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映像作品を後世に残すために

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TVK(テレビ神奈川)が、「ビルボードトップ40」という番組をギネス記録認定をめざして放送初期の映像を探しているそうです(「30年前の番組映像求む ギネス認定へtvk呼びかけ」)。ほんの30年前のことで、すでに民生用のビデオレコーダーがあった時代ですが、テレビ番組を永続的に保存することは考慮されていませんでした。テレビ局が使う放送用のビデオテープが非常に高額だったため、それらは保存に回されず、テープを上書きして使いまわしていたためです。私もよく見ていた NHK の人形劇「プリンプリン物語」では、当時の総集編ですらテープ編集ではなく再演で放送していたそうです(wikipedia より)。このため、古い番組を復活させるために視聴者の保存していたビデオを探す必要があるということです。このように復活したものとしては NHK の少年ドラマシリーズなどがあります。

現在、横浜にある放送ライブラリーでは、テレビ番組のデジタル保存が進められています。ここでも、すべての番組が保存されているわけではありません。また映画については、東京国立近代美術館フィルムセンターで保存しようとしているのですが、非常に限られた作品しか登録されていません。しかも、年代別で検索してみるとポルノ映画のようなものばかりが登録されています(登録の際にいくらかの対価が支払われるため、わずかでも制作費を回収しようとされていると聞いたことがあります)。

今では、テレビ番組や映画はテレビ局や映画会社によって保存されているのだと思いますが、洋画の字幕付き上映用フィルムなどは、上映期間が過ぎると破棄されてしまうものも多いそうです(もちろん、映画館で再び上映する機会が見込めないような作品ということなのでしょうが)。また、フジテレビだと思いますが、資料室で火事が起きて古い映像を再収集するために苦労したという話があったと記憶しています。これが書籍ならば、納本制度があるので国会図書館であらゆる書籍が収集されています(※)。
※ただし、はてな匿名ダイアリーには、納本されていないものも多いという記事がありました。

映像作品も書籍と同じように納本制度を活用できないのでしょうか。実は、国立国会図書館法の第二十四条1項6号には国会図書館に納入すべき出版物として図書や小冊子だけでなく「映画フィルム」が明記されています(ただし、附則で“当面の間”免除されているようです)。少し古い朝日新聞の記事(「映画やテレビ番組、どう保存するか 国際シンポ」)には、以下のように書かれています。

日本ではこれまで3万2千本以上の劇映画が作られているが、戦前の映画は10%も残っていないという。一方、フランス、カナダはすべての映像作品に、韓国は映画のみだが納本制度がある
……
岡島主幹によれば、先進国で映像の法定納本制度が実現していないのは英国と日本のみ。これから日本でこの制度を作るには、プリント代の負担など財政的手当ても必要になる。いずれにせよ、自国の映画やテレビ番組を誰がどう保存すべきかの議論をもっと深めるべきだろう。(古賀太)

先日も取り上げましたが、日本では、テレビ局が音楽の包括契約により、商用楽曲を番組に使いまくっているため、番組を放送以外の目的で使おうとすると個別の権利処理が面倒になるという特殊な事情があります。いっそ包括契約をなくしてしまえば、テレビ局は番組のための独自楽曲を制作しなければならなくなり、それが番組の二次使用を容易にすることにもなります。ただし、ほとんどの番組では単なるコスト増加になるため現実的ではありません(このため何らかの法整備が必要かもしれません)。

ちなみに、作品の永続保存について、保護期間の延長は影響しないでしょう。ほとんどの著作物は保護期間内に失われているためです。作品の保存は、本来「誰かが保存してくれる」という他人頼みのものではなく、積極的に保存するという意思が必要です。

いずれにせよ、日本は「世界最先端のコンテンツ大国の実現を目指して」いるのですから(※)、映像作品についても納本制度を機能させるべきではないでしょうか。もちろん、そうして収集した作品を図書館で書籍を閲覧できるように、すぐ無料で視聴させるような仕組みにしては関係者の理解は得られないでしょう(何より図書館の運営が大変になりそうです)。しかし、後世に作品を残し、利用が必要だと判断された場合にいつでも参照できる仕組みがあることは関係者にとってもメリットがあるのではないでしょうか。
※「世界最先端のコンテンツ大国の実現を目指して」(PDF、知的財産戦略本部)

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