BIGで考える数字
IZAの「一獲千金狙うなら…BIGとジャンボどっち?」という記事に、“宝くじ研究家”という方の興味深いコメントがありましたので、確率計算がてら取り上げてみます。「数字を考える」というのは、マーケティング活動ではけっこう重要なことです。とはいえ、今までサッカーくじにほとんど興味がなく、以下、間違っていることがあったらご指摘ください。
BIGはランダムに番号が割り振られるとのことで、その組み合わせは約480万通りあるそうです。ランダムでなく順番に買い揃えるとしたら単純計算で480万×300円=約14億円が必要です。この数字をもって、この研究家の方は「数%の重複分を考慮しても、14億円のラインを越えたので、すべての買い目が出たのではないか・・・」とされているのですが、順番に割り振られているのでなければ、これは難しいでしょう(*)。n 通りの組み合わせが乱数で割り振られるとき、n 口の購入で“すべての目が出る”確率はn!÷(n^n)となります。log(自然対数)を使って log n!=n log n - n(スターリングの近似式)、log n^n =n log n とすると、log {n!÷(n^n)}=-nとなり、確率は e ^ (-n) になりますから、n = 480万のときは、ほぼゼロです。もちろん、すべての買い目が出ることは「1等が必ず出る」という条件にすぎず、1等が出る本数の期待値が1本であることに違いはありません。
実際には、16日には9.7億(約320万口分)、17日には13億円(約430万口分)売れたそうですが、この分だと1500万口(45億円)~2000万口分(60億円)くらい売れるのかもしれません。n通りの組み合わせがあるとき、m口の購入で1等が1本以上出る確率は1-{(n - 1)^m ÷ n^m}ですから、1500万口売れた場合は約95.6%、2000万口売れた場合は98.5%になります。これだけ売れても1等が出ない可能性が数%くらいはあるわけです:-)
ちなみに、繰越型のくじというのは、「今回の分」に「繰越金」が加算されるからこそ期待が高まり、当然、繰り越していないときより、繰り越しがあるときに買う方が「お得」です。今回の場合、前回までの繰越金が15億円だったそうですが、今回の売り上げが60億くらいに達すると、繰越金による割り増し分の価値は全体の2割程度まで下がってしまうことになります(※下記参照ください)。つまり、今からいそいそ買いに走ったとしても1口当たりの“期待値”は繰り越しがない場合とそれほど変わらなくなっているわけです。繰越金の割り増し価値に期待して買うなら、ここまで盛り上がる前の回に買うべきだったのかもしれません。とはいえ、当たらなかったからこそ繰り越して盛り上がっているわけですが^_^; 次回の参考にでもしてください(当たらなくても何も補償はできません←当たり前)。
ところで、この研究家の方は、「(宝くじは)西銀座チャンスセンターなど1カ所で1ユニット売り切るような人気の売り場では、そこから100%の確率で1等が出る。BIGはどこで買っても条件は同じだ」ともおっしゃっています。宝くじも売り場によって1口あたりの確率が変わるわけではありませんが、何を研究されているのでしょうね。
(*)補足。理想的な乱数が使われていることを想定しています。トランプをシャッフルするようなアルゴリズムであれば、すべての買い目が出てもおかしくありませんが、1等の数がバラつかなくなるので、それはないでしょう。
※2007.6.21追記。すみません。上記の計算に間違いがありました。キャリーオーバーは、いわゆる寺銭(BIG の場合、売り上げの半分)が差し引かれているので、これは“売上”ではなく“配当分”と比較すべきでした。第278回では売り上げが60億円程度だったので、配当分にまわされる約30億円に対して、キャリーオーバーが占めるのは全体の約3分の1になります。
なお、今日時点で、前回(第284回)のキャリーオーバーは約8億円ですから、売り上げが32億円(配当分16億円)以上いかなければ、第278回より「割のよい」くじということになります。そして、6億円のチャンスもあります。前回買いそこなった人は、これを機会に散財してください:-)