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世間が広がると貧富の差が広がる

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Comics41_lo相続税を100%にすること」というエントリで私有財産を制限する点に少し触れました。実際の日本は資本主義に基づいた自由競争社会です。もちろん、自由競争に意味があるのは競争原理が働くものだけであり、なんでもかんでも自由化すればよいというわけではないのですが、そうした理屈は少し脇に置いておきます。

■狭い社会と広い社会

完全な自由競争社会を想定し、人々の収入がその能力に応じて得られると考えます。地域どうしのコミュニケーションがなく、狭い地域だけで人々の生活基盤が成立している場合、それぞれの地域の中でも貧富の差は生まれるでしょうが、さほど“お金持ち”は生まれません。どれだけ稼ごうとしても、その地域の人々の収入総額に対する比率分しか収益が得られないためです。

社会が広がるということは、それだけ大きな利益を生み出す基盤があるということです。自由な競争が行われている前提では、より能力の秀でた人にこそその利益は集まります。現実の世界でも、交通手段や通信手段が発達して“社会”は広がりつつあります。少し前の流行言葉を使えば“フラットな世界”が進むことで、貧富の差が広がりやすくなります。

■ジニ係数と税率

貧富の差がどれだけ広まっているかを判断する指標として「ジニ係数」というものがあります。「ジニ係数」は所得の格差を数値化したもので、0のときは全員が同じ所得を得ている状態(格差なし)であり、1に近づくほど格差が広い状態をあらわします。主要国のジニ係数の推移は以下のとおりです。

・等価可処分所得に基づくジニ係数の推移
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※「平成21年全国消費実態調査 各種係数及び所得分布に関する結果」(総務省統計局)より

フランスがやや下がり気味なことを除けば、ほとんどの国ではジニ係数は高まりつつあります。市場規模が広がるにつれて、(もちろん競争も激しくなりますが)所得格差が広がるのは当然のことであり、この図がそれを実証していると見ることができます。

また、高税率高福祉で知られるスウェーデンは別格ですが、この中では、日本のジニ係数は比較的低い方にあるといえます。ここで「等価可処分所得」とは1世帯当たりの世帯人員を勘案した年間可処分所得、つまり税金などを差し引いた額をもとにしているため、税率によって貧富の差が調整されているとみることができます。収入に対する実効税率は次の図のとおりです。

・個人所得課税の実効税率の国際比較(夫婦子2人(専業主婦)の給与所得者)
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※「個人所得課税の実効税率の国際比較(夫婦子2人(専業主婦)の給与所得者)」(財務省)より

この図を見る限り「国際的に日本の所得税率が高い」ということはなさそうですが、1000万円以下の税率を見ると、日本が他国に比べてかなり低くなっていることがわかります。つまり、所得格差を軽減させるという意味ではうまく機能しているのでしょう。

■平等とは

「平等」という言葉は人々にとって望ましい社会の典型的な表現として使われますが、何を持って平等とするのかを定義することは容易ではありません。たとえば私は所得格差のない社会が“良い社会”であるとは思いません。持って生まれた才能だけでなく、努力した人には努力しただけの見返りがあってよいと思いますし、自由競争を守ることが社会をよりよくすると考えられているのもそのためです。

一方、税率による所得調整が必要ないかといえば、それもまた疑問です。「赤ちゃんからお年寄りまで一律年間20万円ずつ税金を納めてください」という税制も“平等”と言えないわけではありませんが、現実的とは思いません。先日のエントリに書いた通り、税制は誰もが他人から徴収する方向にばかり議論を進めようとするのですが、とりあえず私は、来年度こそは控除証明書をなくさないようにしようと思った一日でした。

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