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DRM と補償金は二律背反か

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津田氏関連ということでもうひとつ。「補償金はDRM強化よりまし?――私的録音録画小委員会で議論」(ITmedia)という記事に関連して、津田氏が「「ダウンロード違法化/iPodの補償金対象化」がほぼ決定した件と、ITmediaの記事で抜粋されている発言についての補足」という詳細な解説エントリを投稿されています。
※オリジナル記事は訂正済みのようです。

実のところ、津田氏のエントリには、実に素直な意見として「消費者の負担にならない価格で権利者が意固地にならないためのバッファとして補償金を認めてよいのではないか」と書かれています。権利者には口実を与え、利用者として実を取りたいという意図が伺えます。津田氏が条件としている「利用者の公正な利用を妨げるような厳しいDRM」が、どの程度のものなのかわかりませんが、「「コピー10回だからこそ、補償金制度が不可欠」――権利者団体が主張」(ITmedia)といった記事を見ると、先行きは厳しい気がします。

そもそも、私は「コピー制限の緩和」や「DRM の強化(廃止)」と「補償金制度」を二律背反に考えるべきものだとは思えません。たとえ、委員会(あるいは業界)での話がそういう流れになっているのだとしても、声を大にして異を唱えたいところです。補償金は“制度”ですから、すべての著作権者が関わるものになります。受け取りを拒否する人・組織がいるかどうかはわかりませんが、「わずかな補償金のために不正使用を防止する手段を大きく制限されるのはまっぴら」という話はありそうです。逆に、DRM というのは選択可能な技術にすぎませんから、著作権者が「DRM は要らない」と考えれば使わずにすみます。実際、アメリカでは補償金制度はありませんが、DRM のない楽曲の販売も始まっています。

補償金制度がどの程度のものかについては、「sarah(私的録音補償金管理協会)」と「sarvh(私的録画補償金管理協会)」のサイトで見ることができます。たとえば、sarah の「平成19年度の収支予算書」によれば、会費等を含めた年間収入は14億円くらいありません。JASRAC による年間使用料徴収額は1100億円くらいで推移していますが2桁も違います。両者の対象が同じで配分が比例していると仮定すると、JASRAC から年間100万円受け取っている著作権者は sarah から受け取るのは1万円程度です。sarvh でも似たようなもので、年間収入は16億円くらいだそうです。srvh の場合、テレビ局や映画会社などが受取人に追加されるようなので、それぞれへの分配金はさらに微々たるものになりそうです。NHK の受信料が年間6000億円程度であることを考えると、ほんとうに大勢が寄ってたかって議論する価値のある制度なのか大変疑問です。

DRM 廃止を売り上げ増につなげられるか」は予想ではなく提案のつもりでしたが、DRM を廃止したものをいくらか高い値段で売り出すという試みは始まっています。どんな形であれ、DRM の廃止が著作権者の利益につながるのであれば、その動きが促進されるでしょう。CCCD のような厳しい DRM が売上を伸ばさなかったということにも著作権者は気づいているでしょう。一方、不正コピーが“見過ごせないほどに”蔓延している状況では、権利者側に DRM 廃止の促すことも難しいと思います。

「匿名」対「実名」」でも似たようなことを考えましたが、著作権問題については、「利用者」vs.「権利者」という構図だけでなく、「正当な利用者」vs.「不正な利用者」という構図を考えてみる必要があるのではないでしょうか。この件に関しては、孝好さん@ニセモノの良心のエントリ「こんなにキツい著作権法改正提案の戦犯は誰だ?」もご紹介しておきます。このエントリには、「JASRAC vs. ユーザーより、JASRAC vs. 権利者の争いがすさまじい」というなかなか興味深いコメントがあります。上記とは別に、「権利者」vs.「権利者団体」という構図も考えられそうです。でも、それぞれを考えるべきなのは、まず当事者でしょう。

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