした。「男子高校生の日常」の提供画面は、左右に制作側からの“メッセージ”が表示されていました。本来、スポンサーを知らせるための画面ですから、あまり目立ってはいけないのかもしれませんが、この表示ばかり読んでました^_^;
■オープニング賞「輪廻のラグランジェ」
中島愛さんが歌う「TRY UNITE!」もよいのですが、映像的な演出が好きでした。楽曲の雰囲気という点では、「偽物語」第8話、第10話で“月火ちゃん”が歌う「白金ディスコ」もよいです。「偽物語」は回によってオープニング曲が変わったり、あるいは使われなかったりと手間がかかっているのですが、ここでは1クールを通じて使われていた「輪廻のラグランジェ」を選びました。
■エンディング賞「あの夏で待ってる」
前述のとおり楽曲「ビードロ模様」もよいのですが、エンディングも登場人物たちを線画で表現するというシンプルなものでありながら、引き込まれる映像でした。たんに「なつまち」が好き過ぎるだけかもしれません^_^; シンプルなエンディングという意味では「ちはやふる」のエンディングも楽曲とともに好きでした。
■アイキャッチ賞「ペルソナ4」
アイキャッチとは、中盤のコマーシャル前後に映る短い映像のことです。私は遊んだことがないのですが、「ペルソナ4」のアイキャッチは、ゲームゆずりのものだそうです。
■エンドカード賞「偽物語」
「モーレツ宇宙海賊」の佐藤竜雄監督の直筆メッセージもよいと思ったのですが、ここは順当に選びました。「偽物語」のエンドカード一覧は、こちらで見られます→ http://www.nisemonogatari-anime.com/special/ まあ、ちょっとエロいですね:-)
■ベストシーン賞「あの夏で待ってる」
ここは思いっきり【ネタバレ】です。9話で貴月イチカを待ち伏せた谷川柑菜がイチカに叫ぶ場面が大好きです。「好きだって言えばいい。何で言わないの。好きな人と結ばれるんだよ。素敵なことじゃない。あたしがどんなに望んでも手に入らないものがすぐそこにあるのに、こじつけばっかで、逃げてばっかで、海人君が今何をしてるかも知らないくせに!」(谷川柑菜のセリフ)
■総評
「2012年春アニメExcelシート(関東ローカル版)」にも書いたのですが、私が深夜アニメを見るようになったのはごく最近のことです。これだけ数があると好みが分かれるだろうと思うものもそれなりにありますが、ほとんどの作品がストーリー的にも映像的にも作りこまれていると感じます。そうした深夜アニメのほとんどが、制作費をビデオソフトとしての売上に頼っているそうで、その点では私はあまり協力しているわけではないのですが、今後も良い作品が出てくることに期待します。
■オマケ
※「あるカップルの日常」(PDF、3.4MB)より抜粋